09調査
GSTアリウム支部の事務所にて、野乃花は自身のデスクで書類や書籍を熱心に目を通している。
今日は午後過ぎまで大学に通い、その後GSTに出勤をしてきた。
先程まで奏斗と琉唯もアリウム支部に居たのだが、緊急の出動があり出て行ってしまった。
野乃花は書類から顔を上げると伸びをする。そして、チラリと掛け時計を見た。
すでに18時17分、伊吹が出勤するという時間が過ぎている。伊吹は大学から直接出勤すると言っていたが何かあって遅れているのだろうか?
今夜は伊吹と2人で任務がある。緊急の案件ではなく、以前より予定されていた調査任務だ。
ある飲食店で働いている一般人が異能者かもしれないとのことで、その真偽を確認するために野乃花達が客に扮して潜入をするのだ。
その一般人が異能者だと判断した場合、GST本部に案件が引き継がれるらしい。異能者は公私ともに特異な問題を抱えることが多く、異能に見合ったサポートが必要になる。そのために政府が異能者を把握することは重要なのだ。加えて、その異能が社会に影響を与える可能性が高い程政府は気を配らなくてはいけない。
野乃花は再度手元の資料に目を通していると、事務所のドアがガチャリと開く音がした。
ドアの方を見ると、野乃花は驚きの声を出した。
「伊吹ちゃん!?どうしたの…!?」
伊吹の髪や服は濡れており、白いブラウスは茶色く変色してしまっている。
「あはは…、さっき駅前で大学の奴らと遭遇しちゃって。」
伊吹は明るく振る舞うが、野乃花の心情は怒りが湧き出てくる。
これまでも身体を濡らしたり、所持品が壊れてしまっているところを見たことがある。伊吹は原因を言わないが、大学の同級生からいじめのようなものを受けているようだ。
「これ使って。」
野乃花は伊吹に駆け寄ると、タオルを渡す。
「ありがと。どうせこの後お店に行くために着替えなきゃだし、シャワー浴びてくるよ。」
伊吹はタオルを受け取るとすぐにその場を離れようとする。まるで伊吹はそれ以上話さなくて済むように野乃花から逃げるようだ。
しかし、野乃花は伊吹を引き留める。
「伊吹ちゃん、この前も似たようなことがあったけど大学の同級生にいじわるされてるの?」
「…っ……まぁね。本当、子どもじみたことしてくれるよね。」
伊吹は極力明るい声で言うが、野乃花の方へは振り返らない。伊吹の拳は少し震えていた。
「伊吹ちゃんは何も悪いことしてないのに…。私がその加害者達に言っ…」
「やめて‼」
伊吹の大きな声が響き渡る。
その悲痛な声を聞いて野乃花は口を閉じるしかなかった。
20年生きてきて父親以外でよく顔を合わすことになった親切で明るい伊吹、野乃花はそんな同僚の助けになりたい一心で発言をしたのだがどうたら距離感を誤ったらしい。
「ごめんね…。」
野乃花は申し訳なさそうに伊吹の背中に頭を下げた。
「っ…私もごめん…!」
伊吹は野乃花を見ずにそう言うとシャワー室へと走って行ってしまった。
静かな事務所で1人佇む野乃花。
伊吹はとても優しい子だ。はじめてアリウム支部に来たときもたくさん話しかけてくれて色々と親切に教えてくれた。今も自分が伊吹を傷つけてしまったというのに、伊吹はこちらを気遣って謝ってくれた。
そんな心優しい伊吹が不当に危害を加えられているのに何も出来ないどころか、さらに伊吹を追い込んでしまった。こういうときコミュニケーション能力が豊富な人はどうのように対応するのだろう…そんなことを相談できる相手も野乃花には居ない。
野乃花の目に伊吹の鞄が目に入る。それは伊吹がいつも大学に持って行っているキャンバス生地のトートバックだった。幸い鞄に濡れも汚れもなかったが、鞄に付いている白いクマのマスコットキーホルダーに茶色いシミがついていた。伊吹にかけられたものがマスコットに跳ねてしまったらしい。
