第2話 女の子のお化けと会話?
ありえない電話番号に出た女の子は、
小さな声で聞いてきた。
「あの……誰ですか?」
「あ……藤岡です」
しまった! 言っちゃった!
「……翔太くん?」
「え、違う、誠二……」
ぐぁー! 本名丸出し!
ヤベーッ! 切ろう!
……でも。
「い……今、何してんの?」
気になるし、怖い感じが無かったから聞いてみた。
「宿題」
「こんな夜中に?」
「えー? まだ昼間だよ」
「今何時?」
「14時」
「凄げえー! 外国にいるの?」
「……」
あ、機嫌悪くしちゃったかな? 怒ったのかな……?
「あ、あのさ。 僕、2・2・2にかけたんだ。
まさか、本当に誰かが出るなんて思わなかったからさ、
あのさ、もう少し話ししてもいい?」
馬鹿だな! 本当にお化けだったらどーするんだよ!
僕の焦りをよそに、女の子は言った。
「いいよ。 誠二くんの言う事が本当ならね」
「ほ、本当だよ!」
「……クスッ」
「マジだってば!」
「ならいいよ♪」
「良かった……」
僕は呪われる心配もないと勝手に信じて
夢中になって女の子と話しをした。
とても感じがよくて優しかった。
年上かと思って聞いてみたら僕と同じ小6だった。
「なぁ、また電話したら繋がるかな」
すると、女の子は意味不明な言葉を並べだした。
「え……。めるあど?」
「そう、メルアド。だってメールなら、
もし電話に出られなくても大丈夫でしょ?」
「めるあどって何? さっき言った "けえたい" とか "すまほ" とかも……何?」
「はぁ?」
「なんだよ!ちぇっ!イイ奴だと思ったのによ!
……んだよ!意味わかんねーこと言いやがって!」
「ゴメン!そんなつもりじゃ……」
あ…。
相手、お化けだった。
僕がお化けに叱った……って事になるよな……。
おお! それはそれでカッコイイか♪
あ、いや。許してやらないとな。
「……まぁ、いいよ。また今度な」
「電話……してくれるの?」
「2・2・2ってかけて、もし繋がるならね」
「繋がると思うよ。でも、次はいつ電話してくれるの?
明日からあたし学校だし、あ、明後日の14時は?ほら、祭日でしょ」
……お化けにも祭日ってあるのか……っていうか、お化けにも学校があるんだ!
電話を切った後も僕は興奮して眠れなかった。
朝、一番乗りで教室に着き、友達を待った。
「電話かけた!女の子、出たぜ!」
「嘘だろ?」
「ホントだよ、女の子がさぁ、僕らと同じ6年でさぁ」
僕は全部話したけど……
「うっそクセ~ェ!」
げらげら大笑いされた。
「だってさ、"めるあど"って何だよ。
”けえたい”とか ”すまほ” てか。 何?新しい怪獣の名前かぁ?」
近くで聞いていた女子達も笑いだした。
「繋がったら教えろって言ったクセに何だよ……」
「じゃあ、その女の名前は?」
「あ……」
……聞き忘れていた。
「なら、その女の名前聞いてみろよ」
「明後日に電話する。そう約束したから。
どうせなら、お前らも来いよ。 泊まればいいじゃん」
僕は意地になって言った。
だが案の定、この日、電話は繋がらなかった。
それ以来、僕は嘘つき呼ばわりされ……。
そのまま小学校を卒業した。
女の子の事をすっかり忘れた頃、思いもしない事が起きた。