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その2:学園到着~入学式

翌朝、二人は宿舎の前で待ち合わせてからナスタ王立魔法学園へと向かう。

王城ほどではないが、世界一の魔法教育機関を名乗る王立魔法学園の敷地は広く、門も建物も相応に立派なものだ。

「うわぁ~・・・改めてみるとすごい学校だよねぇ」

感嘆しながらカンナが呟く。昨夜は遅刻スレスレに滑り込んで受付を済ませ、そのままそそくさと退散したので周囲を眺める余裕がなかったのだ。

「この門・・・多分魔導具ですね。魔力を込めて念じれば触れずとも自動で開閉するはずです」

「うそぉ!?」

アイルの言葉に驚く。ぱっと見では普通の鉄扉にしか見えないのだが・・・いや、確かに言われてみれば随所に奇妙な模様が描かれているような気がする。上手くカモフラージュされてはいるが。

門をくぐり、周囲を見渡す。正面に見える大きな建物がメインとなる校舎だろう。あそこで座学や室内でもできる類の実習を行うようだ。

その奥には宿舎らしき建物が学年ごとに分かれて4つ建っている。王立魔法学園は4年制の学校だ。

年末の帰省や週に一日ある休日などで一時的に外出する例を除けば、すべての学生はこの敷地内で4年間を過ごすことになる。

人によっては4年間一度たりとも敷地から外に出ない人もいるらしい。お出かけ好きのカンナには絶対に無理な生活だろう。

魔法学園は才能のある者であれば貴族も平民も分け隔てなく採用する。だが大抵宿舎にクレームをつけるのは貴族の生徒なので、宿舎も校舎も貴族仕様だ。

つまり、部屋の一つ一つがちょっとお高めのホテルに近い豪華さを持っている事になる。金月の学生はその中でも最もグレードの高い部屋を優先的にあてがわれるのだ。

「あれ宿舎だよね・・・?高級ホテルとかじゃないよね・・・?」

「はい、間違いなく宿舎ですね」

「今日からあたし達あそこで暮らすの・・・?」

「そのはずです。貴女が必死の努力で勝ち取った権利ですよ」

「ふえぇ・・・絶対落ち着かない奴だぁ・・・」

左側には大図書館。右側には野外修練場があるらしい。おそらくそれらの全てが規格外の規模を持っているはずだ。

カンナは今年の入学生の中で自分が一番田舎者である自信があった。周りの顔ぶれを見ても自分とは纏っている雰囲気が違う。

何人かは自分と同じ平民階級の者もいるだろうが、それにしたってスイトピー村よりはましな場所の出身であるはずだ。

周囲をキョロキョロ見回しながら歩いていると、ふとカンナは周囲の視線が気になった。

行きかう生徒達の多くがこちらをチラチラと見ているし、何やら噂話をしている女生徒もいる。

『ねぇ、あの男の子すごい可愛くない!?』

『ホントだ、あれって噂のルクスリバー家の子だよね』

『あー、私でも聞いたことある!ここの生徒でも1,2を争う家柄の子なんでしょ?』

『どうしよう、私アタックしちゃおっかなぁ』

『やめといた方が良いと思うよ。名門貴族の機嫌を損ねたらどうなるかわからないし』

『そうかなぁ、そんな怖い子には見えないけど・・・』

なるほど、確かにアイルは人目を引く容姿をしているから目立つだろうとカンナは納得する。

アイルに悪い虫が寄らなければ良いのだがと心配になる。反面、これ程良い意味で話題になる人物の隣を歩いている自分を誇らしく思う。

『隣にいる女って、誰?』

『さぁ・・・貴族じゃなさそうだけど』

『でも金月のバッジ付けてるよ?』

『婚約者とか?いやそんな訳ないわよね』

『ね。田舎者丸出しだもん。下僕とかじゃない?』

「うるっさいなぁもう!余計なお世話だよっ!」

しっしっ、とカンナが手を振ると女生徒達は目を逸らしてそそくさと去っていく。

「落ち着いてくださいカンナさん。あれくらいよくある事ですよ。多分これからも言われ続けるので早く慣れた方がお得です」

アイルに諭される。平民なのも田舎者丸出しなのも事実なのだが、ああも堂々と噂されてはたまったものじゃない。

「とんだ有名人ですわね、お二人とも」

「え?」

声のした方を見ると、見覚えのある少女がこちらに近づいて来る。

「どうも、キクリーナ嬢」

「ごきげんよう、やはりあなた達もここの新入生でしたのね」

キクリーナはアイルの方を向くと一礼する。アイルにとってはそうでもないが、カンナにとっては今の所印象最悪の相手だ。

「あ!昨日の暴力貴族女!」

「あらやだ、死にたいのならそう仰ってくだされば良いのに」

「なにおう・・・!」

「ふん。やる気なら受けて立ちますわよ」

「あの・・・二人とも落ち着いて・・・?」

いきなり火花を散らす二人だが、アイルに諭されて矛を収める。

「まったく・・・アイルさんはともかく、あなたまで金月のバッジを持っているなんてね」

「ふふーん、すごいでしょ!どう、うらやましい!?」

「別に。わたくしも持っていますし」

言われてみると、彼女の胸元にも自分と同じ金の三日月が付いていた。

「では僕たちはクラスメイトという事ですね。今日からよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそ。仲良くしてくださると嬉しいですわ」

「うへぇ~・・・」

カンナとしては昨日の件もあってキクリーナにあまり良い印象はないし、そのキクリーナがアイルと仲良くするのは面白くない。

だが、アイルはキクリーナに対し特に悪感情はないようだ。自分よりもキクリーナに詳しいアイルがそうなのであれば、彼女はカンナが思っているより悪い奴ではないのだろうか。

(でもなぁ・・・うーん・・・でもなぁ・・・)

