後書き【先生のアノニマ(上)〜本編後のご挨拶】
上巻が終わったところで、皆様いくらかの疑問をお持ちの事と思います。これからは、【「勝手にあなたの疑問にお答えします!」コーナー】と題しまして、いくつかの疑問に勝手にお答えしようと思います。
早速ですが、疑問その一。タイトルの【アノニマ】って何? という疑問。これはですねー、うーん。お答えしたいところですが、今ここで書いちゃうとネタバレになってしまうので、その、スミマセン。ある方面の事にお詳しい方はご存じだと思いますが、仏語です、これ。アルファベットでは【anonyme】と書きます。和訳では【匿名】または【偽名】の意。仏語に限らず、ヨーロッパ各国の言語でも、似たようなスペル、発音にして、同様の意味で使われているようです。ゆーめーなハッカー集団のは英語ですか、確か。でも、今作のタイトルは、あくまでも仏語。当然、そこに少し意味があるのですが、ネタバレになるので、やはりその、スミマセン。中巻までお待ちくださいませ。そのうち種明かしが出てきます。仏語での発音を正確にカタカナで書くと【アノニム】と聞こえるようなのですが、くどいようですがあくまでも今作では【アノニマ】です。カタカナ表記では、そのように記載されている事なので。
続きまして、疑問その二。何故作中で法律用語がチラつくのか。うーん。これについても、やはり今は言えません。ネタバレになるので。スミマセン。やはり中巻辺りで明かされます。三部構成ですので、いきなり上巻でバラしちゃ盛り上がりに欠けるための演出という事で、ご容赦いただければと。それを書くあなたは何者? という疑問も、ノーコメントです。素人作家はそれこそ【アノニマ】だからこそ、思い切り書けるというモンですよ。例え有名になっても顔出ししません。まぁなるこたーないでしょうが。
更に、疑問その三。何故横書きなのに、数字の表記が漢数字なのか。これは単に、縦書き原稿も意識して書いている一方で、実はこれにも少し思惑があったりします。が、それを今書いちゃうと、やっぱしネタバレになっちゃう。うーん。何にも言えなくて困っちゃう! こんなのイヤイヤ、という私は、前書きや後書きの暴露大会好きです。言えない、書けないのなら思わせ振りすんな! と言われそうですが、そこはご愛嬌という事でご容赦いただければと。以上、一人芝居でした。
では、折角の機会ですので、ここで書ける暴露大会を。何故、このような作品を書いたのか、または思いついたのか。うーん。何ででしょう? 私もよく分かりません。ストーリーは完全なる後つけだったので。先にキャラクターが出来て、そこからストーリーをつけた具合。どっちが主人公だか分からないので、W主人公仕立てですが、活躍するのは具衛の方ですかね。彼は意外性の男なので。モチーフは特にありません。ボンヤリしたヤツが、実は何かの手練れだったら。みんな多少なりとも驚きますわね。そんな意図を含ませ、彼は生まれました。常に風を切って歩いているヤツが強いとは限らない。実は市井に塗れた素朴な人間の中に、クソ強ヤローがいたら。これはこれで中々痛快なんではないか。そんな穿った視点が、実は結構好きな私だったりします。日頃の様々な理不尽や横暴に対し、勇気ある服従を示しておられる、大多数のそれなりに善良でそれなりに弱い庶民の味方と言いますか。具衛はそんな中で生まれた【草食系のボンヤリヒーロー】とでも言いましょうか。ヤツはそんな感じで書いています。お読みいただいた皆様の、何かの励みになればいいな。作中の彼は、周りに振り回されっ放しの苦労させっ放しですが、そんな重要な役どころなので致し方なし! 少し気の毒な感じもしますが、まぁ彼なら大丈夫でしょう! とか言う作者の私は、ザ・無責任。
