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短編とかその他

私はなぜ、笑えないほど死亡フラグが乱立している乙女ゲーム世界に転生してしまったのだろう

作者: リィズ・ブランディシュカ



『私』





!乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった!





 その事実を小一時間かけて把握した私は、前世でプレイしたゲーム情報を一冊のノートにまとめて唖然とした。


 そしたら愕然とした。


 めっちゃびびった。


 頭抱えた。


 なんなのこの世界。





!死亡フラグ乱立しすぎぃ!





 前世でやっていた時も思ったけど、中身が狂ってる。


 このゲームやたら、死亡フラグが乱立しているから、面倒くさいゲームとして有名だったのよね。


 掲示板で色々ディスられてたわ。


 ストーリーそのものは良かったから、一応私はやってたけど。


 けど、ほんと死亡フラグが多いのよ。


 まさか悪役令嬢だけでも、百個の死亡フラグが存在しているとはね。


 おもいだせなかった部分もあるので、実際の数はそれ以上に上るからなおさら怖い。


 もはや狂気である。


 制作陣は、ゲームを愛しているのではなく、ゲームに呪いでもかけているのではないだろうか。


 私はまとめあげていったノートを一つずつ、記憶するべく読み上げていった。


 命の危機に関する事だから、忘れないようにしっかり記憶しておかないと。


 せっかく拾った命を、また失いたくないし。


 それにしても、前世の私、いったいなんで死んだのかしら。


 うーん、思い出せない。


 まあ、後でいいか。


 後々思い出すでしょ。


 それより、原作の時期になるまでに、これを全部覚えておかなくては!







『とある男子生徒』


 うちのクラスには変な女がいる。


 自分の事を時々悪役令嬢だとかいう、変わった女だ。


 頭の出来がちょっと俺達とは違うんだろう。


 時々、何もない所を見つめたり。


 わけのわからない事をしていたりする。


 学校の周囲に生えている雑草をとうとつに駆除してまわったり、なぜか校舎の裏手にあるスケート場の手伝いをしていたりする。


 人のためになっている事は多いのだが、よく分からない事もしているので、彼女はやっぱりよく分からない。


 なぜかとうとつに、窓際の席に席替えしていたりしているし、先生の話を聞かずに授業中ずっと天井を眺めていた事もある。


 何でそんな事をしているのだろう。


 誰かの為にならない事もしているし。


 はっきりいって意味不明だ。


 一体、彼女は何を考えているんだろうな。






『私』


 とうとう原作ストーリーの時期にはいったわ。


 だから、乙女ゲームのシナリオの舞台である学校に通っているんだけど。


 やっぱりよく死亡フラグに悩まされるのよな。


 今回だって、大変だったわよ。


 危なかったぁ。


 まさか、学校の天井に毒蛇がいるとは思わなかったわ。


 こんな事にならないために、周囲の雑草は刈り取ったはずなのに、どこからやってきたのかしら。


 この世界のヘビって、透明化するから、よく見ないと分からないのよね。


 原作の知識があった私じゃなかったら、誰も気づけなかったに違いないわ。


 はあ、でも驚いたばかりじゃいられない。


 気持ちを切り替えないと。


 授業が終わったらスケート場にいって、亀裂がはいっていないか確かめないといけないわ。


 原作ではその亀裂につまづいたヒロインが、うっかりこけて頭をうって、そのままお亡くなりになってしまうのよ。


 乙女ゲームなんだから、そんなギャグみたいな事故で死者を出さないでよ。


 怪我をしたとしても、恋愛エピソードにつなげるのが普通でしょ。


 いったい本当に制作陣は何を考えていたのかしら。


 そうそう、校庭の様子が見えるように席替えしていたけど、今日はあやしい人間は入ってこなかったわね。


 ゲームをやっていた時はランダムイベントで、たまに天空の使者とかいう不審者がやってくるから大変なの。


 苦しみに満ちたこの世界から人間達を開放するため、うんぬんとかいう行動目的があるみたいだけど、そこらへんはどうでもいいわ。


 放っておくと、お手製の爆弾を校舎に向かって投げつけてくるから、早めに牢屋にぶち込んでおかないといけない。


 まったく、そのせいでちょっと具合が悪くても学校を休めないじゃない。


 はぁー、なんでこんな危なっかしい世界に転生しちゃったのかしら。


 それらの死亡フラグを叩き終わった後もまだ、食中毒事件を防いだり、家庭科室で刃物すっぽぬけ事件を防いだり、理科室での調合間違え事件もなんとかしなくちゃいけないし。


 それら全部をほうっておくと、最終的に悪役令嬢を殺しに来るからタチ悪いのよ。


 どんだけ犠牲者を出したいのよ、制作陣!


 なぜかヒロインや攻略対象達が、危険を回避したり防いだりすると、そのとばっちりが悪役にむかってくるのよね。


 誰かが何かの死亡フラグに対処しても、その影響が他の所に変わっちゃうだけ。


 根本的に、事故や事件の原因をとりのぞかないといけないのが大変で大変で。


 はぁ、今度調理場をチェックしたり、刃物をすりかえておいたり、誤字まみれの調合薬のテキストを新品にかえておかなくちゃ。


 もしも、あの乙女ゲームを作った人たちに会えるなら、ぜったいになんでこんな乙女ゲームつくったのか問いただしてやるんだから。







『前世の私』


 私はとある乙女ゲームをやっている人間の一人だ。


 けれど、その乙女ゲームをは、あまりにも死亡フラグが多すぎた。

 そのために、前々からなんでそんなに死亡フラグが多いのか気になっていた。


 なので、そのゲームのイベントに参加した時に思ったのだ。


 そこには開発スタッフたちも参加するので、直接聞いてみればいいのではと。


 で、不幸な事に質問できる機会が巡ってきたため、聞いてしまったのだ。


「あの、なんでこんなゲーム作ったんですか」


 けれど、私は失念していた。


 どこかの掲示板で、過労死寸前の社員が病んだ心で作ったゲームだという話が書き込まれていたことを。


 私が質問した相手は青白い顔をしたまま、ふふふと笑いながら、遠くへ向けていた視線を戻した。


「――それは、たとえゲームの中でも、人が幸せになるのが嫌だからだぁぁぁぁ!」


 その人物は懐から凶器を取り出して、狂気の表情をひっさげたまま、質問者である私にむかって真っすぐむかってきた。


 すぐに逃げればよかったのに、私は足をくじいてその場に固まってしまっていたのだ。


「俺がこんな灰色の生活を送っているのに、皆きらきらしやがって! 許せねぇ! ヒロインだって野郎共だって、不幸な悪役だって許しゃしねぇよぉぉぉ!」

「きゃー! 誰か警察を! 警察を呼んで! 女の子が襲われてるわ!」


 それで、私は生涯の幕を閉じることになってしまった。







『私』


 なんだか嫌な事を思い出しかけたような気がするわね。


 でも、すぐに忘れてしまったから大した事がないと思うわ。


 はぁ、まだまだ取り除かなくちゃいけない死亡フラグはたくさん。


 学校だけじゃなくて、町でのイベントとか観光地でのイベントとかもあるから、大変だわ。


 ブラック企業に働く社畜ばりの労働だから、過労死してしまいそうよ。




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