カンナはもやもやとした感情に悩みながらも、三人で入学式が行われるホールへと向かう。

***

ホールの中に入ると、既に大勢の生徒たちが集まっていた。

「おぉー、人いっぱいだねぇ」

「わたくし達を含めた100名の新入生が一同に会しているわけですから当然ですわ。そこに教師陣や外部からのゲストも参列するのであれば猶更」

「みーんな仲間なんだね!あたしテンション上がるなぁ」

「僕は人ごみは少し苦手ですね・・・」

「あら、そうでしたか?まぁ、水属性の気質の方はいかにも繊細そうな方が多いですものね。誰かと違って」

キクリーナはちらりとカンナの方を見る。

「ちょっとー!誰が単純で暑苦しくてガサツな女ですって!?」

「そういう所ですわ。自覚があるだけまだマシですわね」

「うぬぬ・・・」

「あはは・・・僕はそんな事ないと思いますけど・・・」

放っておくとすぐに喧嘩しそうになる女子二人をなんとか宥めるアイル。

身分の貴賤にこだわりが無いように見えるカンナと、貴族である事に高いプライドを持ち権力欲の強いキクリーナは相性が悪いらしい。

カンナが根本的に善人なのはもちろんだが、キクリーナもただ権威主義的な思想の持ち主というだけでおそらく根っからの極悪人ではないはずだ。

確かに平民を見下している節はあるがそれだけで、無秩序に彼らを虐げるようなタイプではない。

先日の騒ぎの時も相手に暴力を振るったのはよろしくないが、あの場において彼女はれっきとした被害者であり怒った理由そのものは正当である。

キクリーナが本当に極悪貴族なのであれば問答無用で少女の首を刎ね飛ばしてその存在ごと闇に葬るくらいの事はしていたはずだ。

つまりカンナは現時点でキクリーナの負の一面しか見えていないから彼女の事を嫌っているに過ぎない。

第一印象の悪さを覆すのは苦労するだろうが、共に学園生活を過ごすうえで彼女の良い一面を知る事ができればあるいは・・・。

「いつまでそうやって突っ立っているつもりですの?」

キクリーナの声で思考が中断される。声の方を見ると二人とも既に着席していた。

「すごいよアイル君!あたし達の椅子だけひじ掛けが付いててクッションがふかふかなの!」

慣れない特別扱いを受けたからか、カンナが興奮した様子で足をパタパタさせている。短いスカートから覗く生足が眩しくて目を逸らす。

わざわざ専用席が用意されている辺り金月の生徒というのはあらゆる面で特別扱いをされるらしい。

才能ある魔法使いというのはそれだけ国家にとって貴重な財産であり、絶対に逃がしたくない存在なのだろう。特に他国には。

「ちょっと、早くこちらに来て座ってくださいまし。貴方が間に入ってくれないといつまたこの娘に喧嘩を吹っかけられるか気が気じゃありませんわ」

キクリーナがトントンと自分の隣の席を指さして促す。わざわざカンナから一つ離れた席に座ったのか・・・。

「なにそれ、こっちの台詞なんですけど~!」

「お願いだから仲良くしてください・・・」

「「無理ですわね」」

「息ピッタリじゃないですか・・・」

小さく息をついて二人の間の席に座ると、キクリーナが身を寄せて耳打ちしてくる。

「・・・あのようなふしだらな娘が好きなんですの?」

「え?」

「見逃しませんでしたわよ。先程あの娘が足をばたつかせた時の貴方の視線。あの娘、あんな短いスカートで殿方を誘惑しているのではないですか?」

「あれは・・・彼女は火属性魔法を使う関係で、体内に蓄積する熱を逃がすためだと思います」

「ふぅん。で、貴方はああいうのが好きなんですの?」

「いえ、その・・・よくわかりません。ただ少し、目のやり場に困ってしまって・・・」

「なるほど。初心な殿方には少々刺激が強すぎる、と」

「はい・・・」

「それで、あの娘はどこで拾ってきたので?」

「拾うって・・・父の紹介で昨日会ったばかりですよ。気に入った女性を見つけると僕に紹介したがる、いつもの発作です」

「あぁ、なるほど。わたくしも一度紹介されかけましたわね」

「その節はご迷惑をおかけしました・・・」

「ま、別に構いませんわよ。親が決めた強引な縁談など貴族なら誰もが経験する事でしょうし」

そう言ってため息をつくキクリーナ。彼女にも何か思う所があるのだろうか。

「それより、あのカンナとか言う娘の事はどう思ってますの? 見た目は悪くありませんが、中身はまるでダメですわ」

「そんなに彼女の事を悪く言わないでください。確かに僕たちとは異なる価値観を持った人ですが、悪い人ではありません」

「ふぅん。貴方がそう言うのならそうなんでしょうけど。それで?"どう思っているか"の答えは?」

「・・・・・・」

アイルは考えこむ。自分がカンナの事をどう思っているかだって?

