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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第1章 ここは私の楽しい異世界
9/73

間話 暗殺メイド

 長い髪、というのは役に立つ。

 銀色の髪を黒に染めて、三つ編みに編む。

 

 片眼鏡は邪魔なので外し、瞳の色を変える眼鏡型の魔具で色を整える。

 途端に今まで感じていた頭痛が酷くなり、視界が揺らぐ。

 

 皇城にある主人の住む館から、ブタ小屋の伯爵邸までは距離にして1キロ。

 2年前、第一皇女から暗殺依頼を受けた時に貰った給仕服のロングスカートの中にナイフを隠し、コートを羽織り優雅に歩く。

 遠距離狙撃で暗殺することもできたが、完全犯罪のシナリオを描いた人物からのお願いは、伯爵家のメイドによる殺害だった。

 

 疑り深いブタを油断させるまで2年の歳月がかかった。

 伯爵邸の中の見知った顔に会釈し、ブタの部屋に入る。


 瞬間、身に余る宝石で飾り付けられたブタは何をされたのかもわからずに絶命。

 返り血を浴びてしまったのは、腕が落ちたせいなのか、それとも主人に本当の私を見て欲しかったからなのか。

 盗聴器に主人の寝息を感じながら、目を伏せる。

 

 このような事をしているとわかれば失望されるだろうか。他人の血で染まったこの両手で奉仕することを、主人は認めてくださるだろうか。

 ……それでも私はあなたのお役に立ちたい。

 

 窓から身を投げ、第一皇女が手配した馬車にて主人の館へと帰還する。

 

 自室に戻り、眼鏡型の魔具を外して片眼鏡をつける。

 頭痛がやわらぎ、いつもの鈍痛に変わる。


 

 今日でこの給仕着ともお別れです。

 特に愛着もない上に血で汚れてしまったので捨ててしまいましょう。


 脚に留めたナイフを取ろうと、ロングスカートをたくしあげた時。

 ――ガチャリ。

 不意に扉が開きました。


「うっひょー! レイの部屋潜にゅ……!? えっ、レイ!?」

 

 

 少々気が緩んでしまったのでしょうか、自室の鍵をかけ忘れていたようです……。



♢♢♢


 ――時は少し遡り。

 父から呼び出しを食らったすぐ後のこと。



「アリアーデ様、私、エレナ・レビュートは本日付で退職することとなりました」

「えっ、なんで?」


 突然エレナから退職を告げられた。

 思わず横にいたレイを見上げると、こそっと耳打ちしてくれた。


「例のゲーム布教費用が足りませんでした。そこで侍女や料理人、庭師は全て解雇し、姫様の館の運営費用は全て貯蓄に回しております。姫様は1人で何でもご支度されるので可能な事案でした。他にも不要な物があればおっしゃってください」


 処分します。と……。

 たしかに、そんな事を言った事があったような、なかったような?


「うーん……。エレナ、今までありがとう」

「アリアーデ様……! こちらこそ、沢山の経験をありがとうございました!!」


 どことなく嬉しそうに去って行ったエレナを見て、これでよかったんだと思うことにする。

 お金は大事だしね。

 って言うか、どこまで進んでるんだ?


「レイ、どこまで布教活動が進んだの?」

「現在、姫様が布教したいゲームが見つかりましたらすぐにでも稼働できるように、大量生産するための工場をいくつかピックアップしております。ですが、費用の面で厳しい状況にあります」


 さすがレイ。

 まさか生産工場を稼働させる気でいたとは……。

 だけど私の個人資産ではなかなか道のりは長そうだね。


「お金かぁ……金策苦手なんだよねぇ」

 

 オンラインゲームでも、戦闘は得意だけど生産職は全く出来なかった。

 そのせいで常にゲーム内通貨の所持金は数千円の戦闘民族だった。

 懐かしいな……だからこそ、お金の概念がないバトロワFPSは私にとって天職みたいなものだったのに。


「こちらが現在の所持金額と、何も金策をしなかった場合の貯蓄予想額をまとめた書類になります」


 レイが渡してくれた書類にはグラフが書いてあり、工場を購入できる金額が貯まるまで10年くらいかかりそうだった。

 そして、2枚目の紙にはおすすめの金策が戦闘系、内職系と続き、最後にパトロンを見つける事はおすすめしないと書いてあった。


「パトロン見つけた方が楽だと思うけど……」

「決していけません」


 被せ気味に言われてしまったが、紙には"諸事情により不可能"と書かれていて、なんでダメなのかが書いていない。


「まぁ、レイだって私の性格的に元から他人に頼るつもりはないってわかってるから、この紙を用意してくれたんでしょ?」


 この金策一覧はよく出来ている。

 私が下町に降りて身分を偽って魔物を狩って素材を得る方法まで書かれているから、この通りすればうまく行くのだろう。

 

「申し訳ありません。お手伝いできれば良いのですが……」


 レイが申し訳なさそうに頭を下げている。

 あれ? 金策も一緒にできないなんて、レイにしてはありえなくない?

 もしかして……レイは私に内緒で借金でもこさえているのでは?

