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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第3章 少しずつ狂う世界
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5-5 透明な君へ

 レイは困惑していた。

 アリアーデの弱点が意外過ぎたのもあるが、それ以前にもしも自分がハンスと同じような事をアリアーデにしたら、このような反応が得られただろうか?と。


 1人、自室でアリアーデが作った紫陽花を見つめながら考える。


 認めたくなかった。

 レイだけがアリアーデの恋の芽生えに気付いていた。

 本人すら気付いていない、その感情に。

 しかし、それはハンスから受けた衝撃によるただの錯覚でしかない。気付かなければ、育ちもしない感情であることも事実であった。

 

 その感情を手折って、蓋をして、気を逸らせば。

 きっとまたいつものアリアーデに戻るはずだ。


 ただ、従者としてアリアーデの願いを叶えなければならない。

 

 ――この世界に姫様が来られて、最強を目指されて、世界を存分にお楽しみいただく中に――恋愛は含まれているのでしょうか?


 どう考えても悲恋にしかならないのに、本人すら気付いていないその小さな小さな気持ちを汲むべきなのか。

 芽を、育てるべきなのか。



 ♢♢♢


 次の魔法戦の時期になった。


「なぜ殿下は分身を使わないのですか?」


「え、使ってよろしいのですか?」


 ハンスが使ってないのに私が使ったらずるいって思ってたけど、使えってこと?


「ああ……殿下のその心掛けは素晴らしいですねぇ。ですが、今日から使って下さい。前回の戦いで私は死にかけていましたので、実は殿下はもう勝っていたのですよ」


 クククと笑っているが、そう言うことは先に言え!!

 え、じゃあ何か?


「1ヶ月のお休みは……有効ですよね?」


「殿下が気付いていらっしゃらなかったので、いらないのかと思っていましたが……」


 残念そうな表情をすな!

 チッつまり、ハンスって自己回復が馬鹿みたいに凄いってことじゃん……。


「必要です! 権利です!」


 治療魔法を早く覚えないと……。

 体の構造の知識は覚えたのに、なぜか治療魔法だけ発動しなかった。リーンに聞いても理由がわからなくて、使えないのかとも思ったけど、諦めるにはまだ早いと思う。


「まぁいいでしょう。では、今日の魔法戦を行うにあたり、私の魔法を一つ解禁致しましょう。殿下がお選び下さい」


 瞬間移動、分身、透明化。

 どれを選べば、私が本来の実力を隠しつつハンスの弱点を探れるか……。


「透明化でよろしいでしょうか」

「おやおや、本当にそれでよろしいのですか?」


 ハンスはニヤニヤとしている。


「一度、見なければいけないと思いました」


 瞬間移動や分身での戦闘はだいたい想像ができる。

 だけど、透明化を利用した戦闘はあまり馴染みがないし、私の目と集中力、魔力の気配を読む力がどこまで通用するのか確かめる必要があった。

 ――場合によっては、根本的な方針転換も必要になる。


「実に……イイ。あぁ、殺さないように手加減をしなければいけませんね」


 その言葉に、レイが反応する。


「ハンス様……」

「レイ、合図して」


 心配そうなレイに私は頷いて、覚悟があることを伝える。


「では……始め!」


 銃の音と共に、ハンスは目の前から消えた。


 魔力を感じろ。今までよりもっと研ぎ澄ませて。


「後ろ!」


 横に避けた瞬間、電撃が通り抜けるのが見えた。

 避けながら土の杭を地面に打ち込んでいく。

 自分の周囲をぐるっと杭が囲んでいる状況にした。

 これで多少反応が遅れても被弾が減るだろう。


 集中して気配を探る。

 魔力を発しているのは1人しかいないのだから、場所はだいたいわかる。


「檻の中に自ら入るとは……ああ、どちらが本物でしょうかねぇ」


 楽しそうな話し声が聞こえてきた。

 やっぱり私の分身の存在はバレていた。

 雷撃を避ける際に透明化した分身を檻の外に出している。


「わかっていらっしゃるくせに。演技がくさいですよ!」


 次はこっちから攻撃を仕掛ける。

 分身がハンスがいる周辺に水塊を落とす。少しでも濡れれば場所が目視でわかるはず。

 私はその隙に地面に魔力を通していく。

 分身体は魔力の塊なのだから、地面の中を泳げるのだ。


 とにかく、ハンスを捕まえないと話にならない。


 上から水塊、下から私の分身がハンスの足元を狙う。

 ハンスの気配は……。

 水塊を避けながらこちらに向かってきているのがわかった。


 接近戦ってわけね。

 やってやろうじゃない。


 私は霧を自身を中心に広範囲に発生させた。

 なおもハンスは直進してきている。

 霧が揺れている。


 どうして、ハンスは風を起こして霧を霧散させないのだろうか。

 どうして、攻撃もせずにただ歩いてきているのか。


 植物魔法で足元にツタを大量に這わせる。

 いや、嘘だ、そんなはずない。


 ツタがハンスのいるであろう位置を()()()()ていた。


「キャ!」


 分身体から悲鳴が聞こえてきた。

 土の中の分身もいつのまにか消えた。

 え、ハンスはどこ?


 そして、目の前にあるこの人型の魔力の塊は、一体何?

 そっと触れると、ふわっと風が吹き抜けた。

 ただの風の魔法だ。フローラルな香りまでする。


「どこ……なの?」


 今までハンスだと思っていたものは、ただの風の魔法で、今しがた霧散したせいでここ一帯の魔力反応が無くなった。


「……」


 ゆら、ゆらと霧が揺れる。

 でも、そこには誰もいないはずなのに。


 一歩下がる。


 霧も揺れる。


 もう一歩下がる。


 霧が揺れ……雷撃を放った。

 だが次の瞬間、見えない雷撃がそれを相殺した。


 何度も何度も雷撃を打ち込む。

 早く倒れて。こっちに来ないで。


 無意識に後ろに下がりながら、考える。

 魔眼がないと、魔眼がないと私は戦えないんだ。

 違う、違う。いま勝つための方法を考えるんだ。


 そうだ。雨を降らせて居場所を突き止めよう。

 ポツポツと降り出した雨に、人の輪郭が浮かび上がる。

 霧が晴れていき、雨が激しくなる。

 それでも、目の前からは魔力は感じない。

 

 ――だけどそこに、ハンスはいた。


 傘を、さしていた。

 見えないのに傘に雨の当たる音が聞こえてくる。


「ふざけ……」


 雨に濡れて髪の毛が顔にくっつく。

 私も傘をさそうか?

 なんて、どうしようもないことを考える。


 透明化。

 こんなの、災害でも起こさないと倒せないじゃん。

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