一方で真琴の方はと言うと、これまたモチーフはありません。お金持ちのお嬢様で頗る美人。頭が良くて小難しいけど、それなりに人格は出来ている。でも、色々溜め込んでて爆発寸前! そんだけです。余り作者で決めつけ過ぎず、自由に動いて欲しいと思ったので。一応二人は、完全なるオリジナルキャラクターですが、イマイチパッとしないような。なんて思ったそこのあなた! ごもっともです。狙って書いている訳じゃありませんが、そんな感じの、一見何処でもいそうな人がヒーローでヒロインって、面白いじゃないですか。スー○ーマンだって、普段は普通の人ですし。颯爽と現れてスマートに困っている人を助ける。でもこれって、別に彼らに限らず誰しもが、何かでそうなり得る資質を多少なりとも持っていると思うんです。大なり小なり人助けって出来るものだし。助けられた人にとってはそれをしてくれた人は、ヒーローでヒロインでしょう。でも、作中の二人はそのスキルが高い? だけに、意外にそこらへんにいそうな彼らであっても、ドンドン何かの渦に巻き込まれていく。神は乗り越えられない壁を用意しない的な感じ。そんなのなら最後まで書けるかな。難しいのは盛り上がり具合と着地点だよな。って感じで、とりあえず勢いで書き始めたら、何とか出来上がったのが今作だった訳です。とは言え上巻は、何となくイチャイチャベタベタして終わってるんですよね。それはもう、当然こっから波乱が待ち受けている、その前借りみたいなモンなんですよ。あっはっは。てな事を言ってたら、具衛と真琴、特に後者の女は怖そうです。
前書きでも少し触れましたが、現実世界はとてもドラマチックだと思います。特別な力や財産、地位や名誉があろうがなかろうが、良くも悪くも誰しもが一寸先は闇。現実のドラマは当然良し悪しがあるし、誰もが知っている尺度でそれが起こる。だからこそ、それを想像したフィクションも盛り上がる訳です。一見有り得ない事を書いているようで、現実はその上をいく。現実は小説より何とかなんて事は、意外によくある。そう考えると現実世界、楽しいばかりじゃないけどワクワクするんですよ。同じ日常の繰り返しのように思えても、それは似ているだけで全く同じじゃない。諸行無常。平坦に生きていても、誰しも大なり小なりドラマの中で生きている。あなたは、その主人公なんです。仮装世界モノや転生モノの物語もいいと思いますし、そうした物語も当然ドラマチックだと思いますが、リアルさという側面においては、現実世界モノ程それを追及出来るものもないんではないかと思う訳です。だってみんなが現実に生きている世界の話なんですから。分かりやすい例えは、現代モノのホラー作品ですね。宣伝見るだけで私は怖くてよー見ませんが、あのリアルですよ。あれはあれで、ファンタジー要素も入ってくるんでしょうけど。それの痛快活劇版を書ければ楽しいでしょうね。今作は、その走りのような作品になっています。次作【先生のアノニマ 2】の前作なので(【アノニマ 2】も、どうぞよしなに!)。
あ、あと、前書きで少し触れましたが、「人様に迷惑をかけないように自由に生きる」というのは、つまり【自由と責任】の概念ですね。いろんな偉人や哲人なんかが似たような事を言ってるんでしょうが、民主主義的にして法治主義的な社会の原則の一つでもあります。それをここで余り書いちゃうと、またネタバレになりそうなので、やっぱりあんまり書けません。が、折角の機会なので、本編に触れないレベルで少々思うところを。
【権利と義務】もそうですが、【自由と責任】とは、それぞれが相反する関係にある言葉で、要するに「いいトコ取りは出来ません」という世の中の道理をザックリ示しているフレーズです。権利を主張する分当然多くの義務を負う事になり、自由を謳歌する分だけ実は責任は重くなる。その帳尻は、過去、現在、未来に渡って合わせられるので、その時々を見ただけでは一見して分からない。けど、確実にみんな、絶対に何らかの形で帳尻合わされている。そこは勝負事なんかとは違います。今の世の中は、一昔前の封建時代のような、一方的な搾取で成り立っていないので、誰かが押せば、何処かの誰かは引いている。または押されたり引っこ抜いたり。エネルギー保存の法則と同じだと思います。その総量は変わらない。それらが極めて際どい均衡で成り立っていたりする訳ですよ。だから何処かの誰かが自己都合でそれを破ると、いわれのない不利益を被る気の毒な人が生まれてしまう。煩悩塗れの人間の社会で完璧な秩序なんて到底無理な訳で、とにかく人間なんてのは、教育しないとろくな事をしない。私は性悪説論者です。いい事をしながら悪い事する人間という生き物(by鬼○犯科帳)のせいで、だからこそこの世の真理は理不尽で不公平にも思えてしまう一方で、良くも悪くもみんなそんな目に合う可能性はある訳で、実はそんなところは平等だったりする。先進的な民主主義国家では、基本的人権と国民主権は当たり前という社会において、そこでは何をやっても自由ですが、それは責任を担保に成り立っていたりする。何かをしでかしたら、その責任が牙を剥く訳です。そんなん知らん分からんは通らない。民主主義と法治主義はセットなので。法は王様。逆らえない。
