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無想の剣士と魔法の探究者  作者: 出島創生
刃のない剣と炎の柱編
6/12

第五話 不穏

〈バギッ〉


「いってぇ!」


 突然、衝撃が顔にはしる。そして鈍い痛みが追いつき、目を開けるも視界が眩み何も見えない。目をこすってみたがまだ見えない。ついでに鼻から液体が出ている。血だ。いったいなぜ、このような目にあうのかしばらく理解できなかった。だが、もがいているうちにさっきから不能になっていた視界がようやくはっきりしてきた。ぼやけた世界が明瞭さを取り戻すとそこは、屋内の見知らぬ部屋でベッドから誰かがこちらを見ている。顔がまだよく見えない。


 (誰だ?…………。!!!!)


 思い出した。昨日の事を。ローナという女をこの部屋まで送り届け、ソファーでいつの間にか眠ってしまったことを。やばい、まずいことになった。おそらく、向こうは寝ていたからここに連れてこられたことを知らない。そして彼女はいつの間にか連れてこられた宿で見知らぬ男と寝ていたとなっちゃあ自警団に駆け込むだろう。そのあと、俺は婦女暴行の疑いで牢屋(ろうや)送りだ。かといってここで逃げ出すとことをより深刻にさせてしまう。まずい、まずい、まずい……。様々な言い訳、もといどのように疑いを晴らすか、わずか数秒で次々と頭に浮かんだ。が、最終的に俺は彼女の反応をまず見てから対応する受け身作戦へと乗り出した。


「お、おはよう?」


「あなた!いったい私に何をしたの!?」


 ローナの鬼気(きき)迫る勢いと怒声で俺の受け身作戦の雲行きが怪しくなった。このまま落ち着かせないと本当に自警団に駆け込まれてしまう。いや、もっとまずいことに彼女は仮にも魔法使いである。広場で見たような炎で燃やすという直接の制裁があるかもしれない。そしたら一貫の終わりである。いくら剣や腕っぷしが強くても実体のないものに対しては無力も同然。このままではどちらか一方に身を置かなければならない。


「ま、まず話を聞いてくれ。昨日、俺は酒に酔って寝てしまった君をここまで運んで来たんだ。本当だ!そのあとソファーで一息ついていたら、俺も眠っちまった。だからなんもしていない。」


「『そう、それなら仕方ない』っていうと思う?酒に酔った女をホテルに連れ込む男の言うことをやすやすと信じるほど私は馬鹿じゃないの。さあ、あんたにはこのまま牢屋に入ってもらうわ。」


 ローナは俺が座っているソファーの前の小さなテーブル越しに立ち、俺を見下(みお)ろすように(にら)んでいる。起きてから身支度などしていないためか栗毛のロングヘアーはあちこちが跳ね、まとまりがない様だった。たとえ俺が逃げようとしても出口はローナの真後ろにあるため、事実上逃げ場がない。俺が逃げる素ぶりを見せれば、あの青や緑の炎で俺を炭に変えてしまうのは造作(ぞうさ)もないだろう。


「頼む、自分の体をよく確認してくれ。宿代だって半分支払うから。もしなんかしてたならソファーなんかで寝てなくてベッドで寝てるだろう。……いやほんと信じてくださいお願いします。」


 もはや、自分の言っていることが滅茶苦茶だということは百も承知。だがこのまま何もせず牢屋にぶち込まれるのだけは避けたい。何とか取り(つくろ)って、許してもらえる可能性があるのだったらなんだってしてやる。ローナはとりあえず体に異常がないか確認をしているようだが、すぐさま終わると再びまた俺を見下(みお)ろしてきた。


「特に体に異常はないけど、あなたのような人が本当に何もしなかったとは信じない。ふふっ、でも今、面白いことを思いついちゃった。いい?もし、あなたが今私がつけている下着の色を当てることができたら許してあげる。そのかわり、外したら牢屋行き。どう?万に一つのチャンスよ。」


