間話 招待状
間話 招待状
ドミニクは目の前にいるハンスに困惑していた。
「どうしてお前がここにいる」
「招待状をお持ちしました」
そう言って、ハンスは恭しく黒い手紙をドミニクに渡した。
ハンスをちらっと確認し、中身を開ける。
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招待状
ドミニク様。
この度、アリアーデ・クランツェフトの将来の伴侶を決める催しを執り行う運びとなりました。
当人に勝利した者のみ、生涯を共にする権利を得ます。
どうか、その愛を証明してください。
――――
「……僕は行かない。どうせ一人勝ちだろうしね」
「おや。これを見てもそう言えますか?」
そう言って渡してきたのは、金色の指輪だった。
一目で魔具じゃないとわかった。
これは魔法だ。魔法で作った呪い。
懐から魔具の虫眼鏡を出して覗くと、効果がわかった。
特に、"四番目"の効果が面白い。
「へぇ……」
「私が負けた場合、殿下の前には二度と姿を見せないと誓いましょう」
ハンスの覚悟が見えた。
ただのお遊びじゃなさそうだった。
「いいよ。やる。僕の作った魔具は持ち込みしてもいいんだよね?」
「もちろんです」
それなら、絶対に勝てる。
「ちなみに、私以外の方が勝利した場合も、私は身を引きます」
「あはははっ! いいね、わかった」
ハンスが自滅した。
彼女を守るためだけじゃない。
奪い返してやる。
「このことは他言無用でお願いします。その方が――面白いでしょう?」
指を立てて、シーっと唇に当てたハンスは、霧のように消えていった。
♢♢♢
今回の戦いに使える戦力をレイは持っていた。
元々アリアーデのために用意した駒だったが、ここに来て利用価値が生まれた。
戦力リストを纏めていたら、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
扉を開けたのは、ハンスだった。
「お久しぶりですね。調子はどうですか?」
「問題ありません。……もう私が必要になることはないと思いますが?」
「いえいえ、とんでもない。見たでしょう? あの指輪を」
レイはあの指輪の効果を思い出す。
ハンスのやりたいことはわかったが、そもそもレイには参加する理由がなかった。
なぜなら、レイはもう永遠にアリアーデの執事だからだ。
「私は伴侶ではなく、従者として姫様に仕えていきます」
「私を止めれるとしたらどうしますか?」
ハンスは黒い招待状を差し出してきた。
そう言うことか。とレイは思う。
「わかりました。死力を尽くしてあなたの野望を阻止してみせます」
これが最後の戦いになるだろう。
――同じ魔力になったとして、私は姫様を越えられるのだろうか。
ハンスがいなくなった部屋で、レイはクスリと笑う。
ああ、本当にゲームと同じ展開になったのだな、と。
意味も、立場も、目的も全て違うけれど、アリアーデはきっと喜んでくれることだろう。
♢♢♢
ルヴィアは森の中にいた。
どこにも帰りたくなかった。
動物達を支配して、この環境を支配して、遊んでいた。
「あなたが一番自由ですねぇ」
木の上から突然話しかけられたルヴィアは、驚いて尻餅をつく。
「な、なんでお前が!」
「ククク……すみません、やはりまだ熟してない果実は仕込み甲斐がありそうで……困りました」
うーん、うーん、と唸っているハンスが妙におかしく見えた。
何をしに来たのか、さっぱりわからない。
「アリアはどうしたの?」
「殿下にあげるには勿体無い……」
話が通じない。
無視して歩き始めると、ハンスが後ろからついてきた。
しばらくして、ハンスの足が止まった。
「三日。三日であなたを仕上げますから、覚悟してください」
!?
ルヴィアは突如として決まった今後に、抗えない恐怖を感じた。
♢♢♢
リーンはラビットを躾けていた。
「こんなんじゃ、アリア様は満足しません!! 速いのは足だけですか!? 手を動かしてください!」
突然アリアーデに任された皇帝の仕事。
しかも数日で戻ってくると言われたのに全然帰ってこなかったのだ。
開戦も近いのに、手も足も完全に足りなかった。
「神が帰ってきました」
皇城が騒がしくなったせいか、気配を感じたラビットが教えてくれた。
「アリア様が帰ってきた!? え!?」
そして目の前に転移してきたハンスに目を見開く。
「おやおや、この場合……どちらに招待状を渡せばいいでしょうか……」
何を言っているかわからないが、敵国の大将がこんなところに居ていいわけがない。
「不敬虔者が何用ですか?」
ラビットが腰の剣に手を当てた。
「招待状ですよ。そうですねぇ、神の伴侶を決める戦いとでも言えばいいでしょうか」
ハンスは黒い招待状をリーンに渡した。
なぜ私……? と言う疑問を飲み込む。
「そのような不敬な催しがあってはいけません。私が全員切り伏せます」
「まぁいいでしょう。この事を殿下に漏らせば殺します。その招待状を持っていれば、開催地へは自動転移しますので」
あとはよろしくお願いします。とハンスはリーンに言った。
だからなぜ私……? と言う疑問を飲み込んだ。
なぜならすでにハンスはいなかったからだ。
「アリア様ぁああああ!!!」
最終話まであと少しです。
と言いながらまだ書き終わってないので、この土日でなんとか書き切りたいです。
長年お待たせして大変申し訳なかったです。




