8-10
〈2014年1月17日 午前5時55分 アメリカ合衆国ミシガン州 特区40番地(ミチピシ領三等区)〉
「うーん、これ……」
「一番の出来栄えだな」
セルゲイが驚嘆に唸る真横で、カルロが満足げに頷く。
対する二人の視線の先の人物はというと。
「……」
死んだ魚に等しい目で虚空を眺めている。魂が抜けていると言ってもいいかもしれない。
ケータには大変申し訳ないが、ニコラスはあまりの完成度の高さに言葉を失った。
考えてみれば当たり前だ。ケータもハウンドと同じく東洋系の顔立ち、髪も黒で質感も似ており、背丈もほぼ一緒。
ケータの方がごついものの服装で誤魔化してしまえば、近くで見ても分からぬほどハウンドのそっくりさんに早変わりだ。
車での移動中に化粧を施したカルロの器用さもさることながら、替え玉としてはかなり上等だろう。
一方、不本意極まる女装をさせられたケータは、見事にやさぐれてしまった。
殺意すら滲ませる不機嫌面でトランクに腰かけ、がに股に足をおっぴろげて煙草を喫っている。
「ちょっと女子ぃー、股広げて座んないの」
「あ゛?」
「あ、駄目だこれ。刀振り回して追いかけてくる寸前の激おこモードだわ」
「顔のわりに意外と声低いな……おいお前、本番は絶対に喋るなよ」
カルロが忠告にケータは甲高い舌打ちで返した。あの生真面目で好青年だったケータが不良になってしまった。
なんとも言えぬ哀愁を感じ、ニコラスは下手くそながらもフォローに入ることにした。
「助けになれなくてすまん。その、頑張ってくれ」
「……マフィアなんか大っ嫌いだ」
もはや半べそ状態で顔を覆うケータに、ニコラスはその肩を叩いてやることしかできない。
だがそれも、カルロの「泣くんじゃねえよ、メイク崩れんだろ」の一言で、一瞬にして表情が様変わり。
親の仇を睨むが如き眼光でマフィアらをねめつけて、ケータは足音荒く車内へ向かっていった。
陽動のためドローンを飛ばした公共図書館からほど近い、特区40番地大通り沿いの大手銀行。
略奪の限りを尽くされた屋内ホールには、紙幣どころか待合室のソファーまで奪われて何もなく。車両が乗り入れられるほどにがらんどうだ。
お陰でこうして屋内に車両を隠蔽できるのだが、改めて見るとさながら中古車販売店の屋内展示ルームだ。
そして時刻は、午前6時。
あと2時間もすれば、日が昇り、真冬ミシガンの短い一日が始まる。シバルバ領の人々が動き出す頃合いだ。
その人がまばらな頃合いを見計らって少女たちを救出するハウンド――という演目で、ケータたちには動いてもらう。
配置につくのは、一時間後。
それまでにニコラスは、装備の最終確認を行うことにした。
今回の得物はSR-25半自動式狙撃銃、ペレスから借りたものだ。
個体による精度のばらつきが激しいという欠点があるが、数日前に試射した限り当たりを引いたらしく、集弾性も申し分ない。
過去ニコラスが使用した同系列の改良型Mk.11 Mod0ほどでないにせよ、市街戦にはうってつけの代物である。
――にしても、いい装備持ってんよなぁ。光学スコープにフラッシュライト付きで、減音器もワンタッチ式だし。自警団でこの装備かよ。上級市民が金払ってんのかな……。
そこまで思考して、ニコラスは頭を振って考えるのをやめた。
我が27番地の金欠ぶりはいつものことだ。
警備部隊ですら防弾チョッキの完全配備に至ってない時点で、高性能狙撃銃や光学機器の一括購入なぞ夢のまた夢。
住民にならって自分も、せっせと働いて個人のポケットマネーでちまちま揃えていくしかないだろう。現在作成してもらっている義足の出費が地味に痛い。
こうして考えると、現役時代はつくづく恵まれていたのだなぁと思う。
四軍で最も割り当てられる予算が少ない海兵隊だが、現役時代はこんな悩みを抱えたことなどなかった。
「こっちも準備もできたよ」
「……いつでも、どうぞ」
リムジン車から二人の少女、ではなくジャックとウィルが降りてきた。
その背後からは、沈鬱な表情のペレスが不安げな眼差しを浮かべて二人を見つめている。
――迷ってる、な。ガキどもの言葉が効いたか。
ペレスの様子を確認したニコラスは、ギリギリまで待つことにした。ハウンドならきっとそうする。
いざとなれば自分が手を下せばいい。
そう一人、決意した矢先。カルロが腕時計を一瞥した。
「よし。そろそろ最終確認のミーティング始めるぞ」
***
午前8時。予定時刻通り、作戦は実行された。
場所は、自分たちがいるこの銀行がある大通り沿い、400メートル先にある大型スーパーマーケットの駐車場だ。
