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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第3章 少しずつ狂う世界
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6-2 クレバンス伯爵家

 ハンスは宣言通り途中で馬車を降りていった。

 旧レガリウス帝国領は、現在レガリウス領と名を変えハンスが管理している。

 魔物が魔境から出てくるため、領地は最低限人が暮らしていけるだけの豊かさしかない。

 ここより東は人が住めない土地であり、レガリウス領は魔物を食い止める防波堤。

 クランツェフトとの戦争で負けた後はほとんどの貴族が逃げ出し、お金で雇われた傭兵や兵士が国境を守っている。

 もちろん、時々ハンスも顔を出して魔物を殲滅して士気を上げているそうだ。

 そしてクレバンス伯爵家は唯一と言っていいぐらい、レガリウス領の貴族だった。

 

 伯爵家に到着した私は、そこまで大きくない屋敷だが、よく手入れされている敷地を見て気を引き締める。

 出迎えてくれたのは、レイのお父さんだった。


「ようこそ、おいでくださいました。クレバンス伯爵家当主のジノ・クレバンスと申します」


「こちらこそ、お出迎えありがとうございます。第二皇女、アリアーデ・クランツェフトです」


 ジノの顔は傷だらけであり、武人として隙がなかった。

 そして、その両目には魔眼があった。


 屋敷の中へと案内され、応接間に入るとすでに女性が待っていた。


「初めましてアリアーデ皇女殿下。私はリリー・クレバンス。レイの母です。まずは座ってください」


 筋骨隆々で眼帯をしたなかなかに戦場が似合いそうなお母さんだった。

 お父さんは黒髪だったから、レイの髪はお母さん譲りだったのか。

 ソファに座って夫婦を見ると、なんだかお似合いだなと思った。


「初めまして。突然お邪魔して申し訳ありません」

「要件はレイから聞いております。ただ……レイは今、前線におりまして。帰るのは当分先かと思われます」


 なんとなく予想はしてたけど、前線か……。


「リリーさん、ジノさん、私はレイの面倒を一生見るつもりでここへ来ました。もちろん使用人としての腕を買ってのお話です」


「あの子にはもう魔眼がありません。皇女殿下のお役には立たないでしょう」

「魔眼を失くすような失態は、従者としてあり得ない」


 違う、と出かけた声を抑えた。

 おそらくレイは、魔眼を失った理由を両親に偽っている。


「そう、なのかもしれませんね。ですが、私の強さはお二人ともご存知のはずでしょう? 武力は必要ありません」


「主人に庇われる従者など、クレバンス家の恥です」


 リリーの有無を言わせない声に、ああ、私とは価値観が違うなと思ってしまった。

 厳しく育てられたんだね、レイは。


「殿下がレイにこだわる理由がわかりません」

 

 ジノが腕を組みながら、疑問を投げかける。

 レイじゃなきゃダメな理由。

 そんなの、決まってる。


「レイは私の家族と同じです。私がレイのことを知り尽くしているように、レイもまた私を知っている。政務をする上でも効率良く仕事が出来ます」


「それならば他の者でも務まります。従者に家族の情など、持っていては足元を掬われる」


 魔眼を持つレガリウス帝国がなぜ戦争で負けたのか。

 それは身内の裏切りだ。

 クレバンス伯爵家は常に裏切りの可能性がある状況に身を置いていたのだろう。


「いいえ。だからこそ、強い繋がりが必要だと考えます」


「私がレイに殿下を裏切れと言えば、レイは裏切るでしょう。そう育てましたから」


「そんなこと……」


 ない……と、思うのに。

 レイの泣きそうな顔を思い出してしまった。

 あの時のレイは、苦しそうだった。魔眼を持った今ならわかる。あれは私のためを想った裏切りだった。

 ああでもしてくれないと、私は魔眼を受け入れることなんてなかったから……。


「今日はひとまずおやすみ下さい。部屋を用意してあります。ララ、来なさい」

「はぁい」

「殿下を案内しなさい」


 リリーに促されるまま、私は応接間を出た。

 着いてきたのはレイとよく似た、けどレイとは違い人懐っこい黒髪の女性。レイの姉のララだった。


「アリアーデ様、こちらですよ」


 やけに距離が近いな……。

 猫みたいにこちらの様子を伺ったりしている。


「本当は私がアリアーデ様の側仕えになる予定だったんです。ほら、同じ女性ですし、歳は10歳違いますけど……レイよりも腕が立ちますよ?」


「だからなんですか?」


 少しイライラする。

 まるで、レイを諦めろと言ってるみたいで。


「いえ、レイから言われましたから。姫様をよろしくお願いします。と」


「レイが……?」


 どうして、そんなこと。


「あ〜、レイってば……本当に従者としての役目を投げたんですね」


 私の様子を見てか、確信したように納得している。


「私なら、主人にそんなお顔をさせないのに」


「それは――」

「はい、ここがアリアーデ様のお部屋です。ごゆっくりお寛ぎ下さい」


 にっこり微笑んだララが扉を開けてお辞儀した。

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