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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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勝頼の新兵器

 宇佐美正勝は、物見の報告を待つ間に兵の混乱を沈めました。が、その時すでに1000名の兵が逃亡していたのです。怒りましたがこうなってしまっては仕方ありません。物見の報告を待ちます。そして、しばらくして偵察に出した物見が帰ってきました。


「申し上げます。人がぐしゃぐしゃになって死んでおりました。その数7名。その他に怪我人が多数地面にうずくまっております。そしてその周りにこの鉄の玉が転がっておりました」


「これは、何だ?地面に転がっていたのか?」


「はい」


 宇佐美は鉄の玉を触ってみました。これは何だ?爆発した物の残骸なのだろうが?周りの者にも聞きましたが誰も首を傾げるばかりです。悩みました。まさかこの弾が空から飛んできたとは想像できません。この時代にそんな武器は無いのですから。


「わかった。これが爆発したのかもしれない。他に転がっていないか調べるのだ」


 宇佐美は物見に加えて兵も増やし調査するよう指示しました。が、少し経ってからこれでは戦に間に合わないと焦り出します。


「物見を待っているだけでは間に合わなくなる。全軍少しづつ進むのだ」


 この際、一気に駆け抜けるか?犠牲は出るが戦には間に合う。



 その様子を勝頼は山の中から見ています。


「進み出したか。あと少しここにいてもらわないとな。玉井、砲撃準備。あっ、また狙わなくていいぞ、今度は弾があるだけ撃って敵の目をこちらに向ける。八幡原へ行かせてはならぬからな」


「承知!」






 八幡原に典厩信繁が死ぬとほぼ同時に妻女山から一斉に銃が発射された音が響きわたります。それを聞いた武田軍は山から味方が来る合図と考え奮起しました。


「あれは合図だ。もう少しの辛抱だ」


 武田の兵は防御に徹底しています。飛び出した太郎義信も諸角豊後守を失ったショックから大人しくしていました。


 合図の銃声は当然ですが上杉にも聞こえています。


「山の方を見張れ。動きがあったらすぐに知らせろ」


 上杉政虎は、武田軍がしぶといので困っています。山の兵が来る前に晴信を倒したいのですがうまくいきません。とっておきの善光寺からの増援も現れません。


「ええい、なんで落とせん。中央の典厩信繁を討ち取ったのであろう、そこから崩せ。本陣を狙うのだ」


 ところが、そこには信濃勢が配置されていました。敵と一番ぶつかるところで、見方によれば弾除けのような物です。そういった場所には譜代ではなく信濃勢のような成果を出さねばならない武将が割り当てられます。配置された信濃勢とは室賀、諏訪の二部隊でした。その二部隊は必死に上杉の攻撃を堪えていたのです。この戦には勝頼に代わって諏訪満隣、諏訪頼忠親子が参戦しています。勝頼は伊那、高遠の城主ですが一応諏訪の本家筋の血を引いているので諏訪家は自分の家のようなものなのです。頼忠は勝頼から俺の代わりにしっかりと戦えと言われており気合が無茶苦茶神がかっていました。


「お諏訪太鼓を鳴らせ。今こそ諏訪大明神のお力の元、敵を抑えるのだ。じきに山からの援軍が来る。諏訪の旗を掲げよ、太鼓を鳴らせ!」




 戦場に何故か太鼓の音が鳴り響きます。上杉政虎は太鼓の音を聞いて、柿崎に質問しました。


「あれは何だ?なんの意味があるのだ?」


「お諏訪太鼓というものだそうです」


「それがどうしたというのだ。なぜ崩せない。何故太鼓を鳴らすのだ。あれを蹴散らせない我らは神と戦っていると言うことか?」


 越後にも諏訪神社があります。お参りした方が良かったかな?と一瞬雑念が入りましたが、そんなわけないと雑念を振り払います。


上杉軍は諏訪の旗印を目障りだと集中攻撃しますが、倒すことができません。それを見た武田晴信は、


「諏訪大明神のお力なのか」


 と呟きますが、本当のところは諏訪頼忠は太鼓の音に隠れて勝頼開発の近接戦闘用新兵器、桜華散撃を使っていたのです。


 桜華散撃: 勝頼が軍師こと三雄に見せられた戦隊モノDVDの中で使っていた武器の応用で、簡易手榴弾です。火薬玉ですが中に尖った鉄くずが混ぜられており敵の中に放り込むことで半径3m以内の敵を攻撃できます。諏訪頼忠は攻め込まれそうになると桜華散撃を太鼓の音に合わせて使う事で、なんとか凌いでいたのです。


 諏訪勢も1人、また1人と倒されていきますが旗印は倒れずかえって武田軍の強さの象徴のようになっていきました。そして遂にその時がやってきます。妻女山から馬場隊、真田隊が八幡原に現れたのです。





 少し前の事、妻女山では馬場民部が決断を下します。


「もう待てん、道は無視だ。とにかく山を降りろ。小山田隊を前面に出し、村上義清と戦っている間に他の隊は横に回り込み、とにかく上杉本隊を攻撃するのだ」


 それを聞いた小山田信茂は面白くありません。小山田家は武田家と近い筋ですが、領地が現代の都留郡で当時、郡内と呼ばれていました。何かにつけて郡内、郡内と簡単に言うと差別されて損な役回りが多いのです。今回も馬場の策が悪いのに尻拭いが小山田隊になりました。本当なら小山田隊も上杉本隊を攻めたいのです。ですが、命令には従わねばなりません。小山田信茂は、


「承知。我らが引き受けますゆえ、早くお屋形様の元へ。お願い申す」


 勇猛な小山田隊は山道を塞ぐ信濃勢と戦い、回り込んだ味方の邪魔をさせませんでした。それにより馬場隊1300、真田隊700の兵が上杉の背後に周り、その後も徐々に山を降りた兵が増えていきました。

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