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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第2章 ここは私の知らないゲームの世界
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3-8 転生者のお茶会

 あの後私は、中庭を高速で何往復もしていた。

 レイが途中から私の後ろを走ってきていたから、もう終わりの時間だと気づいた。


 執務室に戻ってきたので、早速リーンと会うための予定調整をする。

 

「レイ、ラベロテ子爵令嬢とお茶会がしたいんだけど、都合合わせてくれる?」

「……ラベロテ子爵家ですか? たしか、ローツ・ラベロテ様が姫様と同じ年の娘がいらっしゃるので是非お会いしたいとおっしゃっていましたね」


「え、そうだっけ?」


 私のお披露目会の時にたくさん貴族の人が挨拶に来たけど、もともと人の顔と名前を覚えるのが苦手なのに、貴族の名前なんて覚えてないよ……。

 

「その件ではありませんでしたか?」

 

「たまたまラベロテ子爵令嬢と会う機会があったから、そこで意気投合しちゃって」


「左様でしたか。では、そのように調整致します」


 そういえば、リーンがレイに聞けば今の私の強さがわかるって言ってたよね。


「レイ、私って今どのくらい強いの?」


「そうですね……。私と同じぐらいでしょうか。射撃投擲で競えば私の方が強いですが、魔法戦となれば、アリア様の方がお強いでしょう」


 やっぱり得意分野で戦うのがいいよね。

 地形だったり初期位置で有利不利は変わるし、レイの独壇場のステージで私がどれだけ戦えるかを考えるのも楽しいかも。


「魔力量はどのくらいになってる?」


 ハンスにもらった魔昌石は虹色。

 無色、青、緑、赤、紫、金、虹の順で魔力量を表すみたいだけど、虹色にならないと魔昌石の中身はわからない。


「紫です。成人貴族の平均は緑から赤ですから、姫様はすでに皇宮魔術師となれるほどです」

「そっか……」


 まだ足りない。

 このもどかしさが焦りになる。

 大丈夫。私はまだ9歳だし、大人になればハンス以上になれるはず。


「姫様、私は信じております。姫様がいつかハンス様を超えるお方になることを」


 レイが優しくそう伝えてくれた。


「ありがと。私もそう思ってる」


 ♢


 温室にある紫陽花は、常に花が咲いているように温度調整されている。

 リーンが指定してくれたお茶会の開催場所はこの温室で、レイとリーンを引き連れて今さっき到着したばかりなのだが。


「何この色……」


 前回見た時は全部が白色の紫陽花だった。

 今日温室で咲いている紫陽花の色は……。


「金、青、緑、紫、混色……カオスすぎる」

「アリア様……」


 ちらっとリーンはレイを見たので、私はレイを下がらせた。


「レイ。今日はリーンと2人で話したいから、給仕とかしなくていいよ。むしろ別室で待機してて」

「しかし……。わかりました。何かありましたらお呼びください」


 バイバーイと手を振ってレイを部屋から追い出す。


「邪魔者はいなくなったから、ゲームの話をしましょうか」

「あのレイをあそこまで手懐けるとは……」


 リーンが信じられないものを見る様な目で見てきた。

 そんなリーンをガーデンチェアに座らせて、私がポットからお茶を入れてあげる。

 

「だって、1歳の時から一緒なんだよ? もう家族みたいなもんだよ」

「設定ではアリア様が6歳くらいで出会うはずなんですよ? と言うか1歳の記憶があるんですか?」

「え、うん。前世は火事で死んじゃって。気付いたら赤ちゃんだった」

「私は前世で溺れちゃいまして、5歳の時水遊びしていたら思い出しました」

「そうだったんだ。でもまさかゲームの世界だったとはね」


 知ってたらもっと上手く立ち回れてたのかなぁ?


「そうなんですよ。私も最初は知らなくて。お父様から皇宮の話を聞いていたら知ってる名前が多くて、もしかしてってなったんです。それに先日の魔物討伐イベントで、アリア様が転生者だって確信しました。しかもゲーム未プレイ……」

「本当ならもっと後で起こるってこと?」

「はい、そもそも物語のスタートは16歳ですよ? 2年間で色々イベントをやるのに……」

「そ、そうなんだ……」


私まだ9歳だよ……。

やっちまった感がひしひしと湧いてくる。

うん、紅茶おいしい。


「それで、この紫陽花の配色と攻略キャラは関係があるの?」

 

 青とか紫はわかるけど、金色ってなんだ……。

 まあ、なんとなく瞳の色で思いつく人物はいるけど。

 

「はい……。この温室に来れば誰の攻略フラグが立っているかわかるのですが、まさか全員とは……」


 ふむふむ。リーンはこの乙女ゲームが死にゲーって言ってたけど、バトルがあるなら先に誰と戦うか聞いた方がいいかな? なんの技があるか聞ければ有利に立てるし……。

 でも詳しいネタバレはやだな。


「なんでそんなに嬉しそうなんですかっ!?」

「えっ? いや、5種類の花色があるってことは5人と戦えるってことだから、5回楽しめるって思って……」


 リーンは私を不思議生物でも見るような目でみてきた。


「こ、このままラストまで行けば……確実に殺されるんですからね!」


 こんなにリーンが言うってことは、もしかしてやばい?