昨日であったばかりの少女の事をアイルはまだ良く知らない。おそらく彼女には自分の知らない一面がまだたくさんあるのだろう。

だが、昨日一日一緒にいただけで知ったわずかな情報だけでも彼女が信頼に値する人物であるのはわかっている。

気になっているのは、彼女といると時折感じるもやもやとした、あるいは胸が温かくなるような不思議な気持ち。

いくら考えこんでもこの感情の正体はわからない。ただ一つ言えるのは、自分は彼女を嫌いではないという事だ。

「・・・実の所、まだよくわからないんです。付き合いは貴女よりも短いですし、わかっているのは彼女が表裏のない人で、信頼できる人だと言う事だけ」

「・・・なるほどねぇ。ま、今の所はそれでよしとしましょう」

納得したような様子でキクリーナは頷く。

「良かったですわ。貴方が田舎娘を捕まえて無知なのを良い事に卑猥な格好をさせて傍に置くようなド変態ではなくて」

「!?」

「つまるところ、わたくしが聞きたかったのはそれだけですわ。貴方の話し方のせいで随分な回り道になってしまいましたが」

「はは・・・すみません」

彼女に詰られ、アイルは苦笑いで誤魔化す。

「まぁ?貴方程の殿方が?悪くないと仰るのであれば?わたくしも少しくらいはあの娘に歩み寄ってあげても構いませんけれど?」

「本当ですか!?そうしてもらえると嬉しいです。きっとうまく行きますよ!」

「ふ、ふん。何ですかそんなに喜んで。いいこと?本当に少しだけですわよ。せいぜいあの娘がわたくしに無礼な言動をしないよう貴方が見張っておいてくださいまし」

キクリーナは不機嫌そうな顔をしながらぷいっとそっぽを向く。相変わらず素直じゃないが、これで両者の関係は改善に向かうだろう。

ほっと胸を撫でおろすと、反対側から視線を感じる。

そちらに目を向けてみると、カンナがじっとりと据わった目でこちらを見ていた。

「・・・さっきから二人でコソコソ何を話してたの?」

見るからに不機嫌そうな様子のカンナにアイルは原因がわからず困惑する。

「その・・・キクリーナ嬢にカンナさんとの関係やいきさつを聞かたので、答えていたんです」

「へーーーーー。ほーーーーー。どんな風に?」

(怖い・・・)

