第6話 嵐の中で_3
「途切れ途切れの雲! 隙間から見える無数の星!
どうって事ない空なのに、一体何だ! この嵐は!!」
「さぁ、わかんねー! だけど親父はガキだった僕を乗せて嵐から抜けたんだ!」
「なら俺達も抜けれるな!」
「ああ!」
僕達は、"出来る" と何度も自己暗示をかけ続けた。
強風と狂った波に翻弄され、思い通りに動かない舵を固く握りしめ赤い星を船の右側につけた。
だが、いつになったら嵐から抜けられるんだ!?
キチガイじみてた波の高低差にはなすすべが無い。
ガンと波に突き上げられた直後、高層ビルのような高さから真っ逆さまに落ちる。
垂直落下。
……大袈裟だとは言わせねぇ!
「うわぁっ!」
ますます荒れ狂う波。
船内の仲間達は大丈夫だろうか……。
ふと思ったが次の高低差に心配するゆとりは消え去った。
「誠二! あれは何だ!」
「え……?」
海が四方に避け、深く幅広い超ド級の大穴がバックリと開いていた。
あまりにも激しく波がぶつかり合った故に出来たのか!?
非常にいい迷惑だ!
何も僕達がいる場所で発生しなくてもいいだろ!!
穴の底には、尖んがりを剥き出しにした、ごっつい巨大な岩が一塊ある。
「これか! この事か!?」
「広田さんっ! 波に乗って避けるよ! タイミング見てくれ!」
「マジかぁぁあっ!」
ゴゴゴォ! と唸る轟音は海底からか荒波なのか暴風なのか……
「誠二! 前方左舷に舵を取れ! 波が盛り上がる! 乗れえっ!」
「うぉりゃあっ!!」
「行っけえ!!」
ほとんど操作不能な重過ぎる舵を、身体全体で捩り切る気迫で傾ける。
ドゴォォン!!
目の前一面に、黒い海の壁。
何が何だか理解できないうちに船は急上昇して壁の最上部まで登りきった。
船の右側に赤い星をはっきり捉え、ふんわりと宙を舞った感覚になった。