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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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軍師現る

「穴山殿、他意はありません。今川義元がどういう男かを知りたかったのです。それと織田信長もです」


「なんですと」


「高遠の山に籠っていては世間の情勢がわかりません。これからご親戚衆としてお仕えするのに何も知らない田舎者ではお力になれません」


「信君、驚いたか。勝頼は余が考えているより数段上であったようだ。お前のところも例の飢饉の時には助けられたであろう」


「お屋形様から食糧を分けていただきなんとか凌ぐ事が出来ましたがあれは?」


「勝頼だよ。諏訪と高遠からの支援物資だ」


「なんですと!あれは伊那殿が。伊那殿、その節はお世話になりました。お陰であの大飢饉の中、飢えることなく過ごすことができました」


「いえ、それがしは民が喜ぶ顔が見たいだけです。民あっての領主ですので」


 伊那勝頼。不気味な男だ。この年齢でこの考え方、傅役は跡部か。あいつは気に入らないが育てるのは上手いのか?それに比べて義信をあんな風にした兵部はダメだな。嫡男の方が難しいのはわかるが甘やかしてすぎだ。


「2人を呼んだのは、勝頼に遠江、三河を見せたいのだ。信君、家康に使者として行ってもらいたい。勝頼を連れてな」


「承知いたしました。関東はどうされるのですか?逍遙軒様には誰を?」


「長坂、跡部、内藤をつけて3000だ。今回は北条の戦だ。別に城を取るつもりはない」


 それならばいいか、穴山信君はその3人はあまり好きではない。が、その程度の戦であれば十分だろうと思っていたのです。関東への出陣は北条へ義理です。出陣したという事実だけあれば大義名分が立ちます。

 この時、穴山は信玄の裏の思惑に気付いていませんでした。なぜその3人を選んだのかを、です。



 先程飯富三郎兵衞が勝頼に耳打ちした事、それは武田の重臣は決して仲がいいわけではなくお屋形様だから従っている、という事でした。なぜそれをあのタイミングで伝えたかったのか、三郎兵衞の勘が働いたとしか言いようがありません。勝頼は穴山信君の顔色を見てその意味を理解しました。


『難しいな、人は』





 翌週、信玄は養生のために信玄の隠し湯と呼ばれる温泉へ向かっていきました。世話役として里美が同行しています。勝頼は里美に頼んで牛を連れて行ってもらいました。


「なんだ、なぜ牛がいるのだ」


「勝頼殿が連れていけと。毎日お屋形様へ牛の乳を飲ませるようにと言付かっております」


「なんだと、牛の乳を余に飲めというのか!」


 この時代、牛乳を飲むという習慣はありませんでした。牛の乳を飲むと牛になるという言い伝えが広まっていた時代です。信玄は無茶苦茶抵抗します。


「あいつは何を考えているのだ。余を牛にしようというのか」


 里美はゲラゲラ笑っています。


「何がおかしいのだ」


「お屋形様。牛の乳は滋養にいいのですよ。私も以前諏訪にいる時に飲んでおりました。勝頼殿が労咳を克服したのも牛の乳や豚の肉による食事によるものだそうです。勝頼殿はお屋形様のお身体を心配しているのです。まさか、怖いのではありませんよね?」


「馬鹿を言うな。余に怖いものなどはない(汗汗)」


「それでは私と一緒に飲みましょう。朝飲むのが効果があるそうですので」


「楽しみだな。ハッハッハ」


『こいつら連んでおるな、しかし勝頼め、どこからそんな知識を………』





 関東攻めは1ヶ月後に出発になりますが信玄は同行しません。影武者が信玄の代わりを務めることになっています。同じく1ヶ月後、穴山が高遠へ来ることになっています。天竜川沿いに下り三河へ出る予定で岡崎へ向かうためです。桶狭間以降、三河は松平家康が平定させるべく今川相手に奮闘しています。織田信長は美濃制圧に忙しい。そんな中、ついに待ちに待った軍師が高遠に現れました。


「よう参られた。伊那四郎勝頼である」


「お世話なる事に決めました。竹中重治です」


 竹中半兵衛という名で有名なこの男、美濃の斎藤道三に仕えていまして斎藤家の跡を継いだ義龍と道三の争いの時には道三側に付きました。この戦いに敗れた道三の死後、仕方なく義龍に仕えましたが今度は義龍が織田信長に殺されてしまいます。斎藤家は義龍が死にその息子の龍興が継ぎましたが、このままでは衰退のみと悩んでいたところに勝頼から誘いがあったのです。重治は美濃を離れる事に抵抗がありましたが、伊那の吾郎が連れてきた美人のくノ一、香織の優しさとソーセージ食べ放題に遂に折れました。ちょうど行き場を失っていたところに救いの神、ではなく美女と食べ物。この時竹中半兵衛重治は17歳、勝頼の2つ歳上になります。吾郎は勝頼が手を出さなかった女性の中から3人を竹中半兵衛狩に連れていき上手いこと結果を出したのです。


「竹中殿、これからは半兵衛と呼ばせてもらう。ここにいる玉井についてこの国の事を学んでくれ。3ヶ月は何もしなくていい、その後はあてにするぞ。玉井、この半兵衛は軍師として迎い入れた。この男には全て見せていいぞ。それと、1ヶ月後に穴山殿と岡崎へ行く。留守の間を頼む。吾郎、先に20人出して各所に配置、それと陰の護衛に10名だ。寅三と他に4名、玉井の部下5名を一緒に連れて行く。見た目は10人となるようにな」


 吾郎が気をきかせて、


「岡崎への道中にはすでに配下を住まわせております。それと、お供の中に徳を入れていいですね?」


 徳とは勝頼の側女だが忍びの訓練もしていて護衛もできる。その上なぜか知恵が回る。


「良かろう。さて半兵衛、俺以外からも声がかかっていただろう。どこからだ?」


「はい、松永弾正、織田信長から誘いがありました」


「なぜ俺を選んだ?女と食事に釣られたふりをしたのはそいつらに対する言い訳だろう?」


「吾郎殿から勝頼様が民を飢饉から救った話を聞かされました。いずれ天下に名を挙げられるお方だと思えたのです。それと信玄公の軍略をこの目で見たいとも思いました。松永弾正、織田信長は人として尊敬できません。あと殿は釣られたふりと言いましたが、それも立派な理由です。それがしは病弱なため滋養にいい食事を求めておりました」


勝頼は半兵衛を工場へ連れて行った後、玉井に預けました。さて、いよいよ松平家康と面会です。




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