彼女の怒りの原因はわからないままだが、アイルは先ほどのキクリーナとのやり取りを掻い摘んで話す。

「ふーーーん。そ、そうなんだ・・・」

カンナは不機嫌な表情はそのままだが、照れくさそうに顔を少し赤く染めて俯く。

アイルには知る由もないが、カンナはアイルとキクリーナが自分をよそにして親しげに密談しているのが気に食わなくて嫉妬していたのである。

だがそれが自分の事について話していたと知り、しかもアイルが自分の事をやたらと褒めながらキクリーナとの仲を取り持とうとしていたのだから、怒るに怒れないのだ。

結果、微妙な表情で黙り込んだまま俯くことしかできなかったのである。アイルには知る由もないが。

「あの、カンナさん・・・?」

様子を伺うように彼女の名を呼ぶ。すると彼女はびくりと肩を震わせ、ゆっくりとこちらを振り向く。

「あ、ごめんね?別に怒ってないんだよ。ただちょっとびっくりしちゃってさ」

「えっと、それは良かったのですが、その、どうしてそんなに不機嫌なんでしょうか?」

「だって、アイル君があたしをほったらかしてキクリーナさんと仲良さそうに喋ってたから・・・」

あぁ、なるほど。彼女は自分が仲間外れにされたような疎外感を覚えたから不機嫌だったのか。

アイルはあっているようで肝心なところがあっていないような結論を出して納得する。

確かに自分は彼女をそっちのけにしてキクリーナと話してしまっていたが、あれはあくまでも彼女への印象を悪くしないようにするためだ。

それに、彼女が自分とキクリーナの会話に割り込んでこなかったのは、きっと自分に気を使ってくれたのだろう。

「カンナさんが話しかけて来てくれたら、僕はちゃんと貴女とお話しますよ。キクリーナ嬢も同じです。本当は三人で仲良くお話できるのが一番良いんですから」

「あーーーそうじゃない、そうじゃないんだけど・・・もうそれでいいや!」

「?」

何が言いたかったのだろうか? アイルにはよくわからなかったが、どうやらカンナは満足したらしい。

二人の仲を取り持つために一仕事を終えた満足感に浸っていると、前方の壇上に学長らしき老齢の男が登ってくる。どうやら入学式が始まるようだ。

「では、これより王立魔術学院の入学式の開会を宣言する。一同、起立せよ。礼」

生徒たちが礼をした後着席する。続けて老人が生徒達へ向けた挨拶や学園の理念などを話し始める。

「あのお方が生ける伝説の大魔導士ユリエル様・・・」

「なにそれ、すごい人なの?」

キクリーナが呟くとカンナが素朴な疑問をぶつける。

「学園創立者の名前くらいは調べてきたらどうなんですの?まったく、これだから物を知らない庶民は・・・」

やれやれと言った様子でため息をつくキクリーナに、むっとしたカンナが食って掛かろうとするのをアイルが手で制す。

「二人ともお静かに。式典の最中です」

「うっ・・・」

双方黙り込む。本人に自覚はないが、こういう時のアイルには妙な迫力がある。

学長の挨拶が終わると、今度は新入生代表による宣誓が行われる。

「続いて新入生代表による挨拶と宣誓。新入生代表、ブレッザ・スタジョナーレ」

「はい」

名を呼ばれ、金月の生徒が座る場所。その一番端の席からブレッザと呼ばれた若い男が立ち上がる。

