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間話 呼
――夢を見た。
私がハンスに食べられて、腑に落ちていく夢を。
抽象的だけど、現状を表すのにぴったりな夢だった。
私はそこで眠っていて、少しずつ溶けていく。
少しずつ、少しずつ私を剥がされて、最後には消えてしまう。
――目が覚めた。
ここはハンスの教師用の宿舎だった。
ハンスは椅子に座って本を読んでいる。
私が塔から帰る際にふらついたから、ハンスは心配して私をここへ寝かせたんだった。
私はゆっくりと起き上がって、ハンスに近づく。
彼は、そんな私を見て本を読むのをやめた。
「悪い夢でも見ましたか?」
私は頷く。
ハンスが右手を差し出してきた。
私はその手を取って、指を絡めて、ハンスの膝に座った。
体を預けてハンスの鼓動を聞く。
いつものハンスの匂いで落ち着く。
そういえば、ハンスは私を果物に例えたことがあった。
私はとうとう収穫されて、食べられてしまったのだろう。
お皿に乗った私は美味しい果物だっただろうか。
ねぇハンス。
あなたの愛した私はちゃんと残ってる?