「…………。」


 ――これは罠だ。俺が不埒なことをして下着の色を知っていて、色を当てることができたとしても必ず牢屋送り。それどころか、許すけど死んでもらうとかいうオチも十分あり得る。無論、俺は清廉潔白(せいれんけっぱく)、無実の身だから色など知る由もないが、外すと牢屋。詰んだ。もはや選択肢などないのだ。しかし、正解がないと分かっていながらも、答えを言わなければいけないという非情さ。ああ、どうしようか。


「ねえ知ってる?人間が焼死するときってとっても苦しいらしいの。あんたがこのまま何も言わなかったら、焼死体となってもらうけどいいの?」


 こういう場合、機転(きてん)が利く奴はうまいことを言って難を逃れられるという話をよく聞くが、生憎俺はそのようなことを思いつくには(うと)い。もう駄目だ。適当な色を言って、神のお沙汰(さた)を待つしかない。いったい何色だ?白、黒、赤、青、黄色、緑?ちょっと待て、なに色を当てにいこうとしてんだ俺。もう全身から滝のように冷汗が出ている。時間がある訳でもないから早く適当な色を言えばいいんだよ。それなら俺の好きな色を言おう。そうだ、青だ。好きな色を正直に言えばこのつらい現状を乗り越えられるかもしれない。しかし、青というのは好きな人が多い。ここは紫というのも……。


「あなたがそのままならいいわ。でもあと私が五数えるうちに言いなさい。いーち、にーい、さ……。」


「!!し、しろっ!!」


 突然のカウントダウンで頭の中が真っ白になった。そして気が付いたら、よもや全く選択肢に入れていなかった白と叫んでいた。当たり外れどちらも行く末は同じだ、ええい、どうにでもなれ。


「……。そう、あなたの答えは白なのね。」


 ローナのまるで感情の入っていない声が室内に響く。表情からは正解かどうか読み取ることはできなかった。そしてローナは右手をゆっくりと持ち上げると、ひとさし指で俺を指さした。

 

――ま、まさか正解だったのか?そのまま俺は焼却処分にされてしまうのか?ウソだろ、まだ死にたくない。でも、逃げることができない状況、青の炎はいったいどれほど、熱いんだろうか……。


 ぽっ、とローナの指先から青い炎が出た。指先に全神経を集中させていたため視界が青に染まる。もうこれ以上炎を見たってしょうがない。俺はすべてを諦め、目をそっとつぶった。


 ……せめて魂だけは安らぐことができますように……。


「あはははっ!、馬鹿じゃないの。」


 え?閉じていた目をおもむろに開いた。ほんの数秒閉じていただけだったが、何時間も閉じていたように感じた。視界が妙に明るい。そして、目の前にいるはずのローナに目を向けるとそこにはいなく、かわりにベッドの上で笑い転げていた。助かった……のか?


「な、なあ、どういうことだ?俺、燃やされるんじゃないの?」


 笑い転げていたローナがしばし、呼吸を整え、こちらを向いた。


「あはは、馬鹿ねえ、あなたみたいなヘタレが私を襲う度胸なんてあるはずないじゃない。まあ、本当に襲ってきてたら燃やしたと思うけどね。起きたときはちょっとびっくりしたけど、すぐにからかってやろうと思ったわ。」


 「なんだ」という茫然(ぼうぜん)と、「良かった」という安堵(あんど)が混じった大きなため息が出た。そして、全身の緊張が一度に解けたため、ドサッと力なくソファーに倒れ込んだ。その様子をクスクスとまだ笑いを抑えられていないローナが見ている。何とも情けない姿をさらした俺はそれ以上ローナを見ることができなかったから床へと視線を落とした。床をよく見るとあの店でローナが見せてくれたあの赤茶色の本が無造作に転がっていた。おそらく、俺を起こすと同時に顔面に落としたのはこの本だったのだろう。まったく、大事な古文書の割には随分扱いが雑ではないか。見た目と違って中身は結構、がさつなのかもしれないな。