確かこれは伊吹が気に入っているキャラクターのものだ。このキーホルダーも早朝から見せに並んで買ったと言っていた。
野乃花はキーホルダーを鞄から外し、シミ取りをしようと考える。また勝手なことをして伊吹に嫌な思いをさせてしまうかもしれないが、せっかくのお気に入りのマスコットを見て嫌な思い出を思い出して欲しくない。
細心の注意を払ってキーホルダーを鞄から外す野乃花、そのとき鞄から少し物が飛び出してしまった。
机の上に横に置いてあった鞄から黒色で無地のファイルやグレー色のペンケースが少し顔を出す。
野乃花はすぐに物を鞄の中に戻すと、今度こそマスコットを持って洗面所へと向かった。
洗面所でシミ取りをしながら考える野乃花。
伊吹の鞄の中身を見てしまったときに違和感を覚えた。伊吹は服装も鞄も見えるものは全て可愛らしいものばかりだ。しかし、先程見たノートやペンケースはとてもシンプルで伊吹のイメージからはかけ離れたものだった。
お洒落で可愛らしい伊吹だと小物にも気を遣っていそうなのに…。
「お待たせ‼」
マスコットをドライヤーで乾かしていた野乃花の元にいつものように元気で明るい伊吹が戻ってきた。
野乃花は咄嗟にドライヤーとマスコットを隠してしまう。
先程のこともあり今更後ろめたさを感じてしまったらしい。
「お、おかえり。」
野乃花は平坦な声と表情で言う。異能のハンデのおかげで表情が変わらないので動揺している姿はバレていない。
伊吹は髪を下ろし、大人っぽいメイクをしている。服装もいつものレースが使われているものではなく、シンプルでふんわりとしたリボンがついたブラウスにカフェオレ色のスカート、ピンヒールを履いていた。
「シャワー浴びるついでに潜入用のメイクと服に着替えてきたよ~。野乃花もメイクと着替えをしよっか?」
「うん。私がメイクとかファッションのことよくわからないからって伊吹ちゃんに全部任せちゃってごめんね。」
今夜潜入する場所は歓楽街で人気のホストクラブである。そこで働いているホストの1人が異能を持つ人物かもしれないので、野乃花達は客としてそこに潜入し対象者の異能の有無を確認する予定だ。
「そんなの気にしなくて良いよ!むしろ今回みたいにブランド服を買える機会なんて滅多にないから楽しかったし!」
伊吹はウィンクをして言う。
対象者はホストクラブで売上No.1の実力者であるために、野乃花達がお金をたくさん持っている客に見せ確実に接触する必要があった。対象者の異能の有無を確認するためには伊吹の接触感応能力が必要となるのだが、伊吹はお酒を飲める年齢ではない。そのため、飲酒可能な野乃花がお金を持っている”太客”に扮し、伊吹はそんな野乃花について来ただけの友人として振るまう予定である。
「どうせ経費で落ちるし、遠慮なく高級ブランドの服やアクセサリーを買ったりレンタルしちゃった~。」
楽しそうにそう言って準備していた服等を見せてくれる伊吹。先程の表情とは変わり、本当に楽しそうだった。
野乃花は伊吹が準備してくれた服に着替えた。上質な黒のワンピースで胸元があいており、身に着けているネックレスやピアス、腕時計は有名なブランドのものだ。もちろんバックやピンヒールも高級なものである。
伊吹のセンスの良いコーディネートやメイクも相まって野乃花の美しさがさらに際立たせる。むしろ夜の街で目立ちすぎるだろう。
2人は件のホストクラブがある街に訪れると下見も兼ねて少し歩き回った後に、そのホストクラブの出入り口がよく見えるレストランで夕食を取ることにした。
夜の街に訪れるのは初めてであった野乃花であるが、無表情で堂々とした佇まいでそんなことを感じさせない。
