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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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直江兼続

 穴山信君が兵二千とともに春日山城付近へ到着しました。忍びの情報と物見によると景勝が春日山城本丸に籠城し、景虎は御舘に本陣を敷きつつ春日山城を攻めようとしているとの事でしたが、到着してみると春日山城でお見合い状態でした。城の門には矢が突き刺さり戦闘があった事がわかります。


 穴山は春日山城から西側に陣を敷きました。予想通り景虎の使者がやってきます。使者はよりによって上杉憲政です。


「穴山殿。景勝殿が謀反を起こしました。ぜひ、景虎殿へお味方いただきたい」


「謀反でございますか?それはいけませんな。それで景勝殿は何をしでかしたのです?」


「お屋形様の遺体ごと城を乗っ取りました。武田様が遺言状を取りに戻られた後、すぐに行動を起こしたのです」


「それは驚かれたでしょう。それで上杉殿は景虎殿へつかれたのですか?」


「左様。それがしはもう老体でござる。関東に平和をもたらすには景虎殿が適任」


 穴山は上杉憲政がどういう人生を歩んできたかを思い出していた。関東管領として下野を治めていたが、北条氏康に仕掛けられ連戦連敗、武田とも戦をし、連戦連敗。どんどん衰退し、ついに越後の長尾景虎を頼りに関東管領と上杉の姓を譲渡した男だ。


『配下に頼まれたのであろうか?しかしこの男には運がない。いや、運ではなく自らの行動が起こした結果か。お屋形様がよく言う因果応報というやつだな』


 穴山は上杉憲政の顔をじっと見てから、


「それがしはお屋形様より上杉家の結果を見届けるように言われておりまする。どちらかに味方をする事はありません」


「しかし、武田様は遺言状を持ってお戻りになるのでは?その時にこの状態ではどうしようもありません」


「いかにも。それではこの穴山が双方の言い分を聞きましょう。まずは休戦していただきたく」


 上杉憲政は穴山の言う通り休戦しようと御舘にいる景虎の元へ向かいました。御舘は上杉謙信が元関東管領の上杉憲政に与えた拠点です。さて、当の景虎は景勝に先を越された事が悔しくて仕方ありません。


「なんでこんなに早く本丸を占拠できたのだ。景勝め、いつから準備しておったのだ?」


「そのような素振りはありませんでした。ですが景虎殿、焦って仕掛けてはいけません。武田が遺言状を持ってくるまでな我慢です」


 景虎と話しているのは、斎藤朝信です。斎藤は謙信が遺言状を書くのをその目で見て封印を施した1人です。あくまでも遺言の通りに進める事を望んでいます。


「斎藤殿、そうは言っても城を占拠されている。奪い返すしかあるまい。このままでいいようにされてしまうぞ」


 景虎は氏邦が海津城へ向かっている事を聞いてもう引き下がれないと知っています。斎藤の言うような状況では無いのです。そんな事を知らない斎藤は律儀です。


「武田様がお戻りになれば悪いようにはなさるまい。ここは我慢を」


 景虎は武田は来ない、来たとしたら氏邦が負けている。そうなる前に景勝を倒し春日山城へ入らないとと考えて焦っています。冷静な斎藤がうざくて仕方ありません。


 そこに上杉憲政に連れられた穴山信君が到着しました。景虎は焦ります。穴山はどこまで情報を持っているのか?ここに来れるということは海津城へ行っていないという事です。


「景虎殿。穴山殿をお連れ申した」


「祖父様、ありがとうございます。穴山殿、遺言状をお持ちか?」


 景虎は怪しい笑みを浮かべて穴山へ話しかけました。狐とたぬきのなんとかでしょうか?穴山の方が明らかに上手です。


「景虎殿。遺言状は我がお屋形様が海津城より持ち帰ります。まだ数日かかりましょう。それよりも戻って見れば景虎殿が春日山城へ攻撃を仕掛けている様子。これは一体どういう事でござるかな?」


「なんと申される。それは誤解でござる。景勝殿が突然春日山城本丸を占拠し、我らは追い出されたのでござる。先に攻撃を仕掛けてきたのは景勝、我らは仕方なく退却し軍備を整えて攻撃を仕掛けた次第。ですが、お屋形様の遺体がある城を攻めるのに士気が上がらず困っております」


「そういう事でござったか。わかり申した。ただ、こういう時は片方の言い分だけ聞いては不公平というもの。あちらの言い分も聞いてみたいがよろしいか?」


 景虎は黙っている。斎藤は不思議そうだ、何も悪いところがないのになんで景虎は即答しないのか?斎藤は謙信から上杉を護れ、それには武田勝頼を頼れ!と直接に言われています。この展開はバッチリです。


「よろしいか、景虎殿?」


 穴山が念を押します。腹黒いというか頭の中では笑っています。ほれほれ、どうする?って感じです。


「わかり申した」


 景虎は渋々了承しました。時間がないのです。海津城の結果次第ではこの穴山を切り捨てねばなりません。ですが今は無理です。それをした瞬間に全てが終わります。


 穴山は春日山城へ向かいました。景虎は忍びを呼びます。軒猿へのつなぎ役、連絡係の一左を。


「軒猿はどうした?遺言状はどうなったのだ?」


「それが、頭とは連絡が取れません。遺言状を追っていったままになっています」


「なんだと!梟はどうしている?」


「春日山城にいるようです。いかがなされますか?」


「軒猿を探せ、それ以外残りの者総動員で景勝、穴山を殺せ!もうそれしか方法がない」




春日山城で穴山を迎えたのは凛々しい若者でした。昨日名を変えたばかりの若者、直江兼続です。



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