 とまあ、そんな風に気まずさに押しつぶされそうになっていた折、ローナがこちらに声を投げかけてきた。


「ねえ、私をここに連れてきて何もしなかったのは認めるけど、宿泊費全額払ってね。」


「そ、そんな、一難去ってもう一難とか勘弁してくれよ。こっちはルミナスの銀貨しか持ってないから価値が十分の一しかないんだ。ここで全額払ったら文無しになっちまう。」


「なに言ってんの?あんたがここに連れてきたんじゃない。しかも、女の私に宿泊費を払わせるわけ?それは男としてどうなの?」


 確かに言っていることは最もである。昨日は彼女を助けた礼という体だったが、今回に限っては特に恩を売るにしては弱い。それどころか危うく牢獄送りになるところだったのである。しかし、かといって全額支払うとなると、手持ちの金の四分の三近くを失うことになり、最悪ルリナスに出戻りということになってしまう。

 何とかならないものかと考えていると、はあ、とローナがため息をついた。


「仕方ないわね、じゃあこうしましょう。これから私は向かわなくちゃいけないところがあるの。そこまでの道案内と一応だけど護衛をやってもらえないかしら。いくら魔法を使えるといえども私は、女。何かあった時に一人じゃ頼りないし、あなたが広場で見せた腕を見込むわ。どう?いい話じゃない?」


 女神から救いの手が差し伸べられた。俺はどことなく放浪する旅人だ。特に決まりもなければ仕事もない。この誘いに乗らない手はない。それに魔法使いに同行するなんて面白い。魔法のタネは割れてしまったが、他にどんなことができるのかも興味がある。(本音としてはここで全財産のほとんどを失いたくないのだが。)


「もちろんさ。俺は特に用もないし、護衛程度の役割なら慣れているさ。それに、俺だってその本に記されていることが本当かどうか興味がある。あんたがいいと言ってくれれば、ついていくよ。」


「そう、それはよかった。詳しいことは後で話すわ。先にシャワーを浴びてくるから。言っておくけど覗いたらわかるわね?」


 先程危うく現実になりかけたことを自分から起こすものかと、首を縦に大きく振った。それと同時に、またくだらない興味がふと思い浮かんだ。


「そうだ、さっきの下着のクイズだがあれは正解だったのか?」


 〈バギッ〉今度は拳が飛んできた。鼻血がまた出る。


――――――――――――――――――――――

「さあて、すっきりしたことだしそろそろ部屋を出ましょう。」


 シャワーから出てきてすでに一刻は過ぎようとしていた。女の身だしなみにかける情熱というものはいったいどこからやってくるのだろうと思ってしまうほどだ。ローナと宿を後にしたときはもう昼近くになってしまっていた。


「ここを出発するのはいいんだが、あんたはどこに行きたいんだ?その魔方陣が刻まれた場所は分かるのか?」


「もちろん。この本の中にヒントが隠されているもの。説明する前に、どこかでご飯食べましょ。朝食食べ損ねたからお腹がすいた。」


 やれやれ、この様子だといろいろ旅の最中に起こりそうだな。この魔法使いのローナという女はけっこうなじゃじゃ馬気質なため、度々振り回されるかもしれないな。そんなことを思いつつ、彼女の少し早い昼食に付き合うことになる。俺たちは再びエストレンダの中央広場にやってきた。そこで適当にローナが決めた店に入ることにした。


「んーここも結構、料理美味しかったー。」


 呑気なことを言いつつ、満面の笑みを浮かべているローナが一瞬だけまぶしく見える。何を考えているんだと気を落ち着かせたところで、俺はローナに目的地のことを尋ねた。


「さっき、目的地のことを聞いたとき、本にヒントが書かれているとか言ってたけど、詳しい目的地は分からないのか?」


「うーん、この本が書かれた時代と今の時代だと若干地形が違うのよ。でも大陸の形自体は同じだから、東大陸の北側ということだけは分かったわ。そして、魔方陣は石造りの神殿のようなところに封印したとも書かれているの。これらのことを(かんが)みると北側にある古代遺跡のどれかにあると思うの。あなた、北部にある古代の遺跡って知らない?」