食事をしながら野乃花と伊吹が今後の動きを確認する。
「私もホストクラブに行ったことはないけど、おそらく最初から人気者である対象者と同じテーブルにつくことは出来ないみたい。だから、野乃花はお金はあるけど、対象者じゃない相手には不満そうに振る舞って目当ての人を呼び出そう。」
伊吹が丁寧に説明してくれる。
「うん、演技できるかわからないけど頑張ってみるよ。」
「野乃花はいつも通りしてるだけで大丈夫だよ。」
伊吹は野乃花を励ますと、早速対象者のいるホストクラブへと繰り出した。
華やかな格好をした2人が街を歩くと多くのホストから店へのお誘いの声がかかる。野乃花は堂々と歩き、伊吹は不安そうな素振りで野乃花の腕に抱き着いていた。もちろん2人は演技中だ。
そして、目当てのホストクラブの前を通った時も声が掛けられる。
「よろしければ今日は俺たちの店で楽しんで行きませんか?」
そう呼び込みをするホストの声に野乃花はそっと足を止めた。
「…今日はここにしようかしら。」
そして静かにそう呟き、伊吹の方を見た。
呼び込みをしていたホストは喜び、丁寧に店内に案内している。
「ノアちゃん、ここ高そうだけど大丈夫?」
伊吹は野乃花の腕に抱き着いたまま不安そうに小声で言う。
「大丈夫よ。今日はイチカの誕生日を祝うために来たんだから楽しみましょ。」
野乃花は涼しい顔で答える。
ノアとは野乃花の潜入時の名前で、イチカは伊吹の潜入名だ。
「今日誕生日なんすか?この店で祝ってくれて光栄っす!」
店の入り口で迎え入れてくれた若いホストが人懐っこい笑顔で接客してくれる。
「…ええ、期待しているわ。」
ホストの反応には反して野乃花の反応は冷たい。
自分たちのテーブルへ案内される際に壁に飾ってあるホスト達の写真が目に入った。一番目立つ場所に飾ってある写真がこのホストクラブで1番の売り上げを誇る人物であり今回の調査対象だ。
一重でそばかすが目立ち、あまり華がある容姿ではない。見た目だけが全てではないが、調査によると彼の性格も内向的で話が上手いというわけでもないらしい。
やはり怪しい…。
野乃花と伊吹は再確認するように互いに目くばせをする。
席につくと、数人のホストが野乃花と伊吹を囲む。伊吹は野乃花にくっついたままで緊張している様子だ。
「何飲みますか?」
2人の両隣にいる男性がメニュー表を見せる。
「うーん、私全然わからないからノアちゃんが選んで。」
メニュー表を見た伊吹はそう言って全てを野乃花に任せることにした。
「わかったわ。まずはペルエポックにしようかな。」
もちろん野乃花はお酒に関してあまり知らないので、値段を見て比較的高めのシャンパンを選んだ…さもシャンパンに詳しいかのように。
野乃花の選んだシャンパンは富裕層に好まれるもので決して安いものではなく簡単に頼めるものではなかった。しかし、野乃花はリアクションもせず当たり前のように高級シャンパンを頼むので周囲のホスト達が色めき立つ。
「…この子のものはノンアルコールにしてくれる?値段は気にしないわ。美味しくて甘いのにしてあげて。」
野乃花はオーダーを伝えたホストの耳に顔を寄せ小さな声で伝える。
伊吹はアルコールを飲める年齢ではないので、伊吹との打合せ通りそう伝えたのである。
野乃花の整った顔を近付けられた男性は少し頬を赤らめる。惚れさせるホストがむしろ野乃花に惚れる勢いだ。
「ノアさん、とてもお綺麗ですね。芸能のお仕事ですか?」
「ここら辺に住んでいるんですか?」
「何か食べ物でも頼みます?」
次々と野乃花に話しかけるホスト達。
初来店で若い女性である野乃花は全身を高級ブランドで包まれており上品だ。加えてとても落ち着き払っていてホストクラブに通い慣れている様子だった。
