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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第3章 少しずつ狂う世界
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5-1 悪夢の家庭教師

 ハンスの家庭教師が始まる当日。


 朝起きて魔法で着替えてレイに身だしなみを整えてもらい、朝食はレイが持ってきたものを食べる。


 そして、午前の授業が始まった。


「おはようございます殿下。よく眠れましたか?」


 ハンスはいつもと違って、眼鏡姿に教師っぽいベストと黒手袋をしている。

 そして何よりも目を引くのが、ハンスが手に持っている鞭だった。

 私が鞭を見ているのをハンスが確認すると、パチン、と手に馴染ませるように軽く振るった。

 私はその鞭の動きを目で追いかけることしかできない。


「多分これからよく眠れないです……」


 思わず丁寧語になる。


「おや、私の授業が楽しみで仕方ないみたいですね」


 違う、そうじゃない。

 ……こんなにも笑顔で鞭を持つことが似合う人っているのだろうか。


 鞭って痛いのかな?

 私の身体強化魔法を強化してない鞭が貫通することはないと思うけど、ハンスが持っていると言うことは全力で防御しないと相当痛いのでは?


「一回それで叩いてみて?ここ」


 私は左腕を差し出す。

 やっぱ一度経験して確かめないと。

 ハンスは無言で私の魔力の動きを目で追っている。


「そこでよろしいのですか?」


「うん、よろしく」


 ハンスが鞭を振り下ろす。

 私は素早く回避を試みる。

 予想通り、私の回避スピードに合わせて鞭が追ってくる。

 

 あ、やばい。


 さらに後ろに飛ぼうとしたら左足を引っ掛けられていた。

いや、まだ抵抗できる!


 後ろに転びかけた左足をそのままハンスの鞭を持つ右腕へと蹴り上げるも、ハンスのもう片方の手で左足を握られて逆さ吊りにされてしまった。

 フレアスカートが捲れて脚の契約魔具が露出している。

 ハンスは契約魔具をぱちんと指で弾き、そして興味を失くした。


「さて、まず2点注意することがあります。まず1点、言葉遣いは正しく」


 ハンスが私の左足に鞭を叩きつけようとした。

 が、私は腹筋で反り上がってハンスの鞭を掴んで阻止した。


「痛ッ!」


 阻止したのに!?

 よく見るともう一つの鞭が宙を浮かんでいた。


「2点目、欲張りすぎです。効率の面では最善ですが、力量の確認であれば回避か防御、どちらかに絞るべきですよ」


 2回目の鞭が私の左足に入る。

 今回はきちんと魔法で強化してるのでそんなに痛くない。


「わかりました。言葉遣いは授業中と式典、貴族のパーティだけ気を付けます」


 ハンスから解放された私は大人しく席に着いた。

 鞭は痛かったけど、どちらかと言うと心の方が痛い。

 あのハンスから正論で殴られるとか、嫌味を通り越して倫理違反だわ。


「ですが、魔力の誘導とその勇気は素晴らしかったですよ。殿下のように抵抗してくる相手は、今まで教えてきた生徒の中でも初めてです」


 ハンスさんは大変に喜んでいらっしゃるね。

 と言うか他に生徒がいたことあったんだ……。

 可哀想に……。


「ハンスさん早く授業を始めて下さい」


「おやおや。やる気があるのは結構ですが、きちんとついてきてくださいね」


 そう言って始めたのは、ガチの講義だった。


 嘘だろ?

 12歳の子供相手に大学の講義みたいな内容する?

 だって、昨今における一般魔法の汎用性とか、私は誰の論文聞かされてるの?


「宇宙を眺める猫のような顔をしていますが、この章が終わればテストがありますので集中してくださいね」


「あの、質問があります」


「なんですか?」


「私のような年齢の子供にも、このような内容の授業をされているのですか?」


 確認せずにはいられない。

 他の子がこんな授業受けてたら可哀想すぎる。


「おや、他人を気にする余裕があるとは。私は人によって授業内容を変えていますので、同レベルの子供がいれば同じように教えるまでです」


 そんな子供いるのか……?

 でもハンスの授業受けてる時点でみんな被害者だよね。


「教えていただき、ありがとうございます」


 こうしてみっちり午前中の授業が終わり、午後休憩を挟んでダンスの練習に入った。

 魔法の実技はダンスの練習が全て終わってかららしい。


 正直、気疲れしかない。

 これが週5で続くの……?


「殿下、昼食はよく食べられましたか?」


「……いいえ」


 こいつわざと聞いてるな?

 絶対そう。

 ええい! こんな奴に負けてたまるか!


「ハンスさん、早く授業を始めて下さい」


「ククク……失礼。このように何度も催促されると……つい長時間拘束したくなりますね」


 ハンスの場合やりかねないんだよなぁ。

 私、居残り授業は受けないタイプなので!


「それでは、まずステップを覚えてください。目を閉じて」


 私は言われた通りに目を閉じると、ハンスの指が私の額に当たる。

 貴族のダンスの映像が頭の中に流れてくる。

 もうハンスの魔法の原理についてはつっこむまい。


 なるほどね。

 ステップは覚えた。

 あとは実際に出来るかどうか。


「ハンスさん、覚えました」


「おや、もういいのですか?」


「はい」


 暗記なら得意。

 特に相手の動きを覚えて真似することは、ゲームでも重要だったし。


 ハンスはメトロノームの音を鳴らし始める。


 私はハンスの肩に手を伸ばすが、ギリギリ届かない。


「……仕方ありませんね」


 そう言ってハンスはパチンと指を鳴らすと、身長が縮んだ。


 ……。

 彼はびっくり人間だから、身長も年齢も自由自在。

 今目の前にいるのは、大昔に修練場で見たハンスだった。あの時は兵士達を百人斬りしてたなぁ。


「ありがとうございます……」


 なんとなく懐かしい気持ちになりながら、私は改めてハンスの肩に手を伸ばす。


 練習を始めて10分、私は初めてハンスの足を踏んだ。


「あ……」


「ちなみにミスをする度に、明日のテストの設問が1つ増えます」


 地味に嫌な嫌がらせだな。

 テストも80点以上取らないと再試だし。


「わかりました」


 それ以降は集中してミスなしでクリアした。

 動きの不自然さは指摘されたけど、そこはもう回数をこなすしかない。


 全ての課程が終わった。


「やり切った……もう、疲れた……」


 朝から夕方まで全てを出し切った気がする。

 いっそ清々しさも感じる。


「お疲れ様です殿下。明日もよろしくお願いしますね」


 汗一つかいてないハンスは笑顔で楽しそうに言った。

 こっちは全然楽しくないのだが?


「……レイ! 撤収!!」


 もう今日はお風呂に入ってご飯食べたら寝る!!

 意図を察して全て用意してくれるレイ。

 持つべきものは優秀な執事だよ。


 いつもはゲームの一つでも寝る前にやるけど、今日はそんなことせずに早めに寝る。

  

 そしてその日、私は鞭を持ったハンスに追いかけられる悪夢を見た。

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