開店直前の、客こと住民が集まり始めたタイミングを狙う。
作戦はつつがなく進行した。
ハウンドに扮したケータが物陰に隠れていたジャック・ウィルと合流し、用意した車両に向かおうとしたその時、数人の住民が声をかける。
思惑通り、ケータがハウンドだと思い、捕縛しようとしているのだ。
やがて言い争いは揉み合いに発展し、騒ぎを聞きつけた住民がケータたち3人に殺到する――。
「……あいつ、粘り過ぎじゃね?」
「一応ヘルの役だからな。あっさり捕まったら逆に怪しまれるだろ」
「いやいやいや。これは流石にやり過ぎっしょ。なにこれ、カンフー映画かよ」
監視用に飛ばしたドローン4機、それらが送信するリアルタイム映像にて、住民相手に大立ち回りを演じるケータがノートパソコン一面に映し出されている。他3台のPCも同様だ。
上空からの映像ゆえ、ケータの表情までは確認できないが、繰り出される技の一挙一動は、カメラでは捉えきれないほど速い。
ニコラスは酸っぱいものを飲んだように口元をすぼめた。
言うまでもなく完全にご立腹である。
そうでなくとも気に食わないマフィアに無理やり女装させられたのだ。ケータの怒りと屈辱は、住民への抵抗という形で遺憾なく発揮された。
住民も気の毒に。本気のケータの蹴りは、ハウンドより早く重い。
「心配すんな。奴の髪はカツラじゃなくてエクステだ。そう簡単に取れねえよ」
「そういう問題じゃねーんだわ。ちょっとそこの番犬、このアホンダラ日本人に早いとこ折れろって伝えてよ。これじゃあ連れてかれる前にシバルバが来ちまう」
「あのな。俺が言ったところで聞くと思ってんのか。大体やりたくもねえもんやらされたら誰だって怒る……あ」
「あ」
「あ」
ついにケータが倒れた。
解像度の関係でよく見えなかったが、住民が破れかぶれで投げつけたバールらしきものが、ケータの後頭部を直撃したらしい。これは痛い。
「うし、倒れたな。ほーれ連れてけー、んでもって俺ちゃんたちをそんまんま導いてー」
セルゲイが嬉々として連行されるケータたちの追跡を開始する。
ニコラスは胸の内でケータに詫びながら、カルロやその構成員たちと撤収準備に取りかかった。
連行先と思しきストリップバーの建物構造はすでに把握している。構成員らとの打ち合わせも存分にやった。
あとは振り分けられた車両に乗り込んで、頃合いを見計らって移動するだけだ。ちなみにリムジン車は目立つのでここで放棄だ。
ニコラスが車両の助手席ドアに手をかけた、刹那。
「動かないでください」
全員が硬直した。
ニコラスは真顔に、カルロとセルゲイは薄ら笑いすら浮かべて、その言葉を発した男を振り返った。
「へえ、ついに尻尾出したか」
「ぶっちゃけモロばれだったから、驚きはねーけどな」
マフィア二人の冷ややかな視線と無数の銃口を向けられ、ペレスは青い顔をしつつも黙って立ち尽くした。
「私を撃てば、シバルバが襲撃してくるとは思わないんですか」
「どうでもいい。どのみち連中とやり合うのは避けられん」
「そのとーり。テメーをブッ殺すのが遅いか早いかの違いだ。じゃあな、裏切者」
二人の言葉を最後に、構成員が引金に指をかけた。
それを見たペレスは狼狽えることなく、黙って目を伏せた。諦観と後悔に満ちた眼差しだった。
「待て」
ニコラスはペレスの前に立ちふさがり、射線を遮った。と同時に、冷ややかな視線の矛先がこちらへと移る。
カルロとセルゲイの冷笑に侮蔑が混ざった。
「さすが偽善者と呼ばれただけのことはあるな」
「過去の失敗から何も学ばなかったんですねー」
「生憎と性分みたいなもんなんでな。そうそう変わるもんじゃないさ。――ペレス」
伏せられた目元が、ノロノロとあがる。ニコラスはその目を真っ直ぐ見据えて、ペレスに問うた。
「どこだ。目星はついているんだろう?」
途端、ハッと表情を一変させたペレスは、しどろもどろながらも窓の外を指差した。
「向かいのアルゼンチン料理店の軒先が見えますか? あそこのバルコニーで新聞読んでる男。それから通りを歩いているあの老婆と、青年と……それからあの女も。全員シバルバの工作員です。
金目当てに自主的にやってるんじゃなくて、一家から直接雇われてる連中だと思います。拳銃持ってるの、見えますか? あんないい装備、この辺の住民はまず持てません」
息継ぎなしに一気にまくしたてて、ペレスは改めて周囲を見回した。
「車を出してはいけません。工作員がうろついているということは、連中はまだこちらの位置に気付いていない。今、車を出せばすぐに襲撃されますよ」
