最終話 受け継がれる都市伝説
「栗原さん」
看護師がドアから女房に声をかける。
今行きますと言い、書類を持って急いで出て行った。
「ねぇ、お父さん」
「えっ! あ、何?」
今まで黙っていた娘が、急に話しかけるから驚いた。
……本音を言えば、初恋の"琴乃ちゃん"から話しかけられて、ドキドキしていた。
「お父さんが電話の誠二君だったんだね……222の」
「あ……」
二人で顔を赤らめうつむく。
「あの……信じて……くれるんだね」
たどたどしく娘に尋ねる僕は馬鹿か?
恥ずかしくて余計、顔が赤らむ。
琴乃はニコッと笑顔を強調するとストレートに言った。
「誠二君、あたしの初恋だったんだぁ。でも "お父さん" だったから諦めたよ。
楽しかったよ。今までありがとう、誠二君♪」
……そうだよな。
僕は涙目になった。
「ねぇ、お父さん。助かる方法を電話で教えてくれたおじさん……。
ほら、赤い星を右側に見ながらって教えてくれた……。
もしかして、あたしのお爺さん?」
「あぁ、そうだよ」
「すごーい! お話しちゃったぁ」
僕の父は、琴乃が女房の腹の中にいた年に亡くなった。
もし、草葉の影で見守ってくれているなら
琴乃の喜び様に涙して感激してる事だろう。
「お父さん、222に電話した時間って何時だったの?」
「深夜の2時2分2秒だよ」
「あたし、起きれっかなぁ」
……あ、あれ? どこかで聞いた台詞。
「あたしも、やってみるよ」
……おいおい。
僕はその数日後、無事に退院した。
琴乃が、"お父さんの退院祝いだから" と
黒電話をNTTから借りてくれと僕にねだった。
どこが、"退院祝いなんだ?
深夜2時2分2秒に電話したい一心で要求するバカな娘がここにいた。
さすが、小学6年生。
まだまだ子供だ……
僕も彼女のように夢中になっていたのだろうか?
琴乃は僕ら夫婦の部屋を覗き、しっかり寝てる事を確認すると
どこかへ電話をかける。
「2……2……2……」
「はい、もしもし」
「あっ、あのっ、あたし琴乃です」
「まぁ、琴乃ちゃん。また繋がって良かったわ。ずっと待ってたのよ」
「わぁ! 嬉しい♪」
「今日はね、とてもイイ事があったの。
孫夫婦にね赤ちゃんが生まれたの。
初ひ孫よぉ♪
いつか、あなたが ”この子”に出会うまで
男の子か女の子か、秘密にしておくわね♪」