空の下で
雲一つない蒼穹の下で。
果たされるのは。
迷い続けてきた願いと、偽りのない想い。
彼は彼女に会いに行った。
自らの誓いの元。
誰かの、大切な人の力になる事を決意していた。
自分にどれ程の力があるのか知らなかった。
しかし非力かもしれないが無力ではないと。
ただ強く信じていた。
手を差し伸べた先に、彼女がいた。
彼女は空を見る事をやめた。
空を、諦めたわけではない。
自らが望んだ空はここにある事を、理解したからだ。
空の向こうに家族がいるのか定かではない。
でも眼前には確かに人が存在していて。
その人の手を掴んだ。
視線を向ける先に、彼の姿があった。
頭上を旋回する鳥を見上げ、二人は寄り添っていた。
頬を緩やかに撫でていく風は心地好く。
太陽の光は柔らかく降り注ぎ。
透き通る空は全てを享受していた。
そこにはただ、優しさがあった。
自分にも何かが出来るのだと、彼は悟った。
翼なんかいらなかったんだと、彼女は知った。
一人より二人が。
誰かに大事だと言う事が、言われる事が。
これほど大きな力になると。
二人は胸の内で、静かに受け止めていた。
心中に溢れる気持ちは快いもので。
これがあればいつまでも大丈夫なんだと。
二人は全身で、ありのまま受け入れていた。
繋いだ手は暖かく。
傍らの存在は力強く。
肯定すべきものだった。
青く深い空はそこにあり。
その中を鳥は飛翔する。
行く鳥、帰る鳥。
回る鳥、進む鳥。
単独の鳥、家族の鳥。
蒼い世界に、ただ飛翔する。
頭上を仰ぎながら、二人はそっと。
繋いだ手に、力を込めた。
願いと想いが叶った事を。
彼と彼女は、感じていた。
時々自分で恥ずかしくなったりしながら書きました。読んで下さって、ありがとうございました。