それを聞いたマフィアらの顔に、戸惑いと疑念の色が浮かんだ。
その時だった。
ブツ、と一台のパソコンの映像が途切れた。
画面の真ん中に『通信途絶』の警告が表示され、その隣のパソコンも数秒後に同じ運命を辿った。
ケータたちを自動追尾していたはずのドローンが、撃墜されたのだ。
ペレスの発言を裏付ける事象を目の当たりにして、マフィアらの顔つきがようやく変わる。
理解したのだ。ペレスが『なに』を裏切ったのか。
「確認した。口径もメーカーも違うが、全員新品もってやがるな。そのくせホルスターだけは同じの使ってる。携帯もだ」
窓には近づかず、部屋の奥からSR-25に装着したスコープで外を一望したニコラスは、ペレスを振り返った。
「いつからだ。シバルバじゃねえんだろ?」
「……最初からです。あなた方が話すところの『トゥアハデ』という連中でしょう。けど私が報告していたのは昨日の朝までです。今回の作戦のことを、連中もシバルバも知らないはず」
「つーことは、こっちの作戦、見抜かれた可能性大ってことね。あの野郎、ただの猿じゃあなかったな」
セルゲイが舌打ちし、残ったドローン二機の自動飛行を手動へ切り替えた。
カルロが屋上で監視中の狙撃班と無線で連絡を取り、構成員らは襲撃に備えて建物のあちこちに散らばっていく。
そんな最中、ペレスだけが茫然自失に立ちすくみ、こちらを振り返った。
「どうして」
「確信したのはついさっきだ。ジャックとウィルに声かけてたろ」
それは今から3時間前、作戦開始直前のことだった。
その時、ニコラスはジャックとウィルの様子を見に、リムジン車へ向かっていた。
寝なくてもいいから、作戦開始前まで横になって休んでいろと伝えたのだ。
作戦が始まれば、休みたくとも休めなくなる。体力はなるべく温存してほしかった。
「――どうしたんだ君。悪い夢でも見たのか」
車内から聞こえた声に足を止める。ペレスの声だ。
彼には、ケータに代わる保護者役として二人の傍で待機してもらっていた。
そして、ペレスの声に混じる、微かな鼻をすする音。事情を察したニコラスは、リムジン車の車窓を控えめにノックした。
「気分が下がるもんは見るなつったろ、ジャック」
「うん、でも……」
ぐすんと鼻下をこすったジャックの目元は紅く、手元には煌々と光る携帯のディスプレイ画面があった。
表示されていたのはTwitterのタイムライン、ジャックの動画アカウントが削除されたことを喜び罵倒するツイートだった。
「またやられたのか」
「うん。でも、しょうがないよ。元はと言えばオレのせいだし」
鼻を一回すすって、ジャックは携帯をポケットにしまった。
横で毛布をかぶったウィルが心配そうに見つめ、遠慮がちにティッシュを差し出した。
そんな彼らの様子を見ていたペレスは事情が飲みこめず、やや困惑した顔で二人を見比べていたが、唐突に「すまない」と目元を伏せた。
「要らぬ負担をかけてしまった。私が不用意なことを言ったから……本当にすまない。そもそも、これは私の仕事なのに」
「いいんだよ、おっさん。オレら、好きでついてきたんだし」
「……覚悟の上。一応、これでも」
不安げな表情は変わらないものの、存外あっけらかんとした少年らの返答に、ペレスが戸惑いがちに目を見開く。
「けど、怖いだろう? 殺される心配はないと言った私が言えた台詞ではないが、酷いことをされる危険性は十分ある。断ったっていいんだ。マクナイトさんが散々言っていた通り、こんなの子供がやることじゃない」
「……今回の囮役の要はケータだ。あいつならハウンドに上手く化けられるだろう。確かにお前たちの特技とナズドラチェンコの技術は相性がいいが、別に他の人間にもできんことはない。こう言っちゃなんだが、ケータ一人に任せたっていいんだぞ」
ペレスに続いて、ニコラスもそう言った。
潜入する人間が多いに越したことはないが、18にも満たぬ少年らに背負わせるには、重すぎる任務なのも重々承知していた。
逃げ道を隠す真似はしたくなかった。
しかしジャックもウィルも、しばし顔を見合わせた後、ゆっくり首を横に振った。
「ありがとう。けどさ。オレら、もう普通の子供じゃないし。今さらもう戻れないっていうかさ」
「……人、殺しちゃったことも、あるしね」
え、と言葉を失うペレスを横目に、ニコラスは「違う」と即答した。
「あの時は反撃しなければ殺されていた状況だった、お前らは俺の命令に従っただけだ。俺の責任だ」
