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 御門森くんをお迎えして、お母さんが運転する車はのろのろと安全運転で走る。

 途中で何回も他の車に抜かれちゃって、玉さまが怒り出すんじゃないかと心配したけど、玉さまはゆっくり話せて良い、気を遣わせてすまないとお母さんに言った。

 絶対に違うと思う。

 玉さまと御門森くんを乗っけて事故なんか起こしたら、とんでもない騒ぎになるからだ。


「まぁとりあえず、上守はキャンプ会には来るぞ」


 御門森くんがそう言うと、玉さまは振り被って隣の御門森くんを見た。


「本当か!?」


「今朝、三郎爺から孫たちも参加させてくれって村長に連絡が入ったって」


「そうか、そうか」


 玉さまはそわそわと窓の外を見て、身体を揺らす。

 なんか、ちょっと可愛い。


「でも多分俺たちのとこじゃなくて須藤たちんとこに行くと思う」


「なぜだ……!?」


「なんでって、喧嘩中の玉様と顔を合わせたくないからだろ」


「それじゃあうちとも顔を合わせたくないって比和子ちゃんは思ってるかもよね……」


 どんよりと玉様と二人揃って沈めば、御門森くんは半目になって呆れる。


「仲直りするために頑張るんだろ? 頑張れよ。面倒臭い奴らだな!」


「でもどうやって仲直りすればいいんか分からんのよね」


「ごめんって言えば良いだけの話だろうが」


「話はそう簡単ではないから困っているのではないか!」


「うんうん!」


「まぁ、あれじゃねーの? 上守捕まえて、二人で謝って、向こうの出方次第だろ」


「だからそれが難しいんよ!」


「難しいわけあるか!」


 と、御門森くんに一喝された玉さまとうちは、無事にキャンプ会場に到着し、ご飯の準備とか遊んだりしたりして比和子ちゃんを何とか捕まえようとしたけど、中々上手く出来なくて、二人揃って夜の肝試しのくじ引きをして肩を落とした。


 肝試しのくじ引きの番号は四十四番だった……。

 とことんついてない不吉な数字に泣きたくなる。

 玉さまは顔を顰めてさっさと紙を丸める。


「あっ。二人とも何番だったー?」


 本星の比和子ちゃんじゃなくて、とりあえず那奈ちんとは仲直りできたのは良かったけど、那奈ちんはここぞとばかりに玉さまにくっ付いて歩いていて、それを振り払おうとした玉さまにくっ付かれていたうちは比和子ちゃんと接触すら出来ていなかった。


「教えない」


 玉さまは素っ気なく言ってから近くにいた御門森くんに駆け寄る。


「亜由美、何番? 御門森は五十四番って言ってたよ」


「……四十四番」


「うわぁ。十番違いか。誰が五十四番か探して、代わってくれるか聞いてあげようか?」


「……ううん。いい」


 うちは一人、みんなの輪から外れて木に寄りかかる。

 仲直りがミッションだったキャンプ会は、なんの成果もなく一日目が終わってしまう。

 こんなはずじゃ、なかったのにな。

 ささっと比和子ちゃんと仲直りして、比和子ちゃんのお友達とかと仲良くなって、わいわい玉さまと御門森くんとみんなで楽しむはずだったのに。


 うんざりしてしゃがみ込むと、比和子ちゃんと綺麗な女の子が抱き合って楽しそうに話してた。

 あぁいうの、都会ではハグって言うんよね。

 ぼんやりと眺めていたら、女の子から離れた比和子ちゃんが走り出す。

 ハッとうちも追い掛けようと立ち上がったけど、足が怖くて動かなかった。

 一人じゃ、いけない。怖い。

 もじもじしていると、遠くから玉さまが忍び足でうちに近寄ってきて、また明日頑張ろうと声を掛けてくれた。


「あっ、でも比和子ちゃんが今……」


「豹馬が来た! 俺は逃げる」


 忍者の様に木を登り、隣の枝に飛び移った玉さまと入れ替わりに御門森くんがうちの前に走ってくる。


「弓場。お前、何番!?」


「え、四十四番……」


「よしっ! ビンゴ!」


「へっ?」


「この番号と代わってくれ」


 そう言って渡されたのは、五十四番の紙だった。

 ご、五十四番って……!


 息を切らした御門森くんは辺りを見渡して誰かを探している。


「玉様、見かけなかったか?」


「あ、さっきまでここに居たけど……逃げた?」


「くっそー。ふざけんなよ! 上守が玉様を探してんだよ。肝試しに玉様が参加すれば話は丸く収まるのに!」


「どういうこと?」


「玉様の順番、四十四番だったんだよ。で、オレが五十四番。上守と弓場を入れ替えれば玉様は上守と組むことになるんだ。捕まえて参加させるぞ!」


「それって二人に言ったの?」


「言って素直にあの二人が頷くと思うか!? ここは運命だと思わせといた方が良いんだ。裏で仕組んだってあの二人は気付かねーよ」


 意外と御門森くんは運命論を馬鹿にしないんだな、と感心していると、うちに比和子ちゃんを捕まえて肝試しに参加する様に言って来いと御門森くんは言う。

 さっき比和子ちゃんと話をした時に言わなかったのかと聞けば、絶好の仲直りの機会だから頑張れとうちの背中を押してくれた。


「わかった! ありがと!」


 うちは四十四番と五十四番の紙を握り締めて、比和子ちゃんの後を追った。んだけど……。

 比和子ちゃんは見つからず、うちはおめおめとキャンプファイヤーに戻った。

 とことんうちは運の無い女子なんよね……。




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