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【これまでのあらすじ】
クルテクとの問答を経て、ニコラスは仲間とともに、決戦まで束の間の穏やかな時間を過ごす。
一方、ハウンドの元には、USSA長官アーサー・フォレスター本人が訪れていた。
「君に改心の意思があり、生涯をかけて贖うと誓ってくれるなら、私は君を全力で庇護しよう」
フォレスターからの一方的な慈悲を、ハウンドは拒絶する。その瞬間、彼女の処刑が確定した。
「ならば、君には死んでもらうしかないな」
そう言ってフォレスターは、ハウンドをセントラルタワー外の光景を見せつける。
27番地めがけて飛んでくる、B-52戦略爆撃機の姿を。
そうしてフォレスターは、総攻撃第二段階として、27番地への大規模空爆を宣言するのであった――。
【登場人物】
●ニコラス・ウェッブ:主人公
●ハウンド:ヒロイン、敵(USSA)に捕らわれている
●アーサー・フォレスター:USSA長官にして、『双頭の雄鹿』現当主。すべての元凶。
【用語紹介】
●合衆国安全保障局(USSA)
12年前の同時多発テロ発生直後に急遽設立された大統領直属の情報機関で、年々発言力を増している。現長官はアーサー・フォレスター。
●『双頭の雄鹿』
USSAを牛耳る謎の組織。その正体はアメリカ建国黎明期の開拓者『ポパム植民地』住民の末裔。
マニフェストディスティニーを旗標に掲げ、国を正しい道に導くことを指標とする。政界、経済界、軍部、国内のあらゆる中枢に根を張り巡らしている。
名の由来は、ポパム植民地の最大後援者でもあったジョン・ポパムの紋章からもじったもの。
●失われたリスト
イラク戦争中、国連主導で行われた『石油食料交換プログラム』を隠れ蓑に世界各国の大物たち(国連のトップ、現職の大臣、資本家、宗教関係者など)がこぞって汚職を行った『バグダッドスキャンダル』に関与した人物らの名が記されたブラックリスト。
このリストを公表するだけで、世界各国代表の首がすげ変わるほど破壊力を持った代物。『双頭の雄鹿』の資金源と目される。
現時点、証拠はすべて抹消され、証人もハウンドとシンジ・ムラカミだけとなっている。
●絵本
ニコラスがハウンドから譲り受けた手書きの絵本。人間に連れ去られた黒い子狼が、5頭の犬たちの力を借りながら故郷を目指す物語が描かれている。作者はラルフ・コールマン。
炙り出しで謎の文がページの各所に仕込まれており、それらを解き明かすと『証人はブラックドッグ』、『リーダーはアーサー・フォレスター』となる。
●《トゥアハデ》
『双頭の雄鹿』の実働部隊。世界各国の特殊部隊から引き抜いた兵士で構成されており、長のフォレスターが自ら選んだ幹部“銘あり”が数人存在する。
現時点で確認されている“銘あり”は『キッホル』、『クロム・クルアハ』、『ヌアザ』、『モリガン』、『ディラン』、『スェウ』、オヴェドの七名。
現時点で『キッホル』、『クロム・クルアハ』、『ヌアザ』の三名は死亡。
また、なぜかオヴェドは名を与えられていない。
ミシガン州特別自治区――通称『特区』への特別軍事作戦における総攻撃は、第二段階へとはいった。
空軍による敵本拠地への地中貫通爆弾の精密空爆。
作戦には、戦後の復興や隣国カナダへの影響を加味し、総重量五千ポンドのGBU-28を大幅に減量した、約三千ポンドの爆弾が使用されることとなった。
これは、未だ非戦闘員の避難が完了していない敵――27番地民兵への配慮というより、特別軍事作戦以降ますます政治的先鋭化を強める合衆国安全保障局に危機感を抱いた軍の反発であった。
しかしながら、USSAはさらに一枚上手だった。
本作戦において地中貫通爆弾だけでなく、CBU-72燃料気化爆弾、俗にいうサーモリック爆弾を、追加で投下するよう取り計らったのである。
