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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第3章 少しずつ狂う世界
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7-4 ハローワーク

 私のデビュタントの日がやってきた。

 結局、あれから寝室に戻ってもハンスはいなくって、呼びかけても返事がなかった。

 ハンスの住む東塔にも行ったけど、扉には鍵が掛かってた。


 今日は朝からリーンとレイが気合いを入れて、私を粧し込んでいる。

 貴族の嗜みも、所作も、言葉遣いも全部ハンスに文字通り叩き込まれているので、私は完璧な皇女だった。


 開催時間は夜からだが、リンルードやレガリウス、バーバリーの旧王侯貴族達はもうクランツェフトの別荘や皇宮に来ているので、おもてなしの準備のために朝早くから皇宮は騒がしかった。


 レイが私の髪を緩やかに編み込んでいく。

 

「ねぇ、レイ。会食とダンスが終わったら参加者を募ってビリヤード大会しちゃだめかな?」


「姫様の一人勝ちだと思いますが……。ゲームをやられるのなら、カードゲームではどうでしょうか? 賭け事でしたら参加者も多く集まるでしょうし、運の要素もありますので」


「それいいね。じゃあその予定で行くからよろしく!」


「かしこまりました」


 大人達と遊ぶのって元々好きなんだよね。

 親戚の集まりとかでも大人達相手にゲーム勝負仕掛けてたし、オンラインでも大人達が多かったからね。


 まぁ、デビュタントを親戚の集まりと似たようなものと思ってるのは私だけかもしれないけど……。


「リーン、今日はリーンも参加するんだから、ちゃんとリーンも可愛くしなきゃ駄目だからね」


「はい! アリア様の専属デザイナーとして、恥ずかしくない格好をしてきます!」


 リーンは私のドレスの最終チェックをしながら手直ししている。

 いつもは私が魔法で服を着てたから、リーンはいつもより嬉しそう。


「さて、参りましょうか」


 私は扇子を片手に持ちながら、優雅に皇帝のいる皇城へと向かった。



「お父様、ご機嫌よう」


 完璧な所作で父に挨拶した。


「ああ、アリアーデ。ずいぶんと見違えた。あの頃が懐かしいな。やはり、レガリウス卿に教育を任せたのは間違いではなかった」


 ……授業と称して何が行われてるか知らないからそんな事が言えるんだよ。

 まぁ、効果はてきめんだけどね。


「……わたくし、お兄様に挨拶がありますのでこれにて失礼致します」


 あまりガミガミ言われる前に退散する。

 もちろんお兄様に挨拶はしない。

 絡まれると面倒だし、現状ハンスより厄介すぎる。


「レイ、見張りをお願い。この東屋に誰も通さないで」


「かしこまりました」


 私は花園にある東屋にやってきていた。

 この1週間私はハンスを探そうとあの手この手で頑張っている。魔眼が使えないせいで、なかなか居所が掴めない。


 だがその結果、集中すれば魂の繋がりを辿れるところまでいっていた。


 ……いた。

 小一時間集中して、ようやく見つけた。


「レイ、移動するよ。皇宮の端っこにいる」


 ハンスは、皇宮の正面玄関とは真反対の城壁の上にいた。

 魔法があれば空を飛んで行くけど、こんなことで魔法を使いたくないから階段を歩いていく。


「ハンス。やっと見つけた」


 ハンスは両目を閉じて寝転がって、穴を開けた空間に片手を突っ込んでいた。


「……何してるの?」


 ハンスは片目を開けて目だけ動かして私を見る。


「……お綺麗ですね」


「なっ、なんて……?」


 ハンスが私を褒めた?

 これ、偽物?

 大丈夫? 中身入ってる!?


「おや、面白い感情をしていますね。殿下は今日、世界で一番美しいですよ」


「は、はぁ!? な、何言ってんの!? あ、ありえないんですけどっ」


 おかしい。

 絶対おかしい!

 ハンスがこんな事言うはずない!!


「そんなことはどうでもいいんですが、まだ夜会まで時間がありますが何の用ですか?」


 くっ!

 どうでもいいんかい!!


