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7-8 構築

「呑まれないで下さい」

 

 ハンスに抱きしめられている、と感じた時には戻ってこれたのだと安心した。


 あのままハンスの感情に揺られて混ざっていくのも悪くないと思ってしまったけど、私は伝えなくちゃいけない。


「……あのね。私、ハンスのことが好きなんだと思う。ハンスがいないと思ったら、怖くてたまらなかった。私は……結局ハンスに追いつくためにここまで来たんだよ」

 

 レイの時とはまた違った感情。

 ずっと彼に追いつきたいと思ってた。ずっと隣に並びたいと思ってた。

 それで追い越して、手を引いて、一人じゃないよって伝えたかった。


「私は愚かにも、信じていたのですよ。リアがこうして私を救うだろうと。……これであなたも、私と同じですね」

 

 彼の感情がまだ私に混ざってる。

 この満たされた感情に対しての不安。

 彼が私を壊したい理由。


 それでも私は彼の孤独を埋めたい。

 彼と戦わなくちゃならない。

 私が壊れないって証明するために。

 一緒に手を繋いで歩いて行くために。


 パチンと、ハンスが指を鳴らした。

 グラグラと地面が揺れる。


「その前に。ここから出ないといけませんね。……要は、世界を創ればいいのでしょう?」


 ハンスは私の腰に手を回して支えてくれた。

 平面だった世界が、球体になっていく。

 空が、太陽が、鳥が生まれてくる。

 

「……はは。勝てないなぁ……」


 私がここで出来ることはもうない。

 魔力の消費を促してハンスの体の崩壊を止める。

 ここまでは私の仕事。

 

 ここからはハンスの仕事だった。

 私にこの感情を教えるためだけに、魔力過多になって死にかけてるなんて。

 ほんと、馬鹿みたいだ。

 

 ……私を信じてくれてありがとう。



♢♢♢



 二人が眠ってから三日が経過していた。

 

 ルヴィアは膝を抱え、ドミニクの作業を眺めていた。


 初めてアリアが怖いと思った。

 いつのまにか、アリアーデはハンスと同じ域にいた。

 どうしようもない無力感が胸に残る。


 レイは何度目かわからないほどアリアーデの顔色を確かめていた。

 

「姫様の顔色が悪いです。このままでは、衰弱してしまう……」


 レイがここまで焦っているところは誰も見た事がない。

 

 ドミニクは不眠不休で作業していて、時々ルヴィアが疲労を支配して引き受けている。


「おや、皆さんお揃いで。少々失礼しますね」


 突然、ハンスの分身が寝ているハンスから出て来た。

 ハンスの分身はアリアに近付くと、アリアを抱き上げてハンス本体の隣に寝かせた。


「ハンス様! 姫様は無事なのですか!?」


 レイが分身に問いただす。


「無事か無事でないかで言えば、無事ですよ」


 そう言ってハンスの分身は、アリアーデとハンス本体の手を繋がせた。


「出来ればもう少し接触面は大きい方がいいのですが、まぁいいでしょう」


「ま、待ってください! 姫様に何が起こっているんですか?」


 そのまま消えようとしたハンスの分身をレイは引き留めた。


「魂が不安定なんですよ。繋ぎ止めてはいますが、このままでは肉体の方が持ちません。ですので、私が補助しています」

 

 レイはそれでも納得しない。


「姫様はいつ目が覚めるのですか……?」


「私と殿下は一ヶ月ここに入ったままの予定ですよ。魂の絆が深まった分、私の介入がし易くなりましたのでこれでも早い方ですが……中の様子であれば、もう彼が見れるようにしているのではないですか?」