それも、イラクの『砂漠の嵐』作戦後は運用兵器から外れ非武装化を待つだけだったものを独断で回収し、かつ大統領令という黄金の免罪符を掲げて軍へ要請した。
もはや命令であった。
USSAは「地中貫通爆弾投下により発生した土砂や瓦礫で、燃焼ガスの充満が阻害され、威力は従来のものより半減する。よって本兵器は地下施設の破壊や敵兵の殺傷ではなく、心理兵器としての運用が目的である」と主張した。
だが二つの爆弾の威力をよく知る空軍には詭弁にしか聞こえず、ただただ自分たちの置かれた境遇に唖然とした。
一般人に毛の生えたようなレベルの民兵に対し、地中貫通爆弾で地下へ大穴を開けてから、サーモリック爆薬を流し込んで根こそぎ焼き払おうというのだ。
陸海空・海兵隊の四軍が参戦しているだけでも過剰だというのに。
オーバーキルでしかないこのUSSAからの、もはや狂気としか思えぬ執着と殺意に、軍上層部は身震いした。
そして2014年4月27日、午前4時32分。
まだ太陽も昇りきらぬ春の明け方に、B-52戦略爆撃機により、二種の爆弾が27番地中心部へ向け、投下された。
目標は、敵の最大拠点であったカフェ『BROWNIE』が同居する、十二階建て雑居ビル。
国側は知る由もなかったが、午前五時に作戦開始を予定していた27番地にとっては、奇襲を受ける形となった。
落下の際にでる独特な甲高い絶叫。その死神の指笛のような悲鳴が、鬨の声だった。
まず投下された地中貫通爆弾は、迷わず一直線に目標を穿った。
現地偵察部隊からの映像では、目標雑居ビルの脳天に大きな風穴があいただけだった。
爆炎も倒壊もなく、ただ噴煙が少し上がっただけの地味な絵面であったが、その轟音は約350キロ離れたピッツバーグまで届いたという。
続いて投下された燃料気化爆弾、これが恐ろしかった。
空軍は精密空爆の名に恥じぬ技量で、第二の爆弾を第一で開けた開口部めがけて見事投下した。
第二の爆弾は開口部へ吸い込まれるように消え、直後、開口部から凄まじい爆炎を上げた。
特区中が赤い光で包まれ、爆風は上空を覆っていた層積雲にクレーターを開け、消し飛ばした。
衝撃波が発生し波と伝っていくさまが、はっきりと肉眼で確認できるほどだった。
さながら火山の噴火のようだったと、のちに目撃者は語った。
また凄まじかったのは爆炎だけではなかった。
地中という閉鎖空間での爆発で急激に圧力が高まった結果、燃料気化爆弾は予想外の破壊を生んだ。
27番地中心部の地面は瞬時に割れ、炎と噴煙を吹き出し、地表の建物ごと崩落した。
崩落の範囲は直径二キロにまで至り、大地震の発生直後のような有様となった。
また爆発は排水管をつたってデトロイト川まで及んだ。
堤防の雨水管の出口という出口から、火炎放射のごとき爆炎が噴き出した。
これを見た海兵隊の現場指揮官は、当初空爆と同時進行で開始する予定だった渡河作戦に遅れが生じていたことに対し、「結果的に我々の命を救った」と肝を冷やしたという。
こうして、総攻撃第二段階は成功に終わった。
27番地は破壊の限りを尽くされ、文字通り灰燼に帰したのである。街中が焼け、崩壊し、あとに残るは凄まじい噴煙と瓦礫の山となった。
もはや地上侵攻作戦の必要がないと思えるほどの、甚大な被害であった。
***
その光景を、ヘルハウンドはじっと見つめていた。
二種の爆弾投下による震動で、テーブル上の水のグラスがひっくり返るほどの揺れに襲われても、床に座り込んだまま壁一面の窓ガラスにかじりついていた。
アーサー・フォレスターは、少女から片時も目を離さず尋ねた。
「敵の被害状況は」
「確認中ではありますが、捕捉済みの地下水道入り口から逃げ出した敵はゼロです。ほぼ全滅かと」
いつの間にか背後に控えていたオヴェドが、そう答えた。
この議事堂にて、五大マフィアとの戦後処理の交渉を担当していた彼は、前線の状況も逐一把握しているようだ。