そのため、ホスト達は野乃花に気に入られようと必死だ。
しかし、野乃花は優雅にシャンパンを飲み、無表情で受け答えも必要最低限のもので基本的に伊吹とのみ会話をしている。
野乃花はただ単に緊張で何を話して良いのかわからないだけなのだが、無表情で平坦な声がそれを隠していた。
野乃花の反応が良くないので次々と新しいホストが入れ替わる。
しかし、1時間経って野乃花が放った言葉は
「イチカ、まだ夜も長いし他のお店に行く?」
だった。
周りのホスト達が少し焦ったような素振りを見せる。野乃花は店を気に入らず帰ろうとしていると思ったのだ。
「えっ、でもまだ飲み物残ってるよ?」
伊吹が不思議そうに言う。
「次の店でまた頼めばいいじゃない。」
「そっっか、じゃあ…」
伊吹が店を出ようと言おうとしたとき、ホストクラブのオーナーが素早く現れた。
「お嬢様方、実は本日初回のお客様にサービスでVIPルームへのご案内をしているんです。丁度今VIPルームが空いたのでいかがですか?もちろんどなたでも指名していただいて結構ですよ。」
ニコニコと野乃花にそう言うオーナー。
すでに結構なお金を使っている野乃花を是非とも固定客にしたいらしい。
「…そうね、もう少し静かに飲みたいと思っていたの。こちらで1番の方をお願い。他の人はいらないわ。それと、アルモンドの黒をお願い。」
その野乃花の言葉でオーナーは満面の笑みを浮かべた。野乃花を店に留めることに成功した上に最高級のシャンパンを注文してもらったからだ。
野乃花と伊吹が半個室のVIPルームへ移動すると、程なくしてアルマンドを持った素朴な顔をした男性がやって来た。この店のNo.1であり、2人の調査対象であるスバルだ。
やっと目当ての人に会えたことに内心安堵を覚える。
スバルは伊吹の隣に座り、伊吹は野乃花とスバルの間に座っている。
野乃花はスバルに見えないように伊吹に触れ異能を発動させる。スバルが持っているかもしれない異能を防ぐためだ。
「えっと、御指名ありがとうございます。…まずは乾杯しましょうか?」
言葉を詰まらせながらそう言うスバル。目もあまり合わず接客に向いているようには見えない。増々このような男性がNO.1ホストであることに疑問が生じる。
「ええ、やっと楽しい時間を過ごせそうだわ。」
「乾杯!」
野乃花と伊吹がそれぞれ言う。
この男性1人のためにすでに多額の飲食料を使っている。通常であればここまで値段を掛けて異能者調査をしない。
ここまでお金を掛けて秘密裏に調査する理由は彼が持っているかもしれない異能のためだった。
“魅了”の異能…それは相手の精神に作用し自分に好意を持たせることの出来る能力だ。他者の精神に影響を及ぼす異能はとても珍しく、そして危険だ。そんな異能者の把握は政府にとって重要なことであり、特に犯罪行為に使用されないようにしなくてはいけないのだ。
「ふふっ、やっぱり私の占い当たってたでしょ?」
伊吹が野乃花に笑いかける。
「そうね。イチカの占いの腕は確かね。」
野乃花はシャンパンを一口飲み、お淑やかに答える。
「占いですか?」
2人の蒔いた餌に食いつくスバル。計画通りだ。
「イチカは占いが得意なの。今日もこのお店で素敵なお酒と人に出会えるって言ってたのよ。」
「そ、そうなんですね。」
スバルは占いの話を信じていないようで、そう答えるので精一杯のようだった。やはり接客に向いている性格だとは思えない。
「スバルさんも占ってあげようか?タロットが一番得意なんだけど、手相占いの腕もなかなかよ~。」
伊吹は無邪気に笑って言う。
「えっと…」
受け答えに困っていたスバル。
「ものは試しよ。占ってもらったら?」
野乃花のその言葉でスバルは伊吹に占いをしてもらうことになった。
