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想いは儚い  作者: マカミ
2/6

第2話 言葉は残酷

突然、聞こえた言葉。


それは聞き慣れた…

懐かしい声…



だが、俺の知っている…

昔の様な、柔らかく、朗らかな感じは無かった


何処か寂しげで…

無理に明るい声を作っている…


俺はそんな感じがした



声の主が誰だかは、無論すぐ解った


木暮雪菜こぐれ ゆきな


愛するという意味を教えてくれた女性…

本当に好きだった彼女…



直ぐにでも振り返りたかった…

けど、振り返れなかったんだ…


俺には…

…勇気が無かったから…


『久しぶり〜敏樹としき。何してんの?』


昔と変わらない口調で、俺の名前を呼ぶ雪菜


だが、俺の口は動かなかった…


何て答えたら良いのか…

その時の俺には解らなかったから…


嬉しさとか…


驚きとか…


色々な感情が混ざりあって…


そう…あの時、俺はひどく混乱していたんだ…


くそ!…本当に情けない男だ…


『…なに無視してんの…?』


哀しげで…不安そうな問い掛け…


『もしかして…私のこと忘れた…とか?』


そんなこと…

あるわけ…あるわけない…


お前のことで…


忘れたことなんて…


何一つ無い…


『無視なんてしてねぇよ…名前…ちゃんと呼んだじゃねぇか…何の用だよ…』


これが…俺の…

虚勢を張った精一杯の言葉…


強がらなければ、崩れてしまいそうだったんだ



『相変わらず無愛想〜。』

俺の愛想無い返事を聞いて、雪菜が安堵したような気がした


『無愛想で…悪かったな…』


彼女のそんな感じに俺も安心する


『ま、敏樹が愛想良くても、気持ち悪いか〜。』


彼女は俺に馴染みある、からかう様な口調になっていた


『ふん…皮肉を言いに…わざわざ来たのかよ?』


そんな雪菜につられてか、俺も話し方が昔に戻っていく



『違う違う。何してるのか、聞きにきた』


相変わらず彼女を見ることはできないが、こうやって話せるだけで…


今はいい…



『…<何してるか聞きにきた>って…なんだっていいだろ…』


つい、ぶっきらぼうに答えてしまう



『ふ〜ん…まぁ、大体想像つくけど〜』


彼女は言葉に含みを持たせた


『…んだよ…』


少し小声で僅かばかりの反抗



『アホじゃない?昔の彼女引きずってさぁ、どうすんの〜?』


からかう…というよりも少し小馬鹿にした感じで彼女は言った


『…悪ぃかよ。思い出すのは、お前にまだ愛情があるからだよ』


吐き出すように呟く


『うわ〜恥ずかしくない、それ?そして未練がましい台詞〜…。本当にアホな彼氏』


心の底から呆れたと言った感じの言い方


『うるせぇよ…じゃあ、そんな俺と付き合っていたお前は、もっとアホな彼女じゃねぇかよ』


売り言葉に買い言葉

つい毒吐いてしまう


『あはは。それはいえてるかもね〜』


俺の皮肉など微塵も気にとめず、彼女は笑い飛ばした


『マジで…アホだったよ、お前…』


昔のことを色々と思い出す

良いことだけじゃない、悪いことさえも…


『ひどくない?てか、そんなに?そんなつもりはなかったけどな〜』


ちょっとムっとした感じ…

だが、それでも雪菜は会話を楽しんでいるように思える


『…いやいや、そんなにだから。だってよ、俺、はじめてみたよ。眼鏡を掛けて眼鏡探してる人。あれ、コントの中の世界だけかと思ってた、マジで笑ったわ』


『…うっさい!あれは寝呆けてただけ!』


俺の言葉を、笑いながらも全力で否定する


『へ〜…起きて四時間もして、君は寝呆けるのかい?』


雪菜の矛盾に俺は突っ込む


『…なに?何が言いたいの?』

彼女の声が素のトーンになる

でも、引くに引けない俺は畳み掛けた


『やばくない、それ?』


『やばくない』

はっきり言いきる彼女

そんな彼女に対して俺は更に続ける


『変なとこ、きっぱりしてるねぇ〜相変わらず』


『悪い?』


『いや…悪くないけどさ…』


雪菜のハッキリとした態度に、俺は一瞬圧された

そして、怯んだ俺の口からは本音が流れだしていく

多分…変わらない空気に油断したんだ


『でもさ、それ抜きにしても、お前はアホな彼女だったから…』


『だから、どこらへんがよ?』


『今、ここにいること、とか…』


昔を思い出す

当然、あの日の事も…


『何?意味解んないんだけど?』


本当に分からないといった感じの雪菜の声


『…気が付いてないのか?』


呆れながらもホッとする俺


『…だから〜なんなのよ!?』


突然キレる彼女

俺が言葉に含みを持たせるといつもこう…

変わってない…相変わらずだ


『おまえさ…死んだんだぜ…?』


必死の思いで核心を吐き出した


使いたくなかった言葉…

…これは諸刃だ…


それでも…

言わなければならない事だったんだ…

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