「うん、そうなんだけどさ……なんていうの、断末魔? あれけっこう忘れられらんなくてさ」
ウィルが手元をしきりにいじり始めた。ジャックは無意識なのか、ポケットから取り出した携帯の真っ黒な画面を親指でなぞりながら、ぽつ、ぽつ、と呟いた。
「自分で言うのもなんだけど。つい最近までオレ、どうしようもないぐらいクズだったし、自分が作った爆弾で人傷つけたこともある。オレ、おっさんが言うようなただの子供じゃないよ。戻れないって言うのは、そういうこと。あれだよ、自業自得ってやつ」
「……僕も、人が犠牲になるのを黙ってみてた。それは、人を傷つけるより、もっとひどいことだと思う」
少年らの告白に、ペレスは絶句するばかりだった。
小さく首を何度も振ったペレスは、幾度か開閉した口元から、ようやく言葉を絞り出した。
「けどそれは君らはまだ子供じゃないか。責任を取るのは、もっと大人になってからでいいだろ」
もっともな意見だった。まともな大人なら、誰だってこう答えるだろう。
けれど少年らは、それでも首を振った。
「ありがとう、おっさん。でもさ、ほら」
ジャックは携帯をこちらに見せた。先ほどの罵倒ツイートだ。
そのコメント欄には、変わり映えのしない罵倒やアンチコメントが飽きもせず、ずらりと並んでいる。
「こんな感じでさ、子供だからって、みんな許してくれないみたい」
「……相談しても、怒られてばっかだもんね」
「ねー……。ともかくさ! オレらもうずっとごめんなさいし続けんのイヤなんだよ。いや、あやまりたくないってわけじゃなくて。あやまってもあやまっても永久に許されないっての、結構しんどいからさ」
「……許されないなら、それを上回るコウセキを、僕らが立てればいいかなって」
「そういうこと、以上! だからおっさん、気にしなくていいよ。オレらだってやる時はやるから」
「おやすみなさい!」とジャックが勢いよく頭から毛布を被る。それにならってウィルももぞもぞと毛布を被り、会話はそこで途切れた。
ペレスの説得は、失敗に終わったのだった。
「……強いですね、彼らは」
車から降りるなり、ペレスはそう嘆息した。その真横に、ニコラスもまた並んだ。
「周りの態度もあると思うぞ。27番地の連中は、あいつらの過去を許しちゃいないが、何もしてねえのに、あいつらの過去をあげつらって貶める真似はしない。この街で生まれてからずっと善人なんて奴は一人もいねえからな。責めたところで、自分はどうなんだって責め返されるのがオチだ」
「では、特区外の人間には? 本気で許していない人間には、どうすれば」
「SNSのこと言ってんのか? まあいるかもな。けどそういう連中は、別にあいつらを責めたいわけじゃない。責めやすい罪を犯した人間がいるからストレス解消に叩いてるだけだ。一週間もしたらすぐ忘れるし、攻撃対象も次に移ってる。その程度の薄っぺらい義憤に付き合う義理なんぞねえよ。
第一、本気であいつらを許してねえなら、なんでまた追い詰めるような真似をする? 私刑で追い詰めたところで悔い改めるほど人間は賢くねえ。自棄になってまた罪を犯すか、周りを巻き込んで自滅するだけだ。所詮は鬱憤晴らしでしかねえよ」
「……随分熱く語るんですね」
「経験者だからな。お前も俺の経歴見りゃわかる」
それだけ告げて、ニコラスは先に立ち去った。ペレスの視線をその背に感じながら、敢えて指摘はせずに。
「あれで確信した。お前、あの『13日の攻防戦』でシバルバ側についた住民だろ」
「……はい。正確には、私の両親ですが。ああ、もう亡くなってます。父はハウンドさんの粛清で、母は一年前シバルバに移住した直後に自殺しました。母は結局、土壇場で父の裏切りに乗らなかったのでお咎めなしだったんですが、やっぱり27番地の人々は私たちを許さなかったし、私たちも居づらかったので早々に街を後にしました。あとは、すでにお話した通りです」
やはりか。
ずっと不思議だったのだ。ペレスがよくする、後悔に満ちた眼差しが。特にハウンドへの態度は顕著だった。
会うのを嫌がったかと思えば、「よく来てくれた」と感謝する。何よりペレスは、一度もハウンドと喋ろうとしなかった。
何より、ペレスの『一家でシバルバに引っ越した』という言葉が、引っかかっていた。
ニコラスが記憶した限りだと、住民名簿にはペレスと兄弟の名はあったが、両親らしき名前はなかった。
――兄弟だけで移住したなら、『兄弟で引っ越した』と言うはずだ。だが兄弟外の家族の名は、載っていなかった。
