表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

06昔の秋

5歳の夏

“あなたは女の子なの”

「でも、ほいくえんのみんなはわたしのことおとこのこだっていうよ?」

9歳の春

“やっぱりあなたにはリボンとフリルのスカートが似合うわ”

(でも、僕はズボンが履きたい。かっこいい龍の筆箱も欲しいよ…。)

12歳の冬

“中学校のセーラー服、可愛かったわね。”

「うん!春からこの制服着るの楽しみだよ…!」

そして、13歳の春…ずっと一緒に居た母親は入院してしまった。

ゴミ溜めのような家でいつものように過ごしていると、知らない大人がやってきた。

家から悪臭がすると近隣の住民から通報があったらしい。

そして、私は”保護”されたのだ。

母親は医師の面談の後入院が決まった。心に問題があって私とは一緒に暮らせないらしい。

私を引き取ってくれたのは叔父だった。

叔父は私に言った。

“君は男だ、女の子じゃない”

その瞬間、全てが真っ白になった。

本当は知っていた。

最初からわかっていたんだ、自分の性別が男であるということを。

私は男の子…

僕は女の子…

私は…僕は……一体何者なんだろう。

最初から全部わかっていたけど、何もわからなくなってしまった。

僕はツインテールも似合うし可愛いスカートも履きこなす。誰も僕を女の子と疑わない。

でも、気付いたら手元にある物はシンプルな物ばかりだ。

真っ黒なペンケースにグレーのカーテン、服装に比べて周囲の小物や家具は暗い色でシンプルなデザインのものばかりだ。

この歯がゆい矛盾、もう何もわからない。

自分って何?自分はどこに行っちゃったんだろう…。


ビービービーッ

パァンッ

警報音とほぼ同時に自分が放った弾丸の音が射撃場に響き渡る。

弾丸は狙った場所に寸分違わず命中した。

ストレスがかかる程命中率が上がる、昔からだ。

頬を伝う汗を拭いながらスマートフォンの画面を着けると、先程まで見ていた母からのメールが目に入った。

“伊吹ちゃん、元気?この前お散歩をしてたら伊吹ちゃんに似合うワンピースを見つけたのよ…”

昔から母の言葉は変わらない。

ピリリリッ

どこかの世界から現実に引き戻されたかのようにスマートフォンの画面が着信画面に切り替わった。

最近アリウム支部にやってきた”本当”の女の子である冬葉野乃花からの連絡だ。

…よし、隣のジムにいる琉唯に声を掛けて事務所に行かなきゃ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