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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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拡散弾

 拡散弾だって!? 出来てたのか? 聞いてないぞ?


「もう完成してたのか?失敗はできんぞ、練習は?」


「殿が喜兵衛殿と古府中へ行ってからすぐにね、半兵衛殿に手伝って貰ったの。もう完璧よ!」


「じゃあいいよ。撃ったら離脱な」


「はいな!」


 拡散弾が完成していたとは。いきなり実戦投入は若干不安だけど徳が自信ありげだからやっちゃう事にしました。




 勝頼は頂上から離れたところにいます。峠の頂上から坂を下り150mのところ、少し広くなった平らな場所に馬場、真田隊が突撃の準備をする中、徳と玉井が数人の兵を連れてその前に出ます。長竹襖隊と読んでいる高さ2.5mの盾で護衛されながら姿を隠し、中砲の設置に入りました。竹襖に敵の矢が当たりますが、峠を降りてまでは攻めてこないようです。徳が馬場信春を見ると準備オッケーの合図をしていたので、カウントダウンに入ります。


「馬場様、あたいがドンと言ったら突撃してください。イックヨー、みー、ふー、ひー、ドン!」


 徳のドンという声はドーンという発射音で掻き消されましたが、馬場、真田隊は中砲からの発射音を合図に駆け出しました。頂上までは徳の位置から100mあります。通常なら上から下を攻めるのが有利になりますので庵原隊は峠を下りず、待ち構えていました。武田の鉄砲を警戒して竹襖で防御しつつ、こちらも鉄砲と弓矢を用意して。そこにドーンという聞いた事のない音が響いきます。


「なんの音だ?おお、武田が坂を登ってくるぞ、鉄砲隊、撃ちかけろ。うわぁー!?」


 徳の発射した拡散弾が庵原隊の上空5mのところで爆発しました。直径15cmほどの弾は爆発すると周囲に物凄い勢いで尖った鉄クズをばら撒きました。攻撃を行おうとしていた兵達の手、足、顔、あちこちに鉄が刺さり激痛が走ります。兵達は鉄砲や弓を持っている事が出来ずに投げ出してしまいました。何が起きたかわからずに右往左往していると、そこに馬場、真田の兵が襲いかかります。


「突撃じゃあ!」


「斬り捨てろ!」


 馬場信春、真田幸隆の号令の中、馬場、真田の兵達が暴れまわります。あっという間に頂上を制圧してしまいました。今川方の庵原、安倍はなんとか持ち堪えようと後ろで控えている朝比奈隊に連絡を取ろうとしましたが、なんと、下を見ると朝比奈隊が引き上げていきます。


 庵原忠緑は、


「なぜ引き下がるのだ。ええい、駿府まで引くぞ!」


 全ての兵に指示を出し、退却に移りました。しんがりは庵原が務めましたが武田軍はすぐには追いかけてきません。馬場民部は勝頼が峠の頂上まで来るのを待って、


「これが沢山落ちております。敵の死体にもこの鉄が刺さっております。これが伊那殿が見せたかった物でよろしいか?」


「そうです。これは中砲といい、鉄砲の弾を大きくしたような物です。弾の種類を変える事で攻撃に変化をつける事が出来ます。例えば鉄球を飛ばせば門破りに、爆発させれば城を燃やす事もできましょう。そして今日使用したのが拡散弾、無数の鉄の棘が敵を高速で襲う物です」


 真田幸隆は目をキョロキョロさせている。穴山信君は、


「これを伊那殿が製作されたのですかな?これがあれば戦の仕方も変わりましょう。我らにも分けて下さるのですかな?」


「お屋形様のお考えに従います。これは威力が大きいですが、取り扱いも難しいのです。相当訓練をしないと使いこなせません」


 馬場信春は、


「先程は女性が撃っていたようですが、あのお方はどこのご息女で?」


「お恥ずかしい、あれはそれがしの側室で徳と言います。やんちゃでお転婆でもう困っております」


 勝頼がそう言うと、徳が近づいてきました。地獄耳ですね。


「ご重臣の皆様、お初にお目にかかります。伊那勝頼が側室で徳と申します。ただの側室ではありません。歌って踊って戦える側室です。イエイ! 」


 よくわからないポーズをしている徳を見て勝頼はずっこけた。重臣たちは反応に困っていたが、そのうちに大声で笑い出した。





 勝頼達はゆっくりと薩埵峠を下り駿府へ向かいます。途中小競り合いがありましたが軽く蹴散らし、今川館に近づくと、庵原、安倍が屋形に入れずに立ち往生しています。どうやら朝比奈がさっさと館に戻って籠城しているようです。


 それを見た勝頼は、


「徳、頼む」


 と言うと、徳は上空に向けて花火弾を発射しました。ドーンという音が駿府に響きました。馬場、穴山、真田が庵原、安倍に襲いかかると今川館からも朝比奈が出てきました。挟み撃ちになり、庵原、安倍とも戦死しました。安倍は安倍川上流の安倍金山を所有する国衆です。武田家がなんとしても手に入れたかった金山、今がチャンスです。勝頼は半兵衛と玉井に兵2000を預けて当主不在の安倍金山へ派遣しました。


 勝頼はそのまま今川館に入り、武田に味方した今川方の武将を褒め称え領地を安堵しました。それ以上の論功行賞は信玄が来てからになります。その間に馬場、穴山、真田は田中城、花沢城、一色城を攻めにかかります。


 甲斐を後から出た信玄が今川館に入る頃、武田軍は大井川を越え高天神城に攻めかかるところでした。



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