27番地に改めて確認してもらったが、やはりペレスに兄弟以外の記載はなかった。恐らく27番地は裏切者だったペレスの両親の名を記録することを拒んだのだろう。たとえ統治者のハウンドが許したのだとしても、だ。
ペレスはずっと申し訳なく思っていたのだ。
両親の裏切りで街に多大な被害を出したことも、裏切者の家族でありなが27番地に救援要請を出したことも。
それを命懸けで引き受けてくれた、ハウンドにも。
とはいえ、ペレスが『トゥアハデ』に情報を流していたのも事実だ。
「で、どう責任取ってくれんのよ。こいつのせいで作戦台無しじゃねーの」
作戦立案者なだけあって、セルゲイはおかんむりだった。ペレスを見つめるカルロの目も未だ冷たく猜疑に満ちている。
一方、ニコラスはペレスを擁護した。
「仕方ねえだろ。弟、人質に取られてんだから」
「はあ?」
「弟ぉ?」
カルロとセルゲイが素っ頓狂な声をあげた。ニコラスは呆れた。
「なんだお前ら、やっぱり気付いてなかったのか」
「「何がだ(よ)」」
「失踪者のリストだよ」
ニコラスは改めて、二人に名簿を見せた。
「よく見ろ。こいつだ、『フアン・ウリーベ』。頬がこけて顔色が悪いから別人に見えるが、骨格や目と鼻の形はほぼ一緒だ。誕生日が一緒ってことは、お前ら双子か」
「あ、はい。そうです。その……よく分かりましたね? 苗字、母方なのに」
「そうでもない。薬物依存患者が人相変わるの知ってるからな」
そもそも27番地を出たペレスが特区へ逆戻りする羽目になったのは、シバルバが流通させた麻薬に弟が手を出したのがきっかけだ。なら重度の薬物依存になっていても、おかしくはない。
何より実母が薬物依存者だったニコラスは、患者の顔がどう変貌を遂げていくのかよく知っていた。
「けどなんで苗字変えたんだ?」
「弟はその、母に裏切りを持ちかけた父を恨んでいたので……」
それでか。納得したニコラスは資料を抜き取り、未だ状況を掴めてない面々のために、資料をペレスの顔の真横にかざした。
それを見たカルロとセルゲイが唸る。
「……確かに。並べて見比べると兄弟だと判るが」
「これ単体で気付けとか無理ゲーだろ。お前の目ん玉変態仕様かよ……」
「変態じゃない。狙撃手仕様だ。訓練であるんだよ。事前に標的の写真見せといて、いざ的を前にしたら標的の服装が違ったり、帽子とかサングラス被ってるってやつ。
だから狙撃手は標的の顔を、画像のままのイメージで覚えない。顔のパーツごとの特徴で覚えたり、体重の増減や髭が生えた時なんかを予め想像して覚えておくんだ」
これは実戦に則した訓練だった。
標的の情報を事前に入手できたとしても、その標的が写真通りの姿で現れるとは限らない。標的が変装して見逃しましたでは、話にならないのだ。
ゆえに、この見方が染みついているニコラスは、もともと記憶力がいいのも相まって人の顔を覚えるのに苦労した試しがない。
ハウンドのように見事な変装をされない限りは、見抜ける自信があった。
そう告げると、カルロとセルゲイが渋面をつくった。
「最初からそう言えよ」と言いたいのだろうが、ニコラスも真顔で押し通す。
「どうせお前らだって隠し事の一つや二つあるんだろ? だったらこっちも話す内容は絞る」
「……チッ」
「可愛くねえ番犬」
言ってろ。番犬に愛嬌なんぞいるか。
内心悪態をついて、再びニコラスはペレスを振り返った。これだけは確認しておきたかった。
「本当にいいんだな? 俺たちにつけば、弟の命は確実にないぞ」
「構いません。どうせ向こうについたところで、連中が弟を無事に帰すはずがない。今回の犠牲者たちを見て、確信しました」
ペレスは淡々と無表情に語った。
けれど下ろした右手の拳が震えていることも、それを覆い隠す左手が白くなっていることも、ニコラスは見逃さなかった。
納得なぞ、しているはずがない。それでもペレスは、弟の命ではなく、自分たちへの警告を選んだ。
「あんな子供でも命を張ってるんです。そろそろしゃんとしないと、いくら何でもみっともないでしょう」
「……分かった。今からお前は俺たちの味方だ。可能な限りの情報を共有したい。協力してくれるな?」
「っ、はい……!」
話がまとまりかけた、その矢先。
「……追い立てにかかったな。偵察ドローンは全滅だ。俺たちが出るタイミングを待ってやがる」
4台すべてのパソコンに表示させる警告メッセージを睨みながら、カルロは手元のARX160自動小銃に弾倉を叩き込んだ。
ニコラスもまた、SR-25狙撃銃の初弾を薬室へ送りこんだ。