「よーし、じゃあ手をちょっと触らせてもらうね~。」
伊吹がスバルの手を取り手のひらをじっと見る。
そして、野乃花はそんな伊吹にさり気無く触れたまま能力を使い続けスバルが持っているかもしれない魅了の異能に影響を受けないように細心の注意を払う。
伊吹はスバルの手を真剣に見つめている。そして、自身の接触感応の異能を発動させた。一見、手の平を見ているだけだ。
「うーん、なるほど…ふむふむ…」
そう言いながら伊吹はスバルの手に集中している。
そして、1分程経った頃、伊吹は手をはなしぱっと顔を上げる。
「スバルさん、良い手相をしてるね!これから貴方の人生を変える出会いがあるはずよ。」
伊吹が笑顔でそう言うと、野乃花は内心胸を撫でおろす。
伊吹がスバルを異能保持者であると判断したのだ。
そうと決まればもうこのホストクラブに用はなかった。野乃花は化粧室に行くと伝え中座することにした。
化粧室に入ると、予定通りGST本部に連絡を入れた。野乃花がスバルが異能者であると伝えると、本部からすぐにスバルに接触を図るために人員を送るとのことだった。
本部の人間が来るまでこの店に滞在したら、今日の任務は完了だ。後は本部の人間がスバルに異能についての話や保護について話をすることだろう。
ドンッ
野乃花が化粧室を出た時、廊下を歩いていた人物にぶつかってしまった。
慣れないピンヒールを履いていた野乃花は体勢を崩してしまう。
「おっと、大丈夫ですか?」
ぶつかった相手が野乃花を支えてくれる。
その人はここで働いているホストの男性で少し派手なワイシャツとスーツに身を包んでいた。男性は小柄で色素の薄いミルクティー色のミディアムロングヘアをハーフアップにしており、たれ目で右の目元には泣きホクロがある。甘いマスクの彼はホストクラブでも人気がありそうだ。
「あ、ごめんなさい。ありがとう。」
小柄ながらにがっしりと支えてくれたこの男性に少し驚きつつも御礼を言う。
「いえ、転ばなくて良かったです。」
男性は野乃花から手を話すと優しく微笑んだ。
「では、私はこれで…。」
野乃花がその場から去ろうとすると、男性が背後から声を掛けた。
「あの…また会いましょう、絶対に。」
男性が少し不安そうにそう言う。
客としてまたこの店に訪れて欲しいという接客テクニックだろうか。
「えっと…機会があれば…?」
もうこの店に来ることがないであろう野乃花はそう答えることしか出来なかった。
少し不思議な言動をする男性ではあるが、自身がホストクラブに来たことがないのでそう感じるだけかもしれない。そう思うと野乃花は急いで伊吹のいる席へと戻ったのであった。
30分後、野乃花と伊吹は本部の人間が到着したことを聞きその店を後にした。想像以上に料金を払ってしまったことで、津路に何か言われるかもしれないが今は考えないことにする。
店から出た2人は異世界から現実世界に戻ってきたような気持ちだった。ホストクラブはあまりにも日常とかけ離れた場所だったからだ。
「野乃花、お疲れ様~。今日は夜遅くまで大変だったね。」
伊吹が伸びをしながら言う。
「うん、伊吹ちゃんもお疲れ様。スバルさんが異能者だとわかって良かったね。」
「まぁね。彼の記憶覗いたけど、本人は魅了の異能があるって気付いてないみたい。」
「無意識のうちに魅了の異能を使ってたってこと?」
「そうだね。だから異能のハンデで苦しんでる理由もわからないみたい。魅了は人心に影響する強い力だからハンデも厳しいはずだし、ちゃんと管理するためにも本部に介入してもらわなきゃ。」
「うん。そんなに重要な能力なら反社会組織の人間に狙われていてもおかしくないし早く保護できて良かったよ。」
2人はそんな会話をしながらすっかりと夜も深けた街を後にするのだった。