そうでなくては右腕に選んだ甲斐がない。
フォレスターはゆっくり頷き、少女を見た。
ヘルハウンドは動かなかった。ただ小さく華奢な方が、小刻みに揺れていた。
フォレスターはいたく満足した。
報告書通り、ちゃんと反省のできる娘のようだ。その殊勝な態度に免じて、最後の望みを叶えるとしよう。
フォレスターは双子を振り返る。
「彼女をここへ。これより刑の執行を始める」
双子はヘルハウンドを窓から引き剥がし、フォレスターの前に跪かせる。
少女はもう抵抗しなかった。
「待て」
フォレスターはその時、初めて同室に、部下以外の他者の存在を認識した。
五大マフィア最古参にして、特区設立の提唱者。ヴァレーリ一家当主のフィオリーノ・ヴァレーリである。
「彼女の死刑執行は俺に一任されたはずだ。約束と違う」
「悪党の君の言い分を聞く必要がどこに?」
その一言で十分だったらしい。
フィオリーノの表情が無になった。この男が激高した時の特徴と聞いていたが、なるほど。三十半ばと思えぬ気迫である。
しかし、フォレスターは最初から処刑人の座を譲る気はなかった。
彼女の生存を確認したその時から、ブラックドッグ抹消の役目は、『双頭の雄鹿』現当主たる自分の責務と確信していた。
「いいじゃねえか、長官殿。この色男はな、そこの小娘に惚れてんだよ」
そんな時、シバルバ一家の新当主が、空気も読まず口を挟んだ。
名はなんといったか。ともあれ、長年ヴァレーリ一家と敵対してきた一家の長は、ライバルの無様な有様に目に見えて上機嫌だった。
「髪や指の一本や二本、くれてやれよ。俺としても先代のことがあるからな。あっさり殺しちゃ、面白みがない」
「見届けたい者はここへ来るといい。立ち合いぐらいは許そう」
不快な言葉を遮って五大マフィアに言い放つ。
フォレスターの発言に、シバルバは白けた顔で黙り、ターチィは静かに目を伏せた。ミチピシは目も開けず、ロバーチは少女だけを凝視していた。ヴァレーリは足を組み直し、頬杖をついて傍観の構えを取った。
誰一人として、席を立つ者はいなかった。
フォレスターは少女に向き直った。もはや五大マフィアに興味はなかった。
オヴェドから処刑用の銃と弾丸を受け取る。
少女が愛用していた銃剣仕様の回転式散弾銃。それと彼女が胃に隠し持っていた、あの白薬莢の弾だ。
スラグ弾特有のずしりとした重みが掌にかかる。
フォレスターは弾を指で転がし、薬莢に記された『棄てられし者のために』という一文に目を落とす。
「言い残すことはあるかね?」
フォレスターは少女に問うた。
黒妖犬と恐れられたただの少女は、のろのろと顔を上げ、窓を見た。
遥か彼方、黒煙が立ち昇る焼け野原となった27番地を、その瞳に映して。
「――大いなる、」
弱弱しく掠れた声は、死に瀕した人が神に縋る祈りに思えた。
「大いなる、悪戯を。ここに」
少女の祈りを聞き届けたフォレスターは、白薬莢の弾を装填した。
エックス線検査で確認されたフォスター型弾頭のライフルド・スラグ。一撃で確実に少女の頭部を吹き飛ばすだろう。
苦しみのない最期と、彼女がこれまで犯した咎への報いを与えるに、相応しい弾だ。
一方でフォレスターは、この弾を与えた者を心から憎悪した。
――ニコラス・ウェッブ、君はまさしく偽善者に相応しい男だったな。
死を希う少女を無意味に永らえさせ、希望を与えておきながら、自死の弾を渡す。実に無責任で身勝手な大人だった。
撃鉄を起こし、構え、引金に指を添える。
少女は最後までこちらを見なかった。
「さようなら。ブラックドッグ」
フォレスターは引金に指をかけた。
轟音。
フォレスターは思わず床に膝をついた。
「主!」
双子が駆け寄ってくる。フォレスターは手元の拳銃に目を落とす。
撃鉄は起きたまま、弾は発射されていない。
ならば、この轟音は? この足元から突き上げる震動は――一体なんだ……!?