「昨晩の深夜の内に潜入しておいてよかったな。吹雪だった分、目撃者がほとんどいない」
「ああ。車も屋内に停めておいて正解だった。あとは、外をうろつく工作員どもを排除すれば、」
「駄目です」
カルロの発言を、ペレスがきっぱり遮った。
「すでにお気づきかと思いますが、このシバルバにある『目』は工作員だけでなく、住民がメインです。工作員を排除したとしても、異変に気付いた住民が通報してしまえばお終いだ。すぐに強襲部隊がすっ飛んできて包囲されますよ」
「じゃあどうするってんだ。住民とシバルバ両方同時を欺けってか」
険しい面持ちで詰め寄るカルロの追及は、セルゲイの暢気な声に阻まれた。けれどその内容は声音と真逆で悲観一色だ。
「屋上の狙撃班からバッドニュースだ。シバルバの連中が例のスーパーマーケットに到着した。次いでこの通りの南西と南東から、それぞれ5、6台の車列が侵攻中。予想以上に動きが早えな、おい」
「……このままだと三方向から囲まれるな。ケータたちは?」
「GPSを見る限り、もうすぐこの区画を出る。連中の目がよっぽどポンコツなら、そのまんま16番地に行くだろうよ。脱がされりゃ、変装だってすぐばれるからな」
つまり、住民やシバルバがケータの変装に気付く可能性は高く、実質的に16番地を強襲してのケータたち奪還は困難、もしくは不可能ということだ。
そのうえ、自分たちはこの場から身動きが取れない。
一歩でも外へ出て工作員か住民に目撃されれば、すぐにシバルバ一家が殺到して袋叩きだ。
どうする?
「……包囲される前に突破するしかない。ケータたちの救出はその後だ。一度体勢を立て直して、改めて救出する。二人の考えは?」
「異存なーし」
「お前にしちゃ、まともな選択だな」
憎まれ口を叩くや否や、マフィア組はさっさと撤収して車に乗り込み始めた。
油断ならない連中だが、その切り替えの早さと決断力は大したものだ。
「ナズドラチェンコ、お前んとこの狙撃班、貸してくれ。時間を稼ぐ」
「おいおい、ここに残る気か?」
「んなわけあるか。車をいつでも発進できる状態にしておいてくれ。置いていくなよ。――ペレス、手伝ってくれるか」
指名されたペレスは戸惑ったものの、すぐ頷いて駆け寄ってきた。それを見たニコラスは踵を返し、大急ぎで屋上へとあがった。
二脚を開き、銃身を件のスーパーマーケットへ向けてSR-25を据えたニコラスに、ペレスが慌てた。
「撃っちゃ駄目ですよ。こちらの居場所が――」
「無駄だ。撃とうが撃つまいが、向こうは時間をかけてこちらを探す。長期戦に持ち込まれればこちらが不利だ。早期に決着をつけるしかない」
ニコラスはスコープを覗いて、射線上に展開するシバルバ一家の一団を視認した。
さらに周囲を見渡すと、スーパーの店内の物陰から、外の様子をチラチラと確認する住民の姿が見えた。先ほどケータたちに殺到していた住民だ。
買い物中で逃げ遅れたのか、それなりの人数が息を潜めているのが確認できた。
――使えるな。
ニコラスはエベレーションノブで上下調整をする片手間、背負ってきたバックパックから双眼鏡を取り出してペレスに手渡した。
「ペレス、さっそくだが頼めるか」
「な、何をですか」
「こいつでシバルバの連中が乗ってる車を見分けてくれ」
「シバルバの車を、ですか……?」
「ああ。どれが一番上物だ?」
それを聞いてきょとんとしたペレスだったが、しばらくしてハッと察すると、双眼鏡を目に当てシバルバの車両の鑑定を始めた。
「……駐車場入り口に一番近いSUV見えますか。あれ、メルセデスです。それもほぼ新品。あれが一番ですね。あとはあのトヨタのランドクルーザーと……ああ、あのレンジローバーもいけそうですね。
取りあえずハンヴィーとか装甲車は駄目です。大体傷はいってるし、国内じゃまず売れない。盗難車っぽいので綺麗めのは良い値段すると思いますよ」
「乗り手は?」
「大体幹部ですね」
そいつはいい。
ニコラスは呼吸を整え、駐車場入り口近くのSUV目がけて発砲した。
着弾。
SUV近くに立っていた、シバルバ構成員の足元のアスファルトがえぐれて四散する。
構成員は慌ててスーパーマーケット軒下の柱の影に飛び込んだ。
それに触発されたのか、SUVの運転手がドアを開け、外へ飛び出そうとする。
――今。
発砲。着弾。
絶命した運転手の顔半分が吹き飛び、被っていたニット帽ごとSUVのフロントガラスに付着した。
「……メルセデスって血で汚れても売れると思うか」
「洗えば問題ないでしょう」
それもそうか。
