間話 なんの色が好き?
ハンスの実家。壊れていた旧レガリウス皇城は改築が終わり、ハンスが領主になる頃には領主が住むに相応しい城へと変貌していた。
先日、アリアーデとレイがこの城の前を通って行ったのをハンスは見届けた。
「また、魂が濁りましたね。リア」
魂の色。
生まれ持ったそれは、本来覆ることがない。
ハンスはかごに入れて逃げられないようにしたリガリットに指を近づける。
すると、リガリットはハンスの魔力を吸って金色に光った。
しかし、例外もある。魂の色が変わる条件は、魂が白色であること。それとは別に、絶望するほど黒く濁っていく傾向にある。
ハンスは鏡に映った自分を見た。
元の魂が見えないほどに黒く、淀んでいる。
あなたもわかっているのでしょう、リア?
レイはあなたにとって最初の毒……だからこそあなたの魂は濁り始めている。
それでもその絶望の可能性を抱えて私に向かってくるのですね。
心の安寧を捨て、この地に縛られ、私に縋るしかないあなたが……とても――
「ああ、リア……より深く、壊れて下さい」
♢♢♢
――この身は姫様のために。
レイはもう迷わない。
アリアーデに愛されていると言う証があるからだ。
1ヶ月の休暇が明けてから、ハンスの授業は変わった。
文献にすらない新しい魔法の研究と考察。
アリアーデは楽しそうに議論していた。
普通ならば、楽しそうに授業を受けるアリアーデに従者として安堵を覚えるべきだろう。
しかし、ハンスは確実にアリアーデの心を壊すための段階を踏んでいる。
どこまでアリアーデは気付いているだろうか。
レイの魔眼ですらアリアーデを追い詰めるための手段でしかなかったと、右目から見えるアリアーデの魂が物語っている。
そして、それでもなおハンスに喰らいつくアリアーデは、一体どれほど渇いているのだろう。
ふと思う。
もしもハンスがこの世からいなくなったら。
最大の敵であり、目標であり、遊び相手であるハンスがいなくなってしまったら、アリアーデは正気を保てるのだろうか?
――その瞳は空虚を映すようになるのではないだろうか。