「そうだな……ここから北側にあるのはアンドレナとユークリッド連合の二国があるな。どちらも行ったことがあるけど、古代遺跡について聞いたことあったっけな……。そうだ!アンドレナの西側にそれらしきものが建ってるって聞いたことがあるぞ。二日くらい歩くがここからそう遠くはない。どうだ?」


「現状、何も分からないのだから行ってみるしかなさそうね。二日って言ったけどちゃんと私のペースに合わせてね。」


「ああ、雇い主に合わせるさ。ただ、ここから遺跡までは特に大きな町はないから途中で野宿せざる負えないが、それでもいいか?」


 ローナは怪訝(けげん)な顔をさせて、ぷいと顔を反らした。この様子だと納得はしてなさそうだ。それでも、野宿しなきゃいけないときは絶対にあるだろうしな。本人も分かっているから何も言わないのだろう。


 そのあと、少し町で買い物をして、エストルギアの西門から町を出ることにした。エストレンダは物価は高いが、何かと物が溢れている便利な国だ。またいつか立ち寄ることもあるだろう。俺とローナの二人は北西へ進み、アンドレナにある〈ペルセイア遺跡〉に向かうことにした。


 そのあとはただ、よくあるハイキングと同じようだ。ローナの歩くペースに合わせて、道を往く。途中、休憩したりしてそれはたいそう平和を感じさせるものであった。一人旅の予定だったが、同行人がいるだけでまた違う雰囲気になる。これもまた一興。


 一言でいうなら和やか、それだけだった……はずだった。俺はエストルギアの門を出たあたりから何か違和感を感じていたが、特に気にしてはいなかった。しかし、このペースだと今日の夜は野宿の確立が高い。そんな折に、無警戒で野宿するのは愚かだ。せめて、違和感だけでも解消させておかなければならない。


「なあ、ちょっと聞きたいんだが、今、手鏡のような物は持ってないか?」


「いきなりなあに、そんなことを聞いて。でも小っちゃいけど手鏡なら持ってるわよ。」


「そうか、悪いけど少しだけ貸してくれないか?ちょっと髪の毛に違和感があってな。」


 ローナは不思議そうな顔をさせて、肩掛けの荷物を漁り始めた。そして、すぐに小さな蓋が付いたいかにも女性が持っていそうな鏡を取り出して、俺に寄越した。俺はありがとうと言ってから、自分の姿を映すようにして後ろを確認した。


 ……いた。少しまばらな林道を歩いていたが、木に寄り添い、こちらを見ている男が一人。はっきり言って後ろから見れば誰かの後をつけていることが明らかに分かるあたり、その辺は素人なのだろう。とにかく、違和感の原因を突き止めたのだから何とかしなくてはならない。そばを歩いていたローナに近寄り、彼女の柔らかい肩に手をかけ、そっと抱き寄せる。周りから見ても限りなく怪しまれないように自然を装った。


「ちょっ!?あなた、何してんの?死にたいの?」


 突然の俺の行為に仰天し、ローナは俺の手を振りほどこうとした。俺もローナの顔が間近に迫ってしまったのでつい、手を放してしまいそうになったが、事の重大さからこらえた。


「真面目な話だ。頼むからこのままで聞いてくれ。それと絶対に後ろを振り向くな。……誰かに後をつけられている。」


「!?誰に?」


「いいから、後ろを向くな。後をつけるような奴に覚えはあるか?俺はまだ旅をしだしてから日が浅いから可能性は低い。あんたはどうだ?つけ方からして素人のようだが。」


「私もここにきてそんな経ってないし、身に覚えがないわ。それよりこれからどうすんの?」


「それなら俺に考えがある。この道の先に二股に道が分かれるんだ。左はアンドレナの首都に向かう道、右は俺たちが向かう遺跡への道だ。分かれ道に着いたら一旦、左の道に入り、すぐに道を外れて茂みに入る。そこで追っ手の確認をした後、元の道に戻るんだ。」