ペレスに頷いたニコラスは、共に来たロバーチ狙撃班を振り返った。
「盗難車っぽい車の周辺の敵を排除しろ。だがなるべく車に傷はつけるな。ハイエナどもに餌を見せてやれ」
狙撃班の構成員は訝しげに目を眇めたが(目出し帽で目元しか見えないのだ)、一応指示通り、盗難車らしき車両の周辺に立つ敵を優先的に撃ち始めた。
突然の奇襲に当初こそ驚いたものの、シバルバ一家は存外冷静にスーパーマーケットの方へと退き始めた。
結果、一台。また一台と、車が無人のまま駐車場に放置されていく。
撃つにつれ、撃ち返される弾数も徐々に増えていくが、その時、動きがあった。
住民だ。
スーパーマーケットに隠れていたはずの住民が、コソコソと店内を出て、放置された車に近づいていく。
それも、一人や二人の話ではない。あっという間に十数人ほどが、店を抜け、駐車場へつ向かっていく。
と、突如、住民が一斉に駆け出した。
シバルバ構成員が車を盗もうとする住民に気付いたのだ。何人かが大口を開けて店内から飛び出してきた。
シバルバ構成員が銃を構えた。住民が数人倒れる。
直後、シバルバ構成員は慌てて店から飛び出した。
店内に隠れていた住民が、シバルバの背後から襲いかかったのだ。
特区で銃を常備している人間は少なくない。シバルバも同様だ。つまり、住民の大半は銃を所持している。
住民は、シバルバから車を奪える千載一遇の機会を逃そうとはしなかった。
恐怖で市民を縛ろうとした代償だ。一家への忠誠心なぞ一時的なもの、その恐怖が少しでも薄れれば、市民は迷うことなく一家へ牙を剥く。
人望のない指揮官が背中から撃たれるのと同じだ。
あっという間に、住民とシバルバ一家との間で銃撃戦が始まった。それを確認したニコラスは、手早く撤収にかかった。
***
包囲網の間隙を突いてなんとか離脱できたニコラスたち――だったが、シバルバがそう簡単に諦めるはずもなく、その猛追をニコラスたちは辛うじて凌いでいた。
「お前ちょっとは真っ直ぐに走れないのか!?」
走る、というより常時滑走しているかのようなスリップの連続に、ニコラスは苛立って怒鳴った。
こうも左右に激しく揺れ動いては、狙いをつけるどころの騒ぎではない。乗り出した窓から振り落とされないようにするので精いっぱいだ。
とはいえ、運転手の方も必死である。
「お前なんでそんなに運転下手なんだ、ロシア人だろ!? 雪道慣れてんじゃねえのかよ!」
「引きこもりは車なくても生活できんだよっ、ネットとPCがあれば十分だっつーの! つーかここ、マジで融雪剤ひとっつも撒いてねえんだな!? スタッドレスにチェーン着けてても滑るとか初体験なんですけど!」
感心してる場合か、と言いたいところだが、このセルゲイの暴虐極まるハンドルさばきに理由がないわけでもない。
後背から凄まじい密度の銃撃を浴びているのだ。
これでもロバーチ・ヴァレーリ両家の構成員が乗り込んだ車両が、数台かわる代わる盾になってくれているからこの程度で済んでいる。
数分も浴びればスポンジのように穴だらけになってしまうのは必至だ。
ゆえになるべく弾を避けるため、左右に振れながら走っているのだが……生憎この碌に整備されていない雪道では、非常に相性の悪いドライブテクニックだった。
巻き添えを恐れて住民が加勢しないだけまだマシである。
不意に、後部座席で弾倉交換をやっていたペレスが、前部座席へ身を乗り出した。
「ナズドラチェンコさん、あの道に入ってください!」
「なんて!?」
「あの道ですっ、800メートル先の交差点を右!」
ええい、と呻いたセルゲイがハンドルを切る、が、遅い。
時速60キロを超える速度でカーブに突っ込んだ車は、脇に申し訳程度に避けられていた雪山――ではなく、溶けては固まるを繰り返したおろし金の如き氷の壁――に、接触した。
ガリガリ、という嫌な音を立てて、側面ボディを削りながら、車はドリフト走行で曲がっていく。防弾仕様のシボレー・シルバラードで助かった。
「馬鹿野郎、俺の顔面を削る気か!?」
間一髪で首を引っ込めたカルロが青筋を浮かべて怒鳴った。
セルゲイが「男前になっていいだろ!?」なんてぬかしたもんだから蹴りまで入った。
だがここで幸運の女神が二回、微笑んだ。
一つは氷の壁に接触したことで減速し、タイヤがコントロールを取り戻したこと。
二つはセルゲイにつられて加速していたシバルバの追手の先頭車両が、曲がり切れずに氷の壁に激突し、そこに数台が玉突きしたことだ。
セルゲイが歓声をあげた。
カーブを抜け、直線に入る。