 ハンスの分身は、ドミニクの方を見るとそのまま消えてしまった。


「はぁ、つくづく嫌になるね。どこまで知ってるんだか。これ、繋げたら見れるよ」


 ドミニクはケーブルをレイに渡してモニターに繋げるよう言った。

 ルヴィアがモニターを見やすい位置に持ってきて、レイがケーブルを繋ぐと、映像が映し出された。



 大きな街だった。

 巨大な建造物に整った街並み。

 道を走るたくさんの四角い乗り物。

 その賑わいは、この世界のものではなかった。


「え、アリアはどこ?」


 見慣れない服装に身を包んだ人々がたくさん往来していて、アリアーデを探せない。


「二人の魔力があれば、三日でここまでいけるんだ……。本当に規格外だよ」


 ドミニクは感心しつつ、アリアを探すためのプログラムを組み始めた。


「ルヴィア、コントローラーも繋げば視点移動できるから」


 そうドミニクに言われて急いでルヴィアはコントローラーを繋げた。

 レイも真剣にモニター内のどこかにいるはずのアリアーデを探している。



 一時間ほどアリアーデを探してあっちやこっちに視点移動したせいで、レイとルヴィアは画面酔いしていた。

 寝不足の体でやることではないと言うことで、二人は仮眠を取ることにした。


「ドミニクも休んだら?」


「僕はもう少しやるよ。みんな寝ると何かあった時に動けないし」


 ルヴィアの助けた女の子達十人も、秘密基地周辺の警備と買い出しなどの雑務をこなしていた。


「そう言って、寝ないつもりでしょ。あのさ、責任感じてるの? これはアイツが勝手に起こしたことだから、ドミニクは関係ないよね?」


 ルヴィアはなんとなく、ドミニクが自分を追い込んでいるように見えた。


「……アリアの気持ち、本当はわかってたんだ。けど、信じたくなくて知らないふりをしてた。もっと早く向き合っていれば、こんなことにはならなかったのに……」


 ドミニクは後悔している。


「はぁ。ほどほどにしなよ? 今ドミニクに倒れられると俺たち困るし」


「……わかった」


 ♢♢♢


 ドミニクが作業に戻ると、扉の外で声が聞こえた。

 しばらくすると、女の子がアジトの中に入ってきた。


「ルヴィア様! ……あれ、いない。ドミニク様、今街に出ていたサファイヤが、アリアーデ様を探す兵士に遭遇したそうです……」

 

「報告ありがとう、パール。一ヶ月ここで籠城となると結構厳しそうだね。最悪の事態も備えて武器は常に携帯してて。僕の兵器も配備しておくから、交代で見張りをお願いするよ」


「かしこまりました!」


 今の一番の敵はアリアーデの兄であるカイネル皇太子殿下だった。

 アリアーデを血眼で探していて、ここが見つかるのも時間の問題だった。


 リーンの姿が見えないのも気になる。

 ラビットは……何しているんだろう?



♢♢♢



「ラビット様、どうしてここにいるんですか……?」


 リーンは捕らえられて牢屋にいた。

 そして、目の前の檻の中にはラビットがいた。


「神がここにいると皇太子殿下に騙されました」


 はぁ、とリーンはため息をついた。

 

 ラビットは愛されキャラだった。

 それは今でも変わらなかったが、リーンの心境はもう違っていた。


「いいかげん、アリア様を神聖視するのはやめたらどうですか? アリア様も困ってましたし、何より気持ち悪いです。檻に入ってる今の状況はとってもお似合いですよ」


「……リーン令嬢は変わりましたね。今の方が私は好きです」


 ラビットのことがよくわからない。

 ゲームの知識だけじゃ彼の心の変化はわからなかった。


「何言ってるんですか近衛騎士の役目も果たせずこんな時に捕まって、アリア様の役に立ててないじゃないですか! もう少し頭使ったらどうですか? 私がラビット様なら、もっとアリア様を陰でお支えしてますよ!」


 リーンは今までの気持ちを全部言った。

 リーンの想っていたラビットではない、今のラビットへの率直な気持ちだった。


「あなたも私と同じ信奉者……神の代弁者……?」


「はぁ!? 本当に頭がおかしくなったようですね! 私はアリア様推しですけどラビット様と同じではありません! なんでこんな人のこと好きだったのか、昔の自分を殴りたいですよ!」


「でしたら私を殴って下さい。そうすれば共に神を賛美できますよね?」


 リーンはとうとう呆れを通り越して怒っていた。


「わかりました! 殴ってやりますよ! その腐った根性からアリア様への忠誠の仕方を叩き込みますからね!」


 どうなっても知らないと、リーンはそう思った。

明日から不定期更新になります。


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