「爆発か!?」
「五大マフィアめ、ここにきてまだ足掻くか!」
双子の叫びに、五大マフィアを振り返る。
しかし、当の連中はぽかんと口を開け、互いに顔を見合わせている。
次いでフォレスターは少女を見た。そして唖然とした。
少女の目に、光が戻っている。その深緑の瞳は、窓の一点を凝視している。
フォレスターは窓を振り返った。その瞬間、高速で飛来する黒い影を見た。
轟音。
先ほどよりも強烈な揺れがフォレスターを襲った。オヴェドが顔を引きつらせて叫んだ。
「砲撃です! 主、砲撃を受けています!」
***
「……夾叉もなしに命中させられる人間って、実在するんだな」
『ほう。貴様、掠っただけを命中と呼ぶクチか』
「いいえ、曹長。――右に15メートル、上に32メートル、修正を」
『了解した』
マクナイト老人がそう言った直後、独特の飛翔音が鳴り響いた。
すべての歩兵を有神論者たらしめる、240ミリ榴弾の飛来である。
M1-240ミリ榴弾砲、通称『黒竜』。
米軍が太平洋戦争時代に開発した攻城兵器であり、マクナイト老人の私物である。あんな代物をどうやって入手したかは、ひとまず割愛するとして――。
直撃。
セントラルタワー中央やや下、黒煙が噴き上がった。飛散した炎とガラス片が地上へ降り注ぎ、朝日を浴びてキラキラを輝く。
それは、かの同時多発テロの再現だった。
あの惨劇に奮い立ち、対テロ戦の戦火に身を投じたかつての自分は今、国家に仇為すテロリストとしてここに立っている。
皮肉といえば、皮肉だろう。
――どうとでも呼ぶがいいさ。
一人静かに鼻を鳴らしたその時、右耳の無線機に報告が入ってくる。
「今しがた確認が取れた。非戦闘員も含めて全員無事だ。間一髪だったな」
ニコラスがそう言うと、同部隊の面々はほっと全身を脱力させた。しかし沈んだ表情が払拭されることはない。
今から約二時間前のことである。
午前3時過ぎ。晩餐会も終わり、最後の睡眠を皆が取り始めて数時間たった頃だった。
地下水道内に、けたたましい警告音が鳴り響いた。
『全自動防空システム』の警報だった。
全自動防空システムとは、ニコラスが通信班とともに開発を進めていた、飛行ドローンを活用した無人防空監視システムである。
飛行ドローンを自動飛行モードに設定し、群体化して特区上空の特定航路を全自動で巡回。
機体の全方面に装着した高性能カメラで地上・上空すべてを監視し、管制所へデータを送信する。
管制所では送信されたリアルタイム映像を常時AIで管理、分析。
予め設定しておいた“非常事態と思われる事象”が一定条件満たされた場合、全住民が持つスマートフォンに警告が発せられるという仕組みだ。
以前から活躍していた『27番地防衛アプリ』を改良したものであり、本来は自爆ドローン対策にと開発したものだった。
しかし、そのとき発せられた警報は、自爆ドローン以上の脅威だった。
27番地を包囲していたトゥアハデ兵が、突如、一斉に退き始めたのである。全方面部隊のすべてが、だ。
『大規模空爆の予兆』を観測した防空システムは、その役目を見事に果たした。
結果、ニコラスたちは何十台からなる多種多様なアラームの大合唱に叩き起こされる羽目になった、というわけだ。
加えて、それを裏付ける情報が、クルテクによりもたらされた。
「今、ライト・パターソン基地からB-52が飛んだ! 空爆が始まるぞ、十中八九、地中貫通爆弾だ!」
それを聞いたニコラスは即座に動いた。
急遽、作戦の開始予定時刻を切り上げ、現刻午前3時15分をもって、全住民の避難と奇襲作戦を開始したのである。
