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 次の日の朝。

 みんな親が迎えに来て、家に帰る。

 うちもお母さんが迎えに来てくれたけど、すごく心配して怖いもの見なかった? と言われて首を振った。

 車に乗ろうとして周りを見ていたら、比和子ちゃんのお友達三人は御門森くんのお兄さん、南天さまに送ってもらえるようでみんなの注目の的になってた。

 やっぱり惚稀人様のお知り合いの子は一味も二味も違うとPTAの信号機化粧の会長さんが言ってたのが聞こえてくる。

 それって秘密なんじゃないのとうちが慌てると、みんな知ってたようで何を今さらという雰囲気だった。


 家に帰ると子供は正武家様のお許しが出るまで外で遊んじゃいけないことになってて、うちはがっくり。

 あと少しで夏休みが終わって、学校が始まる。

 比和子ちゃんはその前に都会に帰ってしまうんよ。

 何としても仲直りしたかったうちは、お隣の三郎爺の家を望遠鏡で眺めてみたけど、生け垣が邪魔でなんも見えない。


「比和子ちゃん、どこにおるんかねー?」


 夕ご飯の時にお母さんに聞いたら。


「亜由美。これはトップシークレットよ。比和子ちゃんは正武家様のお屋敷にいるそうよ」


 トップシークレットも何もそのまんまだった。


 それから何日かして、大人たちが慌ただしくなって、明日から五村の外に出られない、とお父さんが仕事から帰って来て教えてくれた。

 明日は平日だけど、お父さんはお休みになったんだって。

 せっかくお父さんもお母さんも家にいるけどお休みなのにどこにも行けんくて、何度目かのがっかりをしていたら、お母さんが明日は家の大掃除をするって言い出して、ますますがっかりした。

 どうして外に出ちゃいけんのか、と考えたけど、お父さんが朝から玄関に正武家様の御札を飾ったのでうちは悟った。


 白猿でなんかあるんだと。

 体育館の噂では南天様がスパッと白猿を退治したって聞いたけど、もしかしたら生き返ってまた暴れてるのかもしれん。

 うちは部屋に籠って那奈ちんとかの友達とのネットワークを駆使して情報を集めててその度に茶の間のお父さんとお母さんに報告を入れたけど、主婦のネットワークの方が一枚上手であんまり役には立たなかった。


 そうして翌日の夕方。


 お父さんが玄関から正武家様の御札を降ろして、そのまま会館へ行ってしまった。

 お母さんは感極まった様子でうちを抱きしめて、もう大丈夫、と何回も何回も言っていた。

 それからしばらくしてお父さんが帰って来て、白猿が無事に澄彦様と玉さまの手で討伐されたことと、その時に須藤くんも活躍したこととか熱く教えてくれた。

 けれど玉さまが怪我をしたと聞かされたうちは居ても立っても居られずお見舞いに行こうと思って止めた。

 簡単に正武家様のお屋敷にうちは行けない。

 キャンプ会とかで前よりは仲良くなったつもりでいたけど、うちはたぶん玉さまの中では人間その一くらいの感じだろう。

 その他大勢よりは昇格していると思いたい。


 そう言えば比和子ちゃんは大丈夫だったんだろうか。

 お父さんの話を聞いていても比和子ちゃんのことは何も言ってない。

 きっと無事だから何も言わないんだとうちは思って、また部屋に籠って那奈ちんたちと相談して、玉さまの怪我が早く治る様にせっせっと千羽鶴を折りまくっていた。


 黙々と千羽鶴を折って、うちは今年の夏休みは色んなことがあったなぁと思い出す。

 そのどれもが比和子ちゃん関連で、じんわりと涙が浮かぶ。


 結局、仲直りできんかった。

 比和子ちゃんは夏休みが終わったら帰るはずで、もしかしたらもう一段落着いたから帰ってしまったかもしれんのよね。

 来年の夏休み、ううん、今年の冬休みとか秋の連休とかに村に遊びに来てくれるんかな。

 そうしたらうちはいの一番に三郎爺の家に行って、比和子ちゃんに謝るんだ。


 玉さまの快気と一緒に比和子ちゃんと会えることをお願いして、うちは一生懸命に千羽鶴を仕上げた。

 と言っても、折り紙は八十一枚しかなかった。



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