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 玉様の言葉に紅美ちゃんだけじゃなく、オレも隣の小町ちゃんも目を丸くした。


 本当に時間は戻っていたのか? だって?

 戻っていたから紅美ちゃんは何度もやり直して、須藤と順風満帆なんじゃないのか?

 それに小町ちゃんだってお試しで時間を戻されて、部屋に居たって言っていなかったか?

 オレは戻してないから何とも言えんが、寿命を一年か二年支払って戻ってなかったって詐欺じゃねぇか!


「お前はその老婆を信用しているようだが、果たして信用に値するのか? 例えばお前は深い眠りにつき、時間を戻すことの出来る夢の中にいるとしたならばどうだ? 例えば一番最初の始まりの時に暗示を掛けられ、ただただ時間を戻していると錯覚しているのだとしたならばどうだ? お前だけ頭の中で時間を戻り、やり直しをしているだけとは考えなんだか?」


 玉様が言わんとしていることは理解できる。

 でもそれだとどうしても矛盾が生じるんだぜ。

 だってオレたちは紅美ちゃんを軸として、やり直しをして……ない!

 あくまでも紅美ちゃんには時間が戻った実感はあるんだろうけど、オレには無いぞ。

 変な世界に行ったりしたけど、時間が戻ってたことなんかない!

 じゃあ小町ちゃんはどうなんだ?

 戻ってたよな?

 そう思って小町ちゃんを見れば、彼女は眉間に皺を寄せて玉様の言葉を反芻しつつ記憶を辿っていた。


「小町は結局、戻された後、同じことしかしてないから戻っても意味なかった……。お婆さんと会ったはずの夜の帰り道は普通に歩いて帰って寝て、段々具合が悪くなっただけだった……」


 ということは……どういうことなの?

 誰か説明してよ! と無謀にも須田を見てみる。

 さっきまで何も知らなかった須田に説明を求めても期待は出来ないが、オレとは頭の出来が違うからな。


「記憶の改竄かいざん、かな……? 小町は戻ったと記憶を改竄されて、眠ってそこでリセットされたってことか……?」


「眠ってリセットってどういうことだよ、須田」


「だから戻って寝て、そこで小町の現実は確定されたってことだよ」


「いやいや全然意味が解んねぇよ!」


「時間が戻ったっていう『嘘の記憶』が本当の記憶に差し込まれたんだ」


「待て待て待て待て。じゃあ小町ちゃんの『本当の記憶』ってなんだ?」


「それはお婆さんに出会うとこまで。そこから時間が戻ったという『嘘の記憶』が始まって、翌朝目覚めてからが本当の記憶だ」


「じゃあよ、その嘘の記憶の時間の本当の記憶はどうなってんだよ?」


「小町的には上書きされてるから自覚できないだろうけど、たぶん俺たちの現実は『何も変わってない』」


「はぁっ? おいおいおいおい。全然話が理解できねぇ!」


 え、こんな説明で誰が納得出来んの?

 だって紅美ちゃんは何回もやり直しをして自分に都合の良いように進めているんだろ?

 だから今、須藤と一緒にいられるんだろ?

 混乱を極めるオレを振り返った玉様が五月蝿いと睨むけど、だって訳わからんのだから仕方ないだろ?


「須田の推測は中らずと雖も遠からずってとこだな」


 鉄の棒を数本組み立てていた御門森が座り込むオレたちを見て、頷く。


「小町の場合はそれだけで済んだんだ。本来の記憶に『時間を戻した』記憶だけ入れた。で、問題はあっちだ」


 鉄の棒で紅美ちゃんとお婆さんを示した御門森はうんざりした様に首を回す。


「あっちは寿命を使って壮大な仕掛けがされてんだよ。まずは失敗した記憶を入れるんだ。そして寿命を使わせてそれを消す、なかったことにする。本人は時間を戻した気になって最善の選択をしたと思ってるけど、周囲の人間の現実は変わってないんだ」


「ちょっと待ってよ、でも小町はあの魔女が時間戻した瞬間を見たんだよ?」


「それは時間が戻ったように見えただけで、実際はあの婆さんの世界で道路を戻って姿を現しただけだ」


「えええっ……」


 御門森の説明に小町ちゃんは呆気に取られていた。

 オレも右に同じ。



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