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 オレはリビングで一人、ソファーに座って考える。

 知らなければ何も考えずにいられたけど、知ってしまった以上考えずにはいられない。


 須藤は紅美ちゃんにロックオンされている。

 三人の会話を聞かなければロックオンされてるとは思わなかった。

 だって女友達が多い須藤の中でも紅美ちゃんは特別で彼女のポジションだとオレは思っていたから、ロックオンは既に終わっていると思っていたからだ。

 でも須藤的には身体の関係もなく、紅美ちゃんはただの女友達の認識で、当の本人である紅美ちゃんだって自分は女友達っていう扱いには気付いているんだろう。

 だから須藤にくっついて落とそうとしているんだ。

 その為に手段を選ばず蓑虫時間逆行サービスを利用しているものの、現在はまだ須藤は彼女のものにはなっていない。

 少なくとも紅美ちゃんが須藤と出会ったのは大学からで、小町ちゃんが街中で見かけた彼女が呟いていたのも同じくその頃。

 もう二年は経過しているのに時間逆行サービスを利用しても須藤を落とせていないのは、本当に脈がないからなんだろうな。

 須藤も玉様や御門森と同じく、故郷に本命の彼女がいるのかもしれない。

 二年もめげない片思いには頭が下がるけど、これってもう執念だよな。


 そしてあの、背中にべっとりと張り付いていたお姉さん。

 お姉さんは確か二年前に亡くなっている。


 二年前……か。

 全ては二年前、紅美ちゃんがお婆さんに会ってから始まっているんじゃないのか?

 オレごときが考えて推理しても華麗な解決は出来ない。

 でもこのまま放って置いてもいいのか?

 紅美ちゃんに直接問い質しても、時間を戻されてなかったことにされるのがオチだ。

 どうすれば須藤を助けられるんだ?

 そんなことを考えていると不意に無意識に握り締めていたスマホが震えた。

 着信の表示を見れば小町ちゃんで、オレは慌てて耳に当てる。


「もしもし?」


『あっ? 鈴木ー? 良かったー! やっと繋がった!』


「え?」


『ずっとあんた圏外だったでしょ。心配で涼に連絡しておいたんだけど』


「あ、うん。ごめん。ちょっと……。須藤とは家の前で会えたよ」


『……なんかあったの?』


「え?」


『圏外っておかしいじゃん』


「充電切れちゃってたんだよ」


『……ふーん』


 電話の向こうの小町ちゃんは黙ってしまって、オレは早々に話を切り上げようとしたけど、一人で家にいるのが怖くて切電できない。


 小町ちゃんに話してみようか?

 でもこれ以上彼女を巻き込んでしまうのは危険か。

 紅美ちゃんは須藤には話さないでって言ってたし……あれ?

 須藤にはってことは小町ちゃんに話しても良いのか!?

 言葉の揚げ足を取るようで申し訳ないが、須藤以外には話してもOKなんじゃね?


 そしてオレの頭はようやく回転を始める。

 あのお婆さんは小町ちゃんやオレに時間を逆行させるときを見られて、しかも戻すことが出来なかったって言ってた。

 ということは、だ。

 オレと小町ちゃんが揃えばお婆さんに対抗できる。かもしれない。

 どうしてオレと小町ちゃんなのかは解らんが、案外二人の守護霊様は有能なのかもしれない。


「小町ちゃんさ。明日、何してる?」


『明日ー? あんたと違って色々予定あるわよ』


「会えない?」


『何のために?』


「須藤救出のため」


『……わかった。明日夕方家に行く。どうせ涼はバイトでまたいなくなるでしょ』


「うん」


『小町が行くまで絶対に家から出ちゃダメだからね。わかった?』


「うん」


 小町ちゃんはオレの返事を聞いてから、おやすみと言って電話を切った。

 オレはリビングのシンプルな銀色の壁時計を見上げて意味もなく溜息だけが出た。



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