もう一度君に逢えたら
―初めて君と出逢った場所
そこにはいっぱいの思い出がつめこまれてる
もう一度君に逢いたい
もう一度君の笑顔が見たい
もう一度君と出逢いたい――
初めて君と出会ったのは
あの桜の木の下。
僕よりも少し幼い顔をしていた。
君は桜の木の下で
僕を見つめていた。
たったひとりで…
大粒の涙を流しながら。
君に何があったのか僕は知らない。
君の事を僕は何も知らない。
その数日前
僕は衝撃的な事実を母親から聞かされた。
それも いきなり…
「あなたには妹が居るのよ」
そうきっぱりと言われたのだ。
僕の名前は、中原 勝希。
僕は、もう15才だ。
身長は、ありえないほど小さいが、こう見えても立派な受験生だ。
僕は、生まれてから今まで、妹が居るなんて聞かされたことも無かった。
その事実を母親から、ついさっき聞いたんだ。
こんなに重要な事
どうして母親は言ってくれなかったんだ。
そして、僕には父親が居ない。
僕が生まれる前に離婚して出ていった。
僕は、妹に逢いたい。
僕の妹なんだ、血が繋がっているのだから会う権利はあるだろう。
ただ、何度母親にお願いしても、母親は「どこにいるのか分からない」の一点張りで、会わせてくれないんだ。
それから数日間、僕は、どうしたら妹に会えるのか、妹はどんな子なのか、悩み続けていた。
そして今日に至るんだ。
桜が舞い散る春、
僕は母親と、欲しい腕時計を買いに行った。
シルバーのカッコイイ腕時計だ。
母親は、それを、なんのためらいもなく買ってくれたんだ。
いつもなら、テストでイイ点とらなきゃ買ってくれないのに…
そして
桜並木の下を母親と歩いていたんだ。
ふと母親の足が止まった。
そこには少女が立っていた。
少し幼い顔をした、美しい少女だった。
僕は一目惚れしたんだ。その少女に…
その少女は、ただ僕を見つめる。
大粒の涙を流しながら…
母親は、その少女を見つめる…
驚いたような表情をしながら…
そして母親は呟いたんだ…
「夏希…?夏希なのね?」と…
どういう事だ?
夏希…?
あの少女の名前は[夏希]なのか?
母親と少女は知り合いなのか?
少女の瞳からは、止めどなく涙が溢れる。
まるで、大雨のように…
そして母親は言ったんだ。
「夏希は、あなたの妹よ。あの女の子は、あなたの妹」
嘘だろ?
僕が一目惚れしたのは妹?
そんなのありえないよ。
妹に?
血の繋がった妹に?
そしてその少女は、僕に微笑んだ。
その後ニッコリと笑ったんだ。
そしてどこかへ去った。
「待って」
そう呼び止めたが少女は待たずに走り去った。
僕は妹に恋をしたんだ―
もう一度君に逢いたい―
一度でいいから―
君は僕の妹なんだろ?
だったら、僕の元へおいでよ。
僕は君に恋をしたんだ。