「いいわ。そうしましょう。追っ手が少人数だったら蹴散らして、追ってきた訳を吐かせましょうね。……それと、いつまでこんなことしてるの?」


「すまん、すまん。それじゃあ、分かれ道に着くまでは特に気にせず、自然体でいような。」


 肩にやっていた手を放すと何事もなかったように、いつも通りローナのペースに合わせて歩いた。ローナの様子を見ていると後ろを気にしないとさせながらもやはり、気になるようでぎこちない歩みをさせている。一方で追っ手は素人のようなので特に俺は気にも留めなかった。お互いそれぞれ思い思いに歩いていると行動を起こそうと話していた問題の分かれ道にたどり着いた。


 ローナに目配せをすると、ローナもこちらを見返し、頷いた。左の道に入って数歩、俺とローナの二人は前触れもなく駆け出した。後ろの奴から見えないように路の左側に寄り、そのまま生命の伊吹を感じさせる黄緑色の若葉で覆われた茂みに駆け込んだ。身を屈め、少しでも見つからないようにしっかりと隠れる。ただ、茂みの中ではローナが着ていた白いマントは目立つ。脱ぐように指示するとローナは少し嫌な顔をさせながらしぶしぶマントをとった。


 ……茂みに入ってはや数分、男が一人、道を走り去っていった。俺たちをつけていた当人である。顔に見覚えもなく、特に武装した様子もない。男がまた戻ってくる可能性があったため、行動を起こさずそのままでいると、数分して去った方向からまた男が戻ってきた。男は再び分かれ道の方角に戻っていった。


「あの男に見覚えは?」


 茂みに隠れつつ、隣にうずくまるようにして様子をうかがっているローナに尋ねた。ローナも目を細め、男を観察していたが首を静かに横に振った。お互い身に覚えがないのだから、困ったものだ。ローナの言う通り、このままあの男が戻ってきたら捕まえて尋問するのも一つの手かもしれないな。男をどう捕えるか思慮していると、分かれ道の方角から、ギコギコ、チャラチャラと静かな街道にしてはふさわしくない賑やかな音が流れてきた。音の方角に目をやると馬車が二台、道を歩いてくる。馬車の前には、先ほどの男が歩いて先導している。


 ――なるほどな。一人でついてきて何ができるのか不思議に思っていたが、やはり仲間もいたか。もしつけていることがばれても、馬車の中に入ってしまえば怪しまれることもないか。


 男と馬車はそのままゆっくりと首都への道を進んでいった。何とか追跡を撒くことはできたが、馬車にはそれなりの人数がいると思われる。姿が完全に見えなくなってから、ローナと共に茂みからはい出た。そして、来た道を引き返し、分かれ道に戻ってきた。


「どうだ?連中に見覚えは?」


 追っ手がいたことに動揺しているのか、しばらく不安そうな表情を見せているローナがこちらを見てくる。


「あの馬車を運転していた男、昨日、私に絡んできた男に似ている気がする。でも、あんな人数でなぜ……?」


「そう言われれば確かに似ていたな。確か短剣を振り回していた奴だ。まったく、厄介なことになったな。俺もあの人数とやりあうのは御免だ。でも、連中を撒くことができたんだ、少しは方の力を抜けよ。」


 こくり、と無言で彼女は頷く。俺たちはそのまま右の道を進むことにした。今のところの懸念材料はあの連中だろう。気になるのはつけている理由だ。昨日彼女に絡んでいたところを考えると、大体は思い浮かぶが、どれもろくな理由ではない。これから先、鉢合わせになることは絶対に避けなければならない。そう考えると、この旅は一筋縄ではいかないだろう。


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