ついでなので、もう一言。【法の下の平等】って有名な原則のあれ。大抵の人は、都合よく考えていると思います。そこのあなたもきっとそう? では? あのフレーズを習った時、「法律が僕や私を助けてくれる」って思ったそこのあなた! 五〇点です。私は教え方にも問題があると思っています。教科書通りに授業をしておられる学校の先生方を責める訳じゃありませんが、言葉足らずなんではないかと(やっぱり責めるか?)。あのフレーズ、一言足りません。頭に一言。逆にそれをつければよく理解出来ます。先程来から何度となくこの場で書いている【良くも悪くも】。【法の下の平等】の原則も、またそれなんです。良いように作用する場合も、悪いように作用する場合も、法の下に平等。それを大抵の人は、都合よく解釈しているように思えてならない昨今。世の中では、理不尽な事件や事故が毎日起きています。分かりやすく一言で言うなれば、まさしく【無責任】というヤツです。故意か過失か、法を守らない【自由】を選択したのであれば、当然【責任】を負う立場になる。にも関わらず、被害を受けた方が救われるケースの少なさです。いつまでも、もがき苦しむ。その原因となった人間に「若気の至り」とか、「気の迷い」とか、「知らない」「分からない」とかで片づけられる事の多さがそうさせる。私には、「罪を憎んで人を憎まず(これもby鬼○犯科帳)」という寛大さはありません(それを言える長谷○平蔵は凄い)。こんな感じでこの世はまだまだ意外に無法で、それが地球規模ともなると、もう殆どカオスです。法治主義なんでまだ歴史浅いし、まぁそんなモンですか。しかし、私。こんな事書くの何回目? って感じです、実は。他の作品の前書きか後書きでも、自由、責任、法律なんかの話をしてたりする。つい言いたく、書きたくなっちゃうんですよねぇ。世の中、乱れてるから。私の作品を愛読してらっしゃるコアなファンの方なら「また言ってる(書いてる)」と思われるんでしょうけど、そこもご愛嬌という事で(大体、そんな人いないか!)。そんな法も人が作り出したものである以上、不完全だったりする訳で、その抜け穴があったりするってのは、また別の作品の何処かで書いていたりします。
いい事もあれば悪い事もある。別に哲学を説くつもりはありませんが、良くも悪くもこの世は美しく、かつ醜悪です。そんな世の事だから、人生ヒキコモゴモ。只でも高度で複雑な現代社会ですからね。だからこそ、ドラマチックな訳ですよ。そんな舞台を背景に描く現実モノの物語は、ドラマチックでリアル。それにしてもこの後書き。長々と稚拙な証明のような、言い訳のような、洗脳のような。そんなんになりつつあるな。そろそろやめトコ。
同じ現実を生きるのならば、ネガティブに生きていては勿体ないような気がしてなりません。法を遵守するとは聞こえが固いですが、みんなで決めたルールですから同じように守りつつ、しかして野心的にチャレンジングに。それだけで現実は、良くも悪くもドラマチックに動き出す。それが良い事ならば、当然良い方向に動く、なんて単純な世の中じゃありませんが、長い人生、野心的な方が楽しいと思う訳です。別に目をギラつかせて生きるって意味ではなくて、よく言う何かの目標とか。あれも一つの野心。言葉遊びのようですが、言葉は魔力を持っている訳で、そう思う事で自己催眠状態に持っていく事も出来る。野心って、響きがいいじゃないですか。どうせ訳の分からん世の中なんですから、そこは自分に酔ったモン勝ちですよ。とか、何か急にやっつけ仕事みたいな事を言ってる私も、実は割とネガティブだったりする訳で、せめて自分が書く作品ぐらいはチャレンジングでありたいと。そんなこんなで書いていたら、それまでろくに完結出来なかったポンコツ作家が、曲がりなりにも完結させたのが今作だったと。そんな処女作です。
またしても、取り止めのない事をウダウダと書いていますので、いい加減やめようと思いますが、お目に止まりにくい現実モノにも目を向けて欲しいな、という、それこそ洗脳系の後書きでした。尚、【先生のアノニマ】は【中】【下】と続いていきます。今後ともご贔屓の程、どうぞよしなに、といったところで、また中巻でお会いしましょう。
まと一石
二〇二五(令和七)年七月