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不思議な朝と、うずくまる少女

この作品はおそらく一生完結することはありません。

「完結しない物語はムズムズするから読みたくない」という人ももちろんいるでしょう。

しかし、私は信じています。きっといつかこの物語の正しいエンディングを見ることができる日が来ると。その日を楽しみに、この作品を書いていこうと思います。


その朝、私はふわふわとした不思議な感覚を覚えた。

きっと今を生きる現代人なら一度は味わったことがあるであろう感覚だ。


自分が生きているこの世界が偽物に思えてしまう瞬間。

マトリックスのように、水槽に浮かぶ脳が夢を見るように、この世界が本物ではないと思ってしまう瞬間。

例えば駅のホーム。電車が目の前に到着したのに、進まなくてはいけない一歩が出せないように感じる。もしくは、すでに電車に向けて一歩を踏み出しているのに、その足が地面をつかめていないように感じる。そんな瞬間が、きっとみんなにもあるだろう。


この朝、私もそんな不思議を感じながら、高校の廊下を歩いていた。

100mほどの廊下は、右側にホームルーム教室、左側には中庭というよくある構造をしていた。地面も一般的な高校と同様、ゴムのようなプラスチックのようなよくわからない素材が張り付けられており、一歩踏み出すごとに上履きがキュッと高い音を鳴らす。


異様に足音が響いた


いつも登校時間がギリギリなため、すでにほとんどの生徒は登校しており、彼らのしゃべり声がうるさくこだまする、というのが常だ。

しかし、今が何時なのかはわからないが、今日の教室の席はまだガラガラなようだ。遅延だろうか・・確かに天気も悪い。いつもは自転車通学の人も電車やバスに乗っているのだろう。


そんなことを考えながら、キュッという靴音とともに教室に向かう。



2年7組34番、玄関からは最も遠い教室である。

足取りが重い。

一歩を踏み出した感覚がない。ふわふわと、滑るように移動しているのではないかと錯覚するが、キュッというゴムがこすれる音が私を強く現実に引き戻す。


静かだ。


教室につき、いつも通り自分の席に向かい、いつも通り準備をする。


一時限目が終わり、トイレに向かうために教室を出る。すると扉の横でいかにも陰キャな少女が座り込んでいた。髪を後ろで一つに縛っているが、前髪が長く顔が見えない。気のせいか制服のセーラー服も厚いように見える。遅刻だろうか? 

「まあ、俺には関係ないか」

例え偏差値66の高校であっても遅刻をする者はいる。それも1人や2人ではない。そのためこの少女が遅刻者だろうか、生理だろうが俺にはどうすることもできない問題だ。

”人間は助け合い”なんて耳障りのいい言葉はよく聞くが、それを実際に実践できる人など本当に一握りだろう。ましてや高校生にそんな行動力はない。

 ”だから” なんて言うつもりはないが、俺は無視をした。それがすべてだ。





二時限目も終了する。いつもと変わらない。


ルーティーン。

習慣。

刷り込み。

ループ。

反復。


なんとでもいえるが、繰り返しているとだんだんと行動に違和感がなくなってくる。苦痛が苦痛じゃなくなり、異常が異常じゃなくなる。


人間というのは恐ろしいもので、特別なものには興味をもって接し、とにかく吸収しようとする。が、いつも繰り返していることには何の違和感も抱かなくなる。


シャワーを浴びているとき、たったさっきシャンプーをしていたかどうか分からなくなる。

朝起きて、なんでインスタを開いたのかわからない。

電車に乗ったとき、どうして手がズボンのポケットのスマホに伸びているのか分からない。


そういったことが多々あるだろう。しかし、その行動に違和感を覚える瞬間も確かにある。


あれ、今シャンプーしたっけ

あれ、インスタの通知なんて来てたっけ

あれ、スマホ、ポケットじゃなくてバックに入れなかったっけ


それに気づいた瞬間、自分が今まで違和感なくその行動を繰り返していたことが怖くなる。自分がルーティーンという刷り込みに囚われていたことに恐怖を覚える。

そしてその気づきというのは自分の今までの生活が変わるターニングポイントなのではないかと思う。



俺は気が付いた。


教室のドア、そのドアについている窓。そこから見える教室の席にだれも座っていない。


俺は直接教室を覗き込んだ。まばらだが確かにそこには生徒がいる。友人と立ち話をしているやつも知れば、さっきの授業の復習をしているやつもいる。とにかく、確かにそこに生徒はいるのだ。

俺はもう一度窓越しに教室を詳しくのぞき込む。

さっきは角度的に見えていなかったところに何人か生徒が座っていた。だが何も安心できていない。こんどは生徒の数がどう考えても ”足りていない”

教室を直接見て、もう一度窓越しに見る。やはりいるはずの生徒が何人かいない。


だんだんと血の気が引いていき、鳥肌が全身に広がっていく。今までのふわふわとした感覚も鮮明になる。


   すべてが繋がった。

なんで今朝人が少ないように思えたのか、なんであんなに靴の音が響いて聞こえたのか。登校時間はいつもより早いわけではなかったのに。


 ”恐怖”