「な、なんで?」

「温室のハイドランジアでは、魔力量と好感度で物語の進行と難易度が決まるんですけど、好感度がすっごく上がりやすくて……。魔王ルートでは好感度が上がった攻略対象者は最後の時……つまり魔王討伐の際に全員敵に回ります」


 え、敵になるの? 仲間じゃなくて?


「……裏切られるとか?」

「ええと、そうではなくて……。このゲームは全員ヤンデレって呼ばれるキャラなんですが、アリア様が魔王に取られると思ったキャラ達は、アリア様を殺して自分も死ぬつもりなんです」


「……わ、わけがわからないよ」


 ゲームの中の私は弱いのかな……?


「みんなアリア様を一人占めしたいんですよ!」

「そんな子供みたいな……」


「そんなキャラが魅力なゲームでしたから……。そんなことより、問題は魔王ルートに入ってるってことなんですよ! 本当ならレベル上げなんてしなければ、魔王はやってこないんです!」


 もしかして隠しルートってやつ?


「えーっと……。魔王ルートって最終的にどうなるの?」


「魔王ルートはエンディング後周回前提のルートなんですが、戦闘好きな人用に難易度が上がってます。好感度やレベルを上げた分だけキャラが強くなりますし、最後は連戦になりますから、各キャラを倒した後セーブしないと途中絶対死にます。最後は魔王のペットになるか、倒して英雄になるか選べます」


 連戦かぁ。

 どれだけ消耗を抑えるかが重要だね。


「うんうん。楽しそうなゲームだね」


「いやいや! 何言ってるんですか! 私なんて戦闘が苦手だから、何回もリトライして進めたんですから」


 リーンが青ざめたり怒ったり変化が面白い。


「要は死ななければいいんでしょ。で、誰が相手なの? 心当たりしかないけど、一応」

 

「ポジティブすぎますよぉ……。えっと、攻略対象者は登場順にレイ、ルヴィア、最推しのラビット様、ドミニク、隠しキャラのハンスで5人です」


 やっぱりか……。


「まぁ、この5人ならなんとかなるでしょ」


 軽く言うと、リーンが絶句した。

 

「いやいやいや! レイは調教してくるし、ルヴィアは洗脳してくるし、ドミニクは魔具で監禁してくるし、ハンスは隠しキャラですけど戦闘狂で殺されますし、最推しのラビット様は癒しですけどっ死にたがりなんですからね!?」


 字面だけだとすごい凶悪な感じするけど……。

 レイは完璧執事ってだけだし、ドミニクは私のこと興味ないし、ルヴィアはただのクソガキだし、ラビットさんはいい人だし、ハンスは私が倒すし。


「ほら、ゲームと現実は違うって言うし、大丈夫だよ!」

「そうですけど……」


 むしろ本気のみんなとやり合えるならなかなか楽しみなんだけど。


「それより、ゲームシステムと戦闘システム、ゲーム上の魔法の種類と魔力消費量、あと威力を教えてほしいな!」


「ふ、ふえぇ……」


 リーンが心配を通り越して思考停止しているが、ゲーム内イベントの情報より戦闘知識の方がほしい。


「うーん、そうですね……魔法は――」


 紙とペンを魔法で出して、リーンから語られるゲーム情報をメモしていく。


「それで、リーンはこれからどうしたい? 私としては一緒にゲームしてほしいけど……」


 一通り聞き終わったので、今後の身の振り方を聞く。

 せっかく日本人なら、私の作ったゲームにパロディ要素があることとか気付いてもらえるかもしれないし、感想欲しいし……。


「ええと、できれば……アリア様の服を作りたいです」


 もじもじしながらリーンが教えてくれた。

 リーンがおもむろに両手を前に出すと、魔法の糸と布が出現した。それを針で縫うと、糸が消えて布と布がくっついた。


「おぉ、魔法で服もつくれるんだ!」

「私は前世で服飾を学んでいたんですが、この世界ではとてもイメージ通りに服が作れるんです!」


 するすると、手際良く1着仕立ててくれた。


「見てください! これはゲーム内に出てきたアリア様の衣装なんですよっ」


 興奮気味に私に押し付けてきた。

 たしかに、私の灰色の髪と赤い瞳によく似合いそう。


 ぱちん。

 指を鳴らして目の前の服に着替えてみた。


「え……魔法でそんな事できるんですか……?」

「ゲームの創造魔法はストーリー上の便利魔法扱いだったって言ってたけど、魔力さえあれば悪用できちゃうよね」


 服とか装飾品などの小物であっても創造魔法の消費魔力は少なくない。一般市民の魔力では無理なことも、私の魔力の前では可能になるのだ。


「服を作る意味が……」


 リーンはしょんぼりしているが、意味がないことはない。


「私、デザインできないからコピーするだけだよ? むしろ、服のレパートリーが増えて嬉しいかも」

「そ、そうなんですか? よかったぁ」


 へにゃりと笑ったリーンはちょっと可愛いかも。

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