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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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すれ違い

 川中島では上杉政虎が焦れていました。


「まだ武田は動かないのか?いつまで法要をやっている気だ?」


 その時、早馬が報告にやってきました。


「よく来た。武田の様子はどうだ?」


「はい。それがしは上田原の農民に扮し、法要に参加して参りました」


 それを聞いた重臣の柿崎景家は、


「そんな事を聞いておるのではない。武田は動いたのか!」


「待て。そなたは法要に参加したのだな。その様子を話せ」


 政虎は興味を持ちました。


「へい。法要では酒と焼いた肉のような物が全員に振る舞われました。その肉のような物は今まで食べたことのない旨さでした」


「全員といったが、報告では武田軍は2万の兵がいるという。2万人全員に酒とその肉を出したのか?」


「はい。その通りです」


「それ以外に気づいた事はないか?」


「肉の事をそせーじと呼んでおりました。それと四郎様という声を耳にしました」


「ふーむ。わかった。下がって良いぞ」


 上杉政虎が興味を持ったのは酒とそせーじとかいう肉の量です。2万人に振る舞う量の酒と肉を古府中から運搬してきたことになります。これは最初から法要を行うつもりだったのか、それともそのくらいの量はなんともなく常備していたのかです。普通酒を運ぶくらいなら兵糧を運びます。


「晴信め、腹の立つ男よ。柿崎、四郎様といっていたが誰だ?」


「晴信には太郎義信の他に四郎勝頼、五郎盛信と男子がおります。恐らくは勝頼の事だと思われます。ですが、確か14才でまだ戦には出ていない筈です」


「跡継ぎには困らないという事か。よし、海津城には兵2000を残し、我らは妻女山へ向かう。そこで武田が来るのを待つ」





 法要が終わり、武田軍が軍議を開いています。


「つまみのソーセージも全員に行き届いたのか?」


「はい。四郎様が自分が出陣できない代わりにと山程ソーセージを積んだ荷駄を寄贈されましたので」


「義信。気づいたか?四郎は最初からそのつもりだったという事だ」


「お屋形様。どういう意味ですか?」


「わからんのならいい。四郎の話はさておき上杉だが、今まで上杉が信濃へちょっかいを出してくるのに対し小競り合いしか行なって来なかった。3度に渡る川中島の戦もお互いの様子見にしか見えない結果となっている。しかし、今回は違うのだ。上杉が二度と信濃に出てこれないようトドメを刺さねばならぬ。この戦はそういう戦だ。それ故に海津城を築いたのだ。三郎兵衞、上杉はどう出てくる?」


 飯富三郎兵衞、後の山県昌景は晴信の問いに答えました。


「我らが海津城に入るのを防ぐ砦を設け待ち構えると思われます」


「そうかも知れんな。我らは上杉を殲滅しようとしている、それは上杉も同じだ。政虎も我らを殲滅する気だ。その策で我らを殲滅できるか?だとするとどうだ?修理はどう思う?」


「殲滅となれば大決戦になりましょう。上杉と八幡原にお互いが陣取って海津城からの兵が上杉の背後をつくのが最善と思います」


「そうだな。そうなれば良いがそうはなるまい。馬場はどうだ?」


 後に鬼美濃と恐れられる馬場民部は、


「上杉は妻女山に陣取りました。山では大軍は動かせません。それは我らとて同じ事。まずは海津城を囲んでいる兵を攻めて、上杉を山から引きずり下ろすのが得策かと」


「色々意見が出たが、これは雌雄を決する戦である。敵の出方を見て臨機応変に動かねばならぬ。それには情報だ。物見を多くだし、少しの動きも見逃さぬようにするのだ。まずは塩崎城へ向かう」


 武田軍2万は上田原を発ち塩崎城へ入った。上杉軍は妻女山から動かずお見合いが続きました。晴信もですが上杉政虎も策を決めれずにいました。双方失敗は敗北に繋がるのです。





 高遠では、真田源五郎が驚いています。


「四郎様、これはなんでございますか?」


「これはな、ジオラマというものだ。俺は海津城築城に川中島へ行った。その時に地形を調べておいたのだ。この川が千曲川、こっちが犀川だ。この間の野っ原が八幡原。ここが妻女山で、こっちに善光寺がある。そして我らが海津城がここだ。お前にはこれを見せたかったのだ。さあ、お前ならどう戦う?」


「お味方は2万と聞いております。上杉の兵はいかほどでございますか?」


「一万五千というところか。さて、上杉はどうするかな?」


「海津城を落として戦いたいところですが、簡単には落ちますまい。砦を築き、お味方を防ぎながら城攻めを行い、城を落とした後入城、いや、無理ですね。となると、陽動ですか」


「ほう、どうやる?」


「嘘の情報を流し、お味方の兵を分散させるのです。数はお味方が圧倒的に有利、海津城のおかげで地の利も有利。その条件で真っ当に戦う上杉ではないでしょう」


「そうか。俺はこう思う」






 妻女山は川中島、海津城を一望に見下ろせる位置にあり武田軍の動きがよく見えます。そこに陣取ったのは良かったのですが補給の問題がありました。これがのちに効いてくるのです。善光寺には後詰めの兵が五千いてそこには兵糧もあるのですが動けずにいました。


 晴信は動きを見せました。塩崎城にいた2万の兵を海津城に向けたのです。それを妻女山から見た政虎は海津城を囲む兵を引き上げさせました。武田軍が千曲川を渡る頃、上杉軍は妻女山に合流しています。

 武田は海津城に二万二千、上杉は妻女山に一万三千、善光寺に五千という布陣になったのです。


 

 


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