まさにその一言。

それだけのことが目の前で起きている。こんなこと今まで経験したことないし、したくもない。

意味不明、摩訶不思議。俺はドアの前で立ち尽くしていた。



そのとき、教室のドアの前でうずくまっていた少女が口を開いた。


「あんた、見えてるんだ。へぇー」


ボソッとつぶやくように放たれたその一言は何とか俺の耳に到達した。まさかしゃべりだすとは思ってもみなかった予想外の一言に思わず振り向いてしまった。その少女は先ほどと全く同じ位置、全く同じ態勢だった。

だが、俺は何かが見えているわけじゃない。座っているはずの人が ”みえていない” のだ。


「それっていったいどういう意味d・・」


そう言葉を発しようとしたとき、相手の手が素早く動いていた。

何をしようとしているのかはわからない。何かをこねるような、何かを玩ぶような、そんな不思議な動きだった。

そして、俺はなんとなく察した。これは何かの術なのではないかと。

もちろんわからない。真相は全く分からないが、なんとなく直感がそうささやいていた。


ほんの1秒かかるか掛からないかという時間で彼女は素早く手を動かし、その手を俺の方に向けて勢いよく振った。


瞬間、俺は巨大な質量に顔面を殴られた。痛みは感じない。あまりの衝撃に、吹き飛ばされたのだろう。目の前に天井が見える。そして、その勢いのまま俺の体はきれいな軌道を描いて一回転した。

ベシャッと地面にたたきつけられる。


全く意味が分からない。すべてが理解できない。のに、まだ会話すらしていないのに、問答無用で吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。


「見えない怪異に取りつかれていたんだよ」


起き上がりながらそんな言葉が耳に届いた。

怪異?そんな疑問とともに扉の窓の方に目をやる。するとそこには透明な幕のようなものが張っていた。分厚い、プルプルとした質感のそれはすべての教室の窓に張り付いていた。

そして、教室の奥の窓から見える景色も豹変していた。

いつもはきれいな青空が広がっているが、その空は深紅に染まり、雲は汚い深蘇芳色に変わっていた。

「私はそういう類のものを退治する使命がある」


そう、彼女は言い放った。

景色の奥にみえる山のようなだいだら法師が、その言葉を深く強く裏付けしていた。


すっと彼女は立ち上がると、俺の手を取り走り出した。

俺は引かれるまま彼女に全力でついていく。

うちの高校の廊下は100m近い長さがあるというのに、彼女は息を切らすことなく走っていく。俺も負けじと彼女に並走する。


彼女は走りながら手の中に印を結び始めた。速度は一切落ちていない。

廊下の端が近づいてきた。

しかし彼女はスピードを落とさないどころかだんだんと加速しているようにも感じる。それに並走している自分も、だんだんと速度を上げていく。


ピーッ


どこからか甲高い笛の音が聞こえる。

後ろがだんだんと何かに飲み込まれるように変わっていく。

一人、何者かが追いかけてくる。

壁はもう目の前だ。

ぶつかる・・


そう覚悟した瞬間、目の前の景色が一変した。


地面は土に変わり、右手には視界に収まりきらないほどの大木が見える。周囲には多くの人々が歩いており、全員アニメでよく見る忍びのような恰好をしていた。


「あんた、やったわねぇ」


後ろから声が聞こえる。

振り返ると、先ほど後ろから追いかけてきた少女だった。彼女も同じように忍びの恰好をしている。


「もうこれ連れてくるしかなかった」

陰キャ少女はそう答えた。


俺は直感で感じた。

 彼女たちの隠れ里のような場所に連れてこられてしまったのだと。

私はこの夢を見た朝、衝撃を受けました。初めて文字として残しておきたいと感じた夢でした。あまりにもリアルで、あまりにも鮮明で、鮮やかでした。あの不思議な世界はどこかに存在する世界線なのではないか、未来に起こることを予知したものなのではないか。そう思いたくて仕方がありません。

今までは「夢」というものを幻想的なものとは考えていませんでした。その日に体験した出来事が反映されて脳が映し出す楽しい想像の物語。その程度のものだと考えていました。

しかし、2024年8月6日の朝に私が見たこの夢はあまりにも鮮烈でした。考えれば考えるほど、私が想像したとは思えないほどのクオリティ。まるでアニメの1話が始まるかのようなわくわく感。この世界はパラレルワールドなのではないか。どこかに存在する世界なのではないか。その世界線に夢を通じて私が接続したのではないか。そのように考えてしまいます。

だから、きっといつかこの世界に再接続することができる日が来るのではないでしょうか。その日、私は初めてこの物語の正しいエンディングを迎えることができると信じています。

そのエンディングを見てみたいを思う人が一人でもいる限り、読者が一人でも残っている限り、私は私の想像するエンディングを目指してこの作品を続けていきたいと思います。




作品を続けるためにも、いいねと星の評価をお願いいたします。

処女作のため、本当に励みになります。

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