それを察したニコラスとカルロは、カーブを曲がって飛び出してくる追手めがけて、銃火を集中させた。構成員らの車両も、それに続いた。
幾重にも重なった砲火が、カーブを抜けたばかりの追手車両に殺到する。
一台が運転手を失って脇道に逸れ、もう一台は避けようとした拍子に隣の車にぶつかって、派手に一回宙返りをして後方へ転がっていく。
それらが道路を塞いで壁となし、後方車両が慌てて急ブレーキを踏むもスリップで無効化され、次々に衝突していく。
セルゲイが喜色満面に拳を振り上げた。
「いよっしゃあ! ちょいヤバかったけど結果オーライ! ……部下ついてこれてっかな?」
「少なくとも、うちのもお前んとこのもお前より遥かに運転上手いから問題ねえよ。ったく」
やや覇気に欠ける悪態をついたカルロが、げっそりした顔で座席にもたれた。
一方、ニコラスは後方、追手の事故車両が吹き上げる黒煙をじっと見つめていた。
ようやく諦めてくれたか。
などと、思ったのがいけなかった。
黒煙が一瞬、ぶわり、と盛り上がり、水面から顔を出すが如く、追手車両のヘッドライトが飛び出す。
「まだ追ってきてるぞ!」
「嘘だろおい!?」
「ちょっと優しくしただけで勘違いするメンヘラ女かよ、クソッ」
束の間の休息すら邪魔されたカルロが不機嫌そうにシートから背を離す。
どこか顔色の優れないペレスが、口元を押さえながらまたも前方を指差した。
「この先に分岐があります、私の合図で左車線に入ってください! 4番地への直通路です!」
「バッカお前、一等区じゃねえか! シバルバの根城に飛び込めってか!?」
「そのシバルバが絶対に立ち入らない場所があるんですっ、最近ですけど!」
「どこ!?」
「皆さんが最初に入ったとこですよっ、覚えてないんですか!?」
ついに自棄になったのか、ペレスは必至の形相で怒鳴った。
「皆さんが野犬に追い回されたあの廃病院ですよ、あそこへ向かってください! なぜかあそこだけは、シバルバの人間は入ってこないんですっ」
***
「……本当に入ってこなかったな」
寒空に呆然と呟いたニコラスの言葉は、全員の心情を代表していた。
あれほど執拗だったシバルバの追手が、この廃病院一キロ範囲内に入った途端、急に減速してUターンで引き返していった。あたかも獅子の縄張りへ入ることを拒むジャッカルのように。
「考えられるとすれば、ここが『トゥアハデ』の敷地内だから、とかだが……」
「けどあのシバルバが余所者に易々と土地差し出すかね。入られんのも嫌がるのに」
カルロとセルゲイが訝しみながらも構成員らと共に周囲を警戒する。以前より雪が深いとはいえ、野犬襲撃の可能性がゼロになったわけではない。
一方のニコラスはというと、セルゲイの悪逆非道な運転に耐えきれず、降りた直後に吐いてしまったペレスのために、ミネラルウォーターをナップザックから取り出していた。
「大丈夫か」
「何とか……」
濡れた口元が冷たかろうと、ニコラスはタオルも取り出した。
その時だ。
タオルを取ったその下、ナップザックの奥で、光るものがある。
ん? と思って手に取れば、それはスマートフォンで。
――やっべえ……!
凄まじい量の着信が着ていた。すべてアンドレイ医師からだ。
そういえば、折り返し連絡すると言ったきり、色々な出来事が重なって、すっかり失念していた。
慌ててかけ直せば、ワンコールも鳴りやまぬうちに通話は繋がり、
『遅いこの馬鹿者! この一大事に、どこをほっつき歩いているのかね!?』
案の定、アンドレイ医師の凄まじい怒声が耳をつく。
ニコラスは心から詫びながら、弁明を試みた。
「悪い先生、ちょっと異常事態が重なって」
『そっちが異常事態ならこっちは緊急事態だ! あの娘はどこだ、ヘルハウンドはどこにいる? ちゃんと一緒にいるんだろうな?』
「いや。あいつならロバーチ・ヴァレーリの連中と、15番地からシバルバ領を抜ける予定で――」
『何だと、なぜ一人にした!? 今からでも遅くない、何がなんでも合流するんだ! そうでないとすべてが手遅れになるぞ!』
尋常ではない剣幕に、ニコラスの思考が凍りついた。
数日前の、雪がちらつく暮合に。
自分の手を縋りついて、死なないでねと懇願したハウンドの姿が、目の前に浮かんだ。
『ヘルハウンドは『鍵』ではない、彼女こそが『失われたリスト』そのものだ。うなじだ。彼女のうなじ皮下の頸骨近くに、生体マイクロチップが埋め込まれている。それが『失われたリスト』の正体だ!』
一週間ほどお休みを頂きます。
次の投稿日は5月10日です。