「……どうして今まで私から逃げてたの?」


「私が逃げていると思っていたんですか? 執念深いですねぇ。私は自由の時間を過ごしてはいけないんですか?」


 ああ言えばこう言う……。

 ここで折れてはいけない!


「私の家庭教師のくせに、自由時間があると思ってるの? それに、処分を受けるってどういうこと!? 領地に帰るつもりなの?」


「もうそろそろ帰るのもいいかもしれませんね。余生はゆっくりと魔物を狩って過ごすとしましょう」


「ちょ、なんで引退風なのよっ! と言うかやっぱり2人分の魔力なんて無理なんでしょ?」


 さっきから、空間経由でどこかに魔法飛ばしてるみたいだし、絶対そうだ。


「こちらに来て私が何をしているか見てはどうですか?」


 ハンスの隣に私も寝転がって、空間の中を覗く。

 

 どこかの領地に魔物が攻め込んでるのを、ハンスは空中から魔法を撃ち落としてる。

 まるでシューティングゲームみたい。


「あ……」


「ようやくわかりましたか? 普段なら転移で直接行くのですが、殿下のせいで私は皇宮から出られません」


 ハンスは自分の領地を守ってるだけだった。

 そこは……腐っても貴族なんだね。


「一言余計ですよ。私は責任感はある方ですからね。殿下と違って」


「一言余計だよ!! さっきから心の中読まないでよ!」


 ばーかばーか!

 何よ、心配した私が馬鹿みたいじゃん!


 ……ほんとに大丈夫だよね?


「そういえば、使用料を支払っていなかったですね」


 なんのこと?

 ……ってああ、魔法のことか。


「払ってくれるの?」


「ええ。私が差し出せるものと言えば、領地に付随する金品ほか私の著書の印税、まだ未発表の魔法技術書くらいでしょうか」


「え、ハンス本出してたの!?」


 もしかして、授業で使われてた論文とかはハンスが書いたものだったりする?

 だとしたら偽名使ってたな……?


「そうですよ。私がただ遊び歩いているとでも思ってたんですか?」


 ぐはっ。

 その言葉は私に刺さる……。

 私は遊び歩いていましたとも。

 それはもう大胆に。


「ごめん……戦いにしか興味ないかと思ってた」


「やはり、まだ家庭教師は続けたほうが良さそうですね。このままではこの国に1人、浮浪者が生まれるところでした」


「ニートにだけはならない! 私だって出来る事……出来る仕事ってある……?」


 え、うそ?

 私このまま行くと、ただの魔力が高くて戦闘ができるだけの皇女になるってことじゃん……。

 皇帝はお兄様がやるだろうし、私は何をやればいいんだ……?

 

「つくづく皇女に相応しくない方ですね……」


「どうしよう……私も魔物狩りに行こうかな……」


 私だって皇女になりたくてなったわけじゃないし、身分も中途半端に高いから傭兵とか冒険者とかになれないし……。


「魔物狩りは私の仕事ですので他を当たってください」


 えっ!

 そうじゃん、私もハンスと似たようなスペックってことは、職業被るし商売敵ってことになる!?


 今まで強くなることしか考えてなかった弊害がここに来て出ている……。


「終わった……。無職コース一直線だ」


「飼ってあげましょうか?」


「な、なんでそうなるのよ! 不敬ですぅー! だいたい、私の魔法の使用料の話だったじゃん!」


 いつのまにか話が将来の不安にすり替わってた!


「ですから、私が殿下を飼い慣らして差し上げますよ。3食昼寝付きの高待遇です」


「就職先の斡旋だとしても……そこに就職したら負けな気がする……人間として」


「ククク……冗談ですよ。殿下は金銭が必要と言うわけではないでしょう。使用料は私の体で支払いますよ」


 おお!

 ハンスさん1日使用権!?

 これまでの鬱憤を晴らすチャンスじゃないですか!


「言ったな!? 楽しみにしてて! すっごいキツイやつ考えておくから! レイ、帰るよ!」


 私は飛び上がって階段を駆け降りた。

 何してやろうかな!?


「姫様、今日のドレスは汚してはいけませんよ……!」


 あ、そうだった。

 あとでリーンに浄化魔法かけてもらお。

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