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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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出会い

 その知らせを受けた晴信は直ちに、


「今回で北信濃の戦にけりをつける。上杉とは決着をつけるぞ!兼ねてからの打ち合わせ通り皆、3日後に古府中を出発する」


「はっ!」


 皆が戦支度をする中、勝頼は高遠へ戻って行きました。そして準備が終わった晴信ほか重臣達が兵を連れて古府中を出発します。一行は甲州街道を下り諏訪へ到着しました。ここから上田原を通り川中島へ向かうのです。一行が諏訪上原城で休んでいると、


「伊那四郎勝頼、只今参上!」


 勝頼は兵1000名を連れて上原城へ現れました。晴信の前に出ると、


「此度の戦、この勝頼にもお役目を与えください。伊那、高遠の兵1000名。それがしが鍛えた軍でございます」


 晴信は驚きました。移民計画というのは聞いていましたが現れた兵が農民ではなく鍛えられた武者だったです。


『これだけの兵を用意したというのか。しかもこの数日で。いや、海津城を建てた時から準備しておったのか』


 晴信は勝頼が好きでした。小生意気な太郎義信よりもです。ですが、義信は嫡男、それを曲げる気はありません。また他の武将の手前、勝頼をエコ贔屓するわけにもいかないのです。


「勝頼。此度の布陣はもう決まっておる。お前の出番はない。お前の初陣は別に考えてある。今回は諦めろ」


 それに太郎義信が乗っかっていきます。


「四郎、子供の遊びではないのだぞ」


「兄上。この間も申し上げましたがこの四郎を子供扱いするのはやめていただきたい。なんならここで兄上と剣でも槍でも勝って見せようか?」


「だからそういうところが子供だと言うておる。お屋形様が諦めろと言っておるのだ。逆らう気か」


 子供扱いは悔しいですがそう言われると逆らうわけにはいきません。これも想定内です、コロッと態度を変えます。


「お屋形様。出過ぎた真似をいたしました。勝頼、この諏訪の地に留まり、お味方の大勝利の吉報をお待ちしております」


「わかればよい」


「では、お屋形様にお願いがございます」


 ん?なんだ、しつこいな。今参戦しないと言ったばかりではないか。


「お屋形様がご出陣している間、真田源五郎を貸していただきたい」


 真田源五郎、後の真田昌幸です。この時源五郎は13歳、真田家の人質として古府中で晴信の小姓を勤めています。この後、武藤家の養子となり武藤喜兵衛と名乗る事になります。


「源五郎か。良かろう。川中島から戻るまで高遠へ出仕させる」


 こやつめ、上手いこと考えおって。晴信は勝頼の目的が出陣する事ではなく、源五郎を近くに置く事だと気が付きました。その理由は帰ってからゆっくり聞く事にして翌朝、諏訪を発って行きました。





 晴信の元へは川中島に先行している山本勘助からの情報が毎日入ってきます。すでに上杉政虎は善光寺へ入っていてこのままでは川中島へは上杉が先に着いてしまいます。晴信はその報告を聞いて進行を早めました。さらに次の早馬が次の報せを持ってきました。


「申し上げます。村上義清率いる2000の兵が海津城を取り囲みました」


 晴信は使者を休ませます。一大事とかなり無理をして急いできたようでした。晴信は近くにいた内藤修理、典厩信繁に、


「どう思う?」


 内藤は、


「我らが到着する前に海津城を落としてしまおうという事だと思います。あの城があっては上杉に勝ち目はありません」


「信繁はどうだ?」


「修理の言うことも最もだとは思いますが、それがしにはあの海津城が簡単に落ちるとは思えません。それは政虎とてわかっているはず。おそらく先に有利な陣取りを行うのが目的だと」


「それはそうだ。では、相手が急いでいるならばこちらは緩りと参ろう。村上義清か、しぶとい奴め。おう、ここは上田原ではないか。あの村上義清との戦では多くの者達を失った。あの者達の犠牲があったからこそ今の我らがあるのだ。ここで戦没者の慰労法要を行うとしよう」


 上杉の間者もこちらを見張っている事でしょう。今まではかなりの急ペースで川中島を目掛けて進んできていました。その報告を聞いた上杉軍も急いで川中島へ進行しています。村上義清が先行で海津城を包囲し、本隊も八幡原に到着しました。上杉政虎は、海津城を眺めて


「いいところに城を築いたものだ。さすがは武田晴信、と言いたいところだがこれでは手が出せぬな」


 重臣の直江実綱は、


「武田が来る前に落としてしまえば良いのでは?」


 と、提言しましたが、政虎は


「この城は簡単には落とせない。城を攻めている間に晴信が来れば背後から攻められてしまい我らの負けよ。全く忌々しい城だ」


 と、その時、早馬が到着しました。武田の様子を知らせにきたのです。


「武田軍は急に進行をやめて上田原で法要を始めました」


 政虎はそれを聞いて、


「晴信め。我らに海津城を攻めさせようとしているな。我らの動きも見張られているであろうし」


 結局政虎は海津城を攻めずに、妻女山に陣を取りました。






 晴信が上田原で法要を始めた頃、真田源五郎が高遠城へ現れた。


「ここが高遠城。諏訪からここまで民の顔を見て歩いてきたが皆いい顔をしていた。四郎様の治世がいいと言うことであろうか?」


 大きな声で独り言を言いながら門番へ到着を告げると、同い年くらいの身なりのいい男が現れた。


「よく来たな源五郎。俺が勝頼だ」

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