金曜異世界:湖の町の物語4
閉じ込められた二人ですが、どうなってしまうのでしょう?
ミラが驚いてドアに駆け寄り開けようとします。だけどドアは鍵がかかっていて開きません。
「はっはっは、お前ら仲良さそうだな! そんなに仲良くしたいんなら、朝までそこにいるといいさ!」
「”悩みの旅人”か何か知らねえがな! よそ者がいきなり悩み解決なんかして、でかい顔するんじゃねーよ! おれたちが目立たなくなるだろう!」
「明日の朝、誰かが小屋に来るまで反省していろ!」
そう言って集団は笑い声を上げながら立ち去っていきました。
「あいつらよ! 最近出てきたギャング! ああ、なんてことを……! ライ、開けられそう?」
「やってみる」
ライはドアを思い切り押したり、体当たりしたりして、開けようと試みますが、どうにも開きません。
「このドア、頑丈すぎるよ」
「もともと、ここは見張りをする兵士の休憩所だったらしいわ。だから頑丈にできているのね。カギは外から南京錠をつけるタイプなのよね」
冷静に分析をするミラでしたが、だんだんと日が傾くにつれて心細くなっている様子でした。
二人で、天井と壁の隙間から出ようとしますが、手を出すのがやっとです。二人は座り込みます。
「早くしないと、本当に日が暮れちゃうよ」
「のぞき窓からこの辺りを見渡せるわ。外を見ながら、誰かが来たら大声を上げましょう」
二人は椅子に腰掛けて、ため息を付きます。陽の光が差し込んで、舞う土埃を小さく輝かせます。
「きれいだね」
「こんな状況でよく……、にしてもごめんね、こんなことになってしまって。こんな事する奴らなんて、町のチンピラしかいないんだけど、アイツらぜんぜん逮捕されないのよね」
「もしかして、昼間僕を湖に突き落としたのも……」
「きっとそうよ! それで、すぐに元気になっているライをみつけて、もう一度嫌がらせをしにきたのよ!」
ミラは機嫌が悪そうに地団駄を踏みます。ふたたび舞い上がった砂埃がきらめきます。
「きっと助けが来るよ」
「うーん、私は一人暮らしだし、ここに向かったのを知っているのは時計屋さんだけだけど、様子を見に来てくれることはないと思うなあ」
ミラはがっくりとうなだれます。
「まだ収穫に来る人もいるかも」
「でもこの近くまで来る人がいるとは思えないわ」
「そういえばそう言ってたね。ということは朝までここに閉じ込められるの?」
「そのようね。ああ、私もお昼の余った料理、食べておけばよかったわ」
「まあまあ……、元気だそうよ」
ライは元気づけようとしますが、うまく言葉が出てきません。
「ともかく、そこの隙間から畑の方を交代で見て、人が来たら叫びましょ」
「わかった」
と、返事をして、しばらく待ちます。風が強くなっています。
「この風じゃあ、誰も来ないかもね」
諦めかけながらも椅子に乗って隙間から外を見続けていると、丘の上から降りてくる人影が見えました。
「あ! 人だ! おおーい!」
隣にミラも並んで大声で助けを呼びます。
「こっちの小屋よ!おおーい!」
人影は、風のせいか二人の声に気が付かずに行ってしまいました。
「ああ……」
「風が強いと、思い切り叫んでも聞こえないかもね」
二人が座り込んでがっくりとしていると、ドアの外から声が聞こえました。
「あの、誰かいるんですか?」
「え」
驚いているだけのライのとなりで、元気にミラは返事をします。
「はい、います! 閉じ込められてます!」
「今開けます!」
ガチャガチャと音がして、外の鍵があけられ、ゆっくりと扉が開きます。覗き込んだのは赤毛の女の子でした。驚いた顔をして、動きが止まってしまいます。
「あ、あのときの赤毛の子!」
扉を開けた主をみてライは声を上げます。だけど女の子はなぜか申し訳無さそうに顔をうつむかせます。
「アン! ありがとう!」
ミラが駆け寄ってお礼を言います。だけど力なく笑ったアンは嬉しそうではありません。
「いえ、無事で良かったです。じゃあ私はこれで」
足早に立ち去ろうとします。
「あ、ちょっとまって。このあたりにチンピラは見なかった?」
「知らないわ。じゃあ」
やはり足早に立ち去ろうとする彼女にライが大きめの声で問いかけます。
「まって! 悩み! キミ、悩みがあるでしょ!?」
「私には、ないわ。じゃあ用事があるからこれで」
「いや、待って。僕には義務があるんだよ」
「他にもっと悩んでいる人がいるはずです。その方の悩みを聞いてあげてください」
どうしても、アンはこの場をすぐさま立ち去りたいようです。だけど二人のやり取りを見ていたミラがポツリと発した言葉で、その動きは止まることになりました。
「……アン、もしかして、ライを湖に突き落としたのあなた?」
無事に小屋から出ることができた二人。ミラはライを湖に突き落とした犯人がアンではないかと疑いをかけますが……。次で最終回の予定です。
コメント、感想お待ちしています。