 申し訳なくて私に言えないのだとしたら……。


「全然いいよ! まぁ、誰にも言えないことのひとつやふたつあるよね!!」

「?」


 よし、となれば今夜みんなが寝静まったらレイの部屋に侵入していくら借金があるのか確かめよう!


 ♢


 おっといけない、寝過ごすところだった……。

 いつのまにか寝ていたようで、月が照らすベッドの上、目をこすりながらそろりと抜け出してレイの部屋へと向かう。


 私の寝室は3階。

 レイの部屋は1階にある。


 レイのことだからどうせすぐ見つかるだろうけど、その時は1人は怖いとか言って誤魔化そう。


 そろりそろりと階段を降りて行く中に、切れ味の良さそうな鉄線を見つけた。

 ふむふむ。セキュリティーは万全だね。

 と言うか、なぜ私に許可なく罠を張るんだ……。

 


 そんなこんなでレイの部屋の前までやってきたが、普通、部屋に鍵をかけるよね……。完全に失念してた。

 試しにドアノブに手をかけてみる。

 

 ……な、何!?

 かかってない……だと!?


「うっひょー! レイの部屋潜にゅ……!? えっ、レイ!?」


 ドアを開けると、血まみれのメイド服に身を包んだレイが、ちょうどロングスカートをたくしあげて脚のベルトにあるナイフを外そうとしているところだった。

 月明かりが窓から入ってきて、まるでどこかの映画のワンシーンみたいな……。


「いかがなさいましたか?」


 レイの至って平穏な声。

 うーむ、今日は仮装大会でも開かれていたのか……?


「だとしても、メイド服とはチョイスが渋いな……」


 静かに扉を閉めて、見なかったことにする。

 借金のために女装……?

 たしかに、普段の長い髪があれば女装なんか容易いし、暗殺とかするならやりやすいよね。

 ん? 暗殺……?


 ダーツが上手い。

 脚にあった血のついたナイフ。

 女装の返り血。

 あまり語りたがらない身の上話。


 ふむふむ。

 ……………………。


 もう一度レイの部屋の扉を開けると、今度は執事服を着たレイがいた。

 

「ふむふむ」


 もう一度扉を閉めて、考える。


 と言うことは、私も暗殺対象なのでは?

 見たからには殺されるってこと?

 だからみんな使用人がいなくなったのか!!


 天才的な閃きに、身震いする。

 であれば先手必勝!

 仲良くなったのに悲しいけれど、まだ死ぬわけにはいかぬ!!


「天誅!」


 扉を開けた瞬間に、レイに向けて風の刃を魔法で飛ばす。

 すると、レイは驚きながらも持っていたナイフで全て弾いてしまった。


 見切られた!?

 

「私に魔法はあまり得策とは言えません……。姫様が込めた魔力で闇夜でも軌道が見えやすくなります」


 レイが右目の魔眼を指差す。


「魔眼……」


 やっぱり、近接戦闘を鍛えないと戦えないのか……。


「くっころ……!」 

「やはり、姫様は怒っていらっしゃるのですね……。黙っていて申し訳ありません。ですが、姫様には不必要な情報ですので……」


 頭を抱えて降伏のポーズを取っていたら、近づいてきたレイしゃがみ込んで私の目を見て話をしてくれた。

 あれ? もしかして暗殺じゃなくて、やっぱり仮装大会だったのか……?


「私に不必要な情報はないよ。と言うより、必要か不必要かは私が判断する。だからレイは全ての情報を私に教えるだけで良いから」


 言いたくないことは言わなくてもいいけど、私に関係するなら教えて欲しいよね。

 羽目を外すパーティ大好きだし。


「……申し訳ありません。その……姫様の暗殺を企てていたラウルポール伯爵を排除しておりました。予想以上に時間をかけてしまい、出来損ないの私など……姫様のお側にいる資格がございません」


 伏目がちにレイはそう言った。

 まるで雨に濡れた子犬のようにしょんぼりしている。


 まさか、暗殺してきた帰りだったとは……。

 誰だよ仮装大会とか言い出したの……恥ずかしい。


「よしよし。……あのね、ひとつ言わせてほしいのは、レイが出来損ないだとしたら、レイに勝てない私はそれ以下だし、今後レイの事を悪く言う人がいたら、半殺しにするから。もちろんレイも含んでるからね?」


 レイの頭を撫でながら、思ったことを言う。


「あと、レイより私の方が強くなるのは確定事項だから、早くレイの全部を教えて」


 主人と言うのはきっと、従者を守れて初めて主人と名乗れるような気がする。


「姫様……私に失望しているのではありませんか?」

「はぁ。レイが1番私の事をわかってると思ったんだけど……言う事があるとすれば、私を殺そうとしてるやつは私が返り討ちにしたいってことかな……あと人殺しは良くない」


 不安になってきた。

 レイ、ちゃんと証拠隠滅してきたのだろうか。

 あれ? もしかして、逮捕される?


「私がレイを守らないと……え、正当防衛にならないかな……」


 私がおろおろしていると、レイが少し笑った。


「ふっ。いえ、大丈夫です。証拠は残っていません。架空の人物で処理されます」

「なるほど……」

 

 それなら良かった。

 ……良かったのか?

 まぁいいや!!

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