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序幕~暗雲より出でし者~

西暦二千十五年七月七日――。


 人類はテレビゲームを生み出した功績で映像やコンピューター技術が飛躍的に向上し世の中は情報化社会になった。千年代後半に普及し出した携帯電話がスマートホンになり、パソコンがタブレットパソコンに進化した。しかし、何かが進化しても人間が進化しない故に時代から取り残される人々の暴走は主に犯罪へと走り、人類は閉塞に加速する時代に疲弊し臨界の時を迎えつつあった。


「……ユナイトブレイカークリアか。どうやらゲームキラーの中でも俺が最速クリアのようだな。これで開発者の冴木も俺をキラー1に引き上げる可能性があるだろう。クリアボーナスに期待って書かれてたから期待してるぜ」


 悦に浸りながら自宅のパソコンの前でクリアしたネットゲームのエンディングを鑑賞する天草秀人(あまくさひでと)は眼鏡をクイッと持ち上げイスにもたれかかりながらふと、夕方の茜色の空を見た。一軒家の自宅の2階に射し込む夕陽さえも自分を彩る明かりでしかなく、やや自意識過剰な秀人は更に悦に浸りながら濃いめのカルピスを飲む。モニター画面ではナーコというゲームキャラクターが光の聖剣を天にかざし自分の願いを叫んでいた。


「どんな願いも叶えるエクスカリバーを手に入れて世界を平和に……か。俺だったらそんな漠然とした願いは叶えない。このゲームの力を生かせるような世界に変える願いとかにするな……いいねソレ」


 フッ、と秀人は口元を笑わせ一気にカルピスを飲み干した。


「さて、これで今月の後半のノルマはクリアだ。後は来月のランクアップに期待するだけさ」


 秀人の属するネットゲームの第一人者・冴木宗助(さえきそうすけ ) 代表を擁するトゥルースケール社のゲームキラーとは過去の名作ゲームから現代のゲームまでのあらゆるジャンルのゲームをやり尽くし、ニカニカ動画やネットサイトにてプレイ動画の攻略法や個人的なレビューを上げ、雑誌などのインタビューにも答え、ゲームユーザーからはその圧倒的な実力からゲームキラーと呼ばれている。


 ゲームキラーは月三本のトゥルースケールより委託された新作ゲームをし、開発企業にレビューやバグなどの辛口の報告をする。それには現金収入があり一月の生活費としては会社員ですら羨むほどの額でもある。

 新作ゲームであるユナイトブレイカークリアをゲーム内からトゥルースケールに報告せよとの事だったので、愛用のゲームキャラクターである黒色の髪にツインテールという出で立ちの美少女剣士ナーコを操りコントローラーを動かす。その秀人の耳に、傍らに置いてあるスマホが振動しメールの着信を教えた。トゥルースケールからのメールかと思い開くと、それは中学時代からの友人の高杉聖子からのメールだった。


「よよ? 七時にバトラーオンライン、ルフール宿屋前に集合? 仕事じゃなきゃネトゲーはやんね。ネトゲーはネトラレゲーだからな」


 一年前の過去を思いだし、中三で初めて付き合った彼女の冬月玲奈を思い出す。剣道の道場に通うのを止め、ネトゲに夢中になり現実を放棄した自分に愛想をつかし他の男と結ばれたのは案外痛い最近の傷である。


 それ以後、趣味でやるネトゲは引退し仕事でやる以外は過去の作品しかプレイしないが、所詮ゲーム好きが生活や性格を直すには制約や覚悟が必要だ。しかし、秀人にはそれは無い。秀人の世界はゲームによってしか開かれないからである。故にテンプレ学園高等部に入って初めの数日しか出席せずに不登校になった。すると、またスマホが震動した。


「またメール……いや、緊急地震速報? うっ、おおおっ――」


 突如、東京都全体を襲う地震が起き、一瞬日本の電力が止まる。ガシャン! とパソコンがもろとも床に落ち、画面上のナーコの顔が歪んだ。だがその地震は一瞬の出来事で、舞台の暗転のような感覚を味わいながら頭を抑え屈んでいた秀人はゆっくりと目を開けた。


(……何……だ?)


 妙にクリアに視界が開けたかのようなクリアな感覚があり、かけていた眼鏡が急に邪魔になり外す。身体全体が軽くなり、異様な高揚感を感じる。


「? 目に見える物がやけにはっきりとしクリアになった。俺の身体が変化……いや進化している? あっ! パソコンが起動しない……外の様子は!」


 驚きの色を隠せない秀人の瞳の奥に紅い閃光のような空の色が突き刺さる。世界の空が一様に一面の紅に染まっていて、鮮血とは違うゲームなどの映像技術を用いた色彩だった。時折走る蒼白い稲妻が現在の世界が明らかに今までとは違う世界である事を切々と鳴くように訴えている。


(……)


 後ずさる秀人はパソコンのマウスに指が当たる。床に落ちたパソコン画面にはニューゲームの画面が映り、その物語はスタートした。雷鳴の響く紅い空にツインテールの少女のシルエットが一瞬映り消えた。


 そして日本全土とゲームが融合したユナイトブレイカー開始から半年が過ぎた――。

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