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一泊後。夕方。上守家、前。
「なんじゃあ、ありゃあ……」見送りに出た三郎、正武家屋敷を遠くに見る。
「え、なんでお屋敷のお山があんなにピカピカ点滅してんの!? 玉彦!?」
「……知らぬ」
「お屋敷、何かに襲撃されてるんじゃないの!? お祖父ちゃん、帰るね! ほら玉彦、走るわよ!」
「うむ。三郎、世話になった」
「あ、いいえ……。お気を付けて」
「ほら玉彦、早く!」
ぴゅーと二人走る。
石段前。
「灯篭にイルミネーション?」
「クリスマスだからな」
「はっ?」
「帰るぞ」石段登る。
「うわぁー、表門が輝いてるわー……」
「クリスマスだからな」
「庭も輝いてるわー……」
「クリスマスだからな」
「全部の木の天辺に星の飾りがあるけど、誰がやったのよ」
「さぁ」
「もしかして豹馬くんとか須藤くんとかにさせてないわよね? 二人だってクリスマスなんだよ?」
「知らぬ」
「……あとで亜由美ちゃんに謝っておかなきゃだわ……」
「謝る必要などどこにある」
「お役目じゃあないわよね……」
「役目ではないが……」
「澄彦さん単独の仕業、でもないわよね? 二人で仕出かしたことよね?」
「……」
「急に泊まるとか言い出した時からおかしいなとは思ってたのよ。まさかこんなことする為だとは思わなかった」
「比和子が喜ぶかと思い……」
「あのね、普通で良いのよ、普通で。ケーキがあって、部屋の中にクリスマスツリーがあって、美味しい食べ物があるだけで良かったの。なんだってこんなにお屋敷をキラキラさせなきゃいけないのよ」
「自分もこれは予想外であった」
「ということは澄彦さん……。もしかしてお屋敷の中も……」
「……」
「行くわよ! 帰るわよ!」
「……うむ」
続く。