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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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 今川からきた嫁の名は彩と言います。彩は古府中には3人の待女を連れてきています。その他同行してきた従者によって嫁入り道具が古府中の新屋形と呼ばれる躑躅ヶ崎の館の隣に建てられた元は義信の家に運ばれました。この従者達は駿河へ帰りますが今後の連絡役になるそうです。於津禰の部屋が彩の部屋になるのですが、勝頼は一応気にして畳と襖は入れ替えています(気持ちの問題)。さて、いよいよ勝頼と嫁の顔合わせ、のはずですがなぜか徳がいます。


「あたいに挨拶するのが先でしょ!」


「いやいやそれはおかしいだろう。向こうは今川のお姫様で正妻だぞ、お前は妾頭だから格は下になるんだよ」


「女としては先輩よ。年も上だし殿の弱いところも知ってるし(ニヤッ)」


 えっ、なにそれ?勝頼は部屋から追い出されて徳と彩が2人だけで部屋で話し込んでいます。時たま笑い声が聞こえてくるので修羅場ではなさそうですが勝頼は気が気ではありません。

 30分ほどして襖が開き、徳が出てきました。


「殿、今晩は気合い入れなさいよ。じゃああたいは高遠に戻るから」


 えっ、お前何しにきたの?徳は再びニヤッと笑うと訓練があると高遠に帰って行きました。古府中へは側女は連れてきていません。1人は妊婦ですしもう1人は1か月後に引っ越すことになっています。徳は通い妻になるそうです。


「なんだかなあ」


 勝頼は部屋に入りました。ごたいめーんです。部屋の中には両手をついて頭を下げている綺麗な着物を着た少女が待っていました。


「彩でございます。ふつつか者ですがよろしくお願い申し上げます」


「勝頼だ。夫婦になるのだからそんなに堅苦しくしなくていいぞ」


「ではお言葉に甘えさせていただきます。疲れるのよ、こういうの」


 おい、変わりすぎだろ!姫でしょ!


「私は徳様のように一緒に戦には行けませんので、日常のお世話をさせていただきます。妾より正妻の方が格上とおっしゃったそうですね」


「ああ、そういうものだろう」


「今はお徳さんの方が上ですよ、すぐ追い抜きますけど。それと、殿。私を今川からの嫁と思わないでください。私は殿の妻です。前の家なんて関係ありません」


 こいつ、本心か?なんか変わった嫁がきたぞ。徳様からお徳さんに変わったし。


「彩。そうは言っても色々言われてきているのではないか?義兄上とか寿桂尼とか。特に寿桂尼から」


「ええ、しつっこく言われました。お前は今川と武田の架け橋だとか、勝頼を骨抜きにしろとか。今川の言うことを武田がきくようにしろとか。そんな事どうでもいいのです。私はあの家を出たかったのです」


 末っ子の彩は今川義元から可愛がられそれこそ箱入り娘として育てられました。それゆえに男性との接触も少なくいつか嫁ぐ男性への憧れが強くなっていました。いつか迎えにくる王子様を待つ夢見る姫です。

 今川義元が死んだ後、周辺が騒がしくなります。蹴鞠ばかりしていた氏真が家督を継いだのです。彩はそれまで引きこもっていた部屋から追い出され館内の隅の部屋に移動させられました。そこからは中庭が見えるのですが、家督を継いで忙しいはずの氏真は相変わらず美女に囲まれて蹴鞠ばかりしています。


 彩は氏真が嫌いでした。自分が夢見る男性とは正反対に思えたのです。死んだ義元からは彩はいずれどこかに嫁ぐことになるがいい相手を見つけてやるから安心しろ、と言われていたのですがどうなるか不安の毎日です。


 そんな時、大事件が起きました。嫁いで出ていった姉上が出戻ってきたのです。氏真と於津禰、彩は3人とも母親は異なります。そのせいか彩は上の兄妹とは触れ合う事も少なく、優しくされた記憶もありません。ですのでどうでもいい事だったのですが、今川館は大騒ぎになりました。騒いでいる理由は武田が今川との同盟を破棄した、攻めかけると氏真が騒いでいるのです。彩は今まで蹴鞠ばかりしていた兄が何を言っているの?という風にしか考えていませんでした。こんな家に居たくない、早く旦那様へ嫁ぎたいと思っていた時にこの縁談話が出たのです。


 彩は即答でOKしました。そのあと、寿桂尼にも会い、勝頼がどんな男かの前情報を教わりましたがそれもどうでもいい事です。ぶっちゃけもう戻る気もないし誰でも良かったのです。


「というわけでどんな殿方にでも精一杯尽くす気で参りました。ところがですね」


「ところが、なんだ?」


「殿に一目惚れしてしまいました。徳さんには負けたくないです。こんな気持ち初めてです。というわけで可愛がってくださいまし。殿のツボも教えてもらいました」


 おーい、徳のやつ何を教えたんだ?


 彩は武芸が無経験、伊勢物語のような文学には興味があり勉強もしたそうです。今川家には伊勢物語の原文があったそうでさすが由緒ある家ですね。



 その夜、婚儀が行われ宴会となりました。氏真は出席せず代わりに朝比奈泰朝が来ています。朝比奈は上手いことやっているようで勝頼の指示通りどっちの味方でもあるスタンスを守っています。関東へ出陣している武将からもお祝いが届いていて、近隣の武将からも、


「徳川家康様、織田信長様、朝倉義景様、北条氏政様………………、上杉輝虎様よりお祝いが届いております」


 家康は姓を徳川に変えました。上杉政虎は輝虎に名を変えています。信玄は上杉から祝いの品が届いた事に疑問を感じました。信玄は、


「家内を混乱させる策略か、もしくは素直に祝ってくれているのか。どっちもあるな、あの男なら」


 と山県昌景と話しながら酒を飲んでいます。山県は、


「徳川と織田はどう思うでしょうか?勝頼様と今川の縁を」


「不思議に思うであろうな。なんだ信玄は大したことが無いではないか、今川に頼らねば動けないのか、とでも思ってくれればいいのだがそうは思わないだろう。信長という男は頭がいい」


「五郎様と雪姫の縁談はどうしますか?」


「焦る事もあるまい。来年かその先か、望んでいるのは向こうだ。それより新婚の勝頼には悪いが来月関東へ出る。北条がうるさくてかなわん。それと裏で駿河へ出る準備は進めておけ。きっかけはすぐに現れる」



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