キクリーナよりも淡い色彩のブロンドヘアには緩いウェーブがかかっており、センター分けにして頭の両側から垂らしている。

瞳の色は鮮やかな碧色。平均よりやや高めの身長で、その佇まいはあらゆる貴族のそれを凌駕する優雅さを持っている。

アイルはその男の事を良く知っている。お互い名族の嫡男として貴族の会合でしょっちゅう顔を合わせているからだ。

ブレッザ・スタジョナーレ。アイルより3つ上の18歳で現国王の又甥、つまり国王から見て甥の息子だ。

由緒正しい王族の血を引くこの男はアイルをも上回る圧倒的な魔術の才を持ち、その腕前は既に並のプロを凌駕するとも言われている。

風属性の魔法を得意とするが水と火の魔法も高いレベルで使いこなせる為、魔術師としては万能に近い。

おまけに本人は剣の方にも興味があり、そちらの腕は流石にプロとまでは言えないが十分実用的なレベルで、下級の魔物程度なら軽く捌ける。

つまるところ、この男には弱点がない。アイルが馬車の中でカンナに語った究極の理想である『一人で何でもできる人』を体現するかのような男だ。

欠点らしい欠点と言えばかなりの自信家で大言壮語が鼻に付く事くらいだが、実際それだけの実力があるので誰も文句が言えないのだ。

当然それだけの強さを最初から持っていたわけではない。常人の5倍とも10倍とも言われる過酷な修行を英才教育としてわずか5歳の頃からこなしてきた努力家としての側面も持っている。

おまけに女性に対しても紳士であり、彼は16歳の時に婚約したある女性を一途に愛し続けているのだとか。どこまでも完璧な男である。

アイルと大きく歳は変わらないが、アイルにとっては憧れに近い感情を抱く相手だ。

なにせ既にプロ級の魔術の腕を持っている癖にわざわざ魔法学園に入学して更に自分を磨こうと言うのだから。

「うわぁ・・・すっごいカッコいい人だねぇ。アイル君にも負けないくらい」

「格好良いのは見た目だけではありません。実力は間違いなく新入生でナンバーワン。在校生を含めても10本の指に入ると思います。僕は彼が誰かに負けた所を見た事がない」

「わたくしもありませんわね。彼ほど才能に恵まれた方はそうはいないでしょう。少々性格に難がありますが、それが気にならないくらいには他の全てが優れていますわね。憎らしい程に」

「はぇ~・・・そんなすごい人と一緒に勉強して、あたし自信無くさないかなぁ」

「無くすでしょうね。でもあれはわたくし達とは別の人種だと思って割り切るしかありませんわ。そもそもここに居るのが場違いな男なのだと」

「同じ金月なのにねぇ・・・」

ブレッザは自信に満ちた表情で堂々と宣誓文を読み上げている。凛とした様子に会場中が息を呑んで注目している。この男は演説の才能まで持ち合わせているのだろうか。

宣誓が終わると、ブレッザは一分の隙も無い優雅な歩きで席へと戻ってくる。途中で目が合って彼が微笑んだ気がしたので軽く会釈をする。

その後は来賓の祝辞や在校生との顔合わせなどを順番にこなしていき、入学式は恙なく終了した。

***

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