結果はご覧の通りだ。間一髪ではあったが、辛うじて人的被害だけはゼロで済んだ。
だが――。
「もう、住めないのかな」
誰かが漏らした呟きは、その場にいた全員の心情を代弁していた。ニコラスを含め全員の目が、かつて27番地だった場所に釘付けだった。
焼け、崩れ、潰れ、かつての面影は欠片もない。地下水道を含む地中インフラも壊滅しただろう。
国を追われ、特区にしか居場所のない棄民にとって、街の破壊は死と同義……いや、それ以上の絶望だった。
「ああ、今の有様じゃ住めねえな」
ニコラスはそう言ってから、
「だからさ、国に慰謝料請求しにいこうぜ」
笑ってみせた。
こんな状況だからこそ笑いが必要だと、かつて親友は言っていた。
今ならよく分かる。あんな状況にもかかわらず、皆の切羽詰まった顔を笑顔に変えてみせた、フレッドの強さが。
あいつだって怖かっただろうに。帰りたくて、帰りたくて、仕方なかっただろうに。
「27番地はかつて五大マフィアと戦って、自らの土地を守り抜いてきた。今は国と戦ってる。その国が全力で叩き潰しにきて、俺たちの一人も殺せなかった。一人もだ。あのアメリカ軍が四軍も結集してこのザマだぜ? 元軍人の俺が保証する、やっぱお前らすごいよ」
それは鼓舞でも世辞でもなく、本心だった。
自分には笑いを取りにいくような器用さはない。だから、本気だけを正直に口にする。
国に慰謝料を請求しにいくというのも、本気だ。皆のことも、本気ですごいと思った。
突如として降りかかった危機に、誰一人として取り乱すことなく、皆が粛々と己が為すべきことを為した。だからこそ、一人も死なずに済んだのだ。
という想いを込めて、本気をもって、全員に熱を込めた視線を送る。皆の心の火が消えてしまわぬよう、自分の灯火を分けにいく。
それが今のニコラスにできる、皆への励まし方だった。
同部隊の面々は目を丸くして顔を見合わせた。それから、少しだけ笑ってくれた。
「そうだな。こんな焼け野原にしてくれたんだ。たんまり金もらわねえとな」
「いっそ国庫、空にしてやろうぜ」
「あんなバカスカ燃やしてノーダメか。ざまあねえぜ」
そう言って、軽口をたたき合い始める。
ニコラスは、鳩尾に熱が込みあげてくるのを感じた。
以前の自分だったら、「こんなとき、フレッドがいてくれたら」と嘆くだけだった。
けれどあいつはもう居ない。自分が撃てなかったせいで、あいつは、自分を守って死んだ。
フレッドは死んだ。その事実が変わることは決してない。
けれど、悲嘆に溺れていては、もう一度あいつを殺すことになる。
命も守れず、思い出も守れなかったでは、あいつに顔向けできない。
ニコラスは立ち上がった。
「行くぞ。取り戻しにいこう」
願ったのはありふれた日常。ただ意味もなく笑い合い、働いて食って騒いで眠るだけの、いつもの光景。
そのいつもの光景に、一人、なくてはならない人がいる。だから迎えにいく。
「これよりヘルハウンド救出作戦を開始する。強襲部隊より本部へ。“銀の弾は装填された、銀の弾は装填された”」
『本部、了解。行ってこい、〈百眼の巨人〉』
バートンからの返答を受け、ニコラスたちは前進を開始した。
さあ、反撃の時間だ。
次の投稿日は2月14日(金)です。
ちょっと今回は短めですが、ご容赦を。戦闘シーンも含めると文字数がどえらいことになるのと、妥協したくなかった部分があったので、分割させていただきました。
再来週までに、しっかり仕上げてまいります。それでは、また。




