第3話 想いは悲壮
俺はいつもそうだ…
無神経な言葉を使って大切な人を傷つける
俺が吐き出した…[もっとも言いたくなかった言葉]を聞くと、
彼女からは哀しげな雰囲気が一瞬だけし…
『わかってるわよ…そんなこと…』
と、少し悲しそうな返事をした
『なんで…なんだよ…』
今でも、何故こんなことを言ったのかわからない
自分でも意味なんてない…いや、解ってない質問だったと思う
『なんで…って…』
俺のした問い掛けに彼女は戸惑っていた
『……………何で死んじまったんだよ…………』
吐き出された…本当の言葉…
もう抑えることなんて…できない…
『なに、帰り道に事故にあってんだよ…俺が送るって言ったの拒否して…事故にあってどうすんだよ…大丈夫って…大丈夫って言ってたじゃねぇかよ……全然、大丈夫じゃねぇじゃんかよ…』
いつの間にか俺は泣いていた
この情けない姿が俺の本当の姿なんだ…
俺は惨めになりながらも言葉を続けてる…
『…しかも、飲酒運転だったらしいじゃないか…お前、全然悪くないじゃないかよ…何、俺より先に死んでんだよ……………俺より先に逝ったお前は…やっぱアホな彼女だよ…』
『………………………』
俺の心を彼女は黙って聞いていた
何も言わず…
ただ…ただ黙っていた
『黙るなよ…なんとか言えよ…冷やかしに来ただけかよ…』
こんな言葉を言うつもりはなかった…
責めるような言葉を…
『…あんたが馬鹿なことしないか心配だった…』
包み込むような優しさのある彼女の声
でも、とても辛そうだ…
『…なんだよ…馬鹿なことって…』
『例えば…復讐とか?』
さらりと言う彼女
『…明るく言うなよ。大体…復讐する相手がいない…』
ツッコミながらも、苦笑いになる
『なんで?』
『なんで、って…知らないのか…?…………お前をひいた相手…翌日に自殺してたんだよ…』
何処かに吐き出せたら…少しは楽になれたかもしれない…
だが…
悲しみと憎しみに支配されていた時、警察から言われた宣告
容疑者は見つかりました
ですが…既に亡くなっていました
おそらくは自殺したものだと思われます…
何処にも行き場のなくなった思いは………
己の内に閉じ込められた
『そっか〜…そうなんだ』
『あぁ…』
あっけらかんと言う彼女に、俺は相槌を打つしかできなかった
『もしさ…』
『ん?』
トーンを落とした声
彼女がこの感じをする時はマジな話をする時だ
『もし…もしも相手が生きてたら…復讐した?』
声に怯えがある
聞くのを何か恐れているような…
『…どうかな…したかもしれないし、しなかったかもしれない…』
自分でも…答えは分からなかった
…俺は…どうした…?
『ちょっと!ハッキリしないなぁ〜。仮にも彼女の仇を討とうとか考えないわけ〜?』
安心したのか、彼女の口調は再び仮面に覆われた
『…内緒…だな』
おもいっきり意地悪く答えた
『なによ、それ〜!』
彼女は呆れ気味だが、楽しげだ
こうしていると昔に戻ったみたいだ
でも、前とは…昔とは違う
何故なら…
俺はまだ彼女を見ることができていないんだから…