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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第2章 ここは私の知らないゲームの世界
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3-3 おやすみ

 あの時レイにできたのは、ただハンスがアリアーデを抱いて皇城へ消えていくのを、黙って見送ることだけだった。その光景を思い出すたび、レイの胸の奥が冷たく軋んだ。

 今頃は医療棟のベッドに移されたアリアーデが神官達に治療魔法を施されているだろう。


「僕も望遠鏡で見てたけど、あれは仕方ないよ」


 ドミニクが医療棟の近くの東屋で板状の魔具を操作しながらレイに話しかけてきた。

 レイは黙ったまま、医療棟の白い壁を見つめる。

 

「レガリウスを初めて見たけど、街一つ滅ぼせるって話本当なんだね」


 あの場にいた誰もが、燃え盛るウルヴァを見て畏敬の念を抱いただろう。


「ドミニク様は、なぜ姫様の専属魔具師となられたのですか?」

「なんでって……その方が面白そうだから?」


 悩んでいるドミニクを一瞥し、改めて問う。


「姫様はやがてレガリウスに挑み、そして……今よりももっと深手を負うかもしれません」

「君ってほんと不思議だよね。止めないの?」


 レイが自分の気持ちに素直になれば、第一皇女もドミニクも、とっくにアリアーデの周囲から排除していただろう。


「私は、姫様の望む結果を求めているだけです」

「ふーん。つまらないの。僕なら外に出てしまわないように大事にしまっておくけどね」


 レイの指がピクッと反応した。

 ナイフに指がかかりそうになるのは、アリアーデが取られてしまうかもしれない恐怖なのか、それとも――。


「……どうしてドミニク様はそうなさらないのですか?」


 ドミニクならば、アリアーデを縛ることがレイよりも容易に出来るはずだった。

 

「その必要がないからだよ」


 ドミニクは余裕そうに言った。

 侯爵子息であるドミニク。アリアーデの好きなゲームを作れるドミニク。

 レイは一介の執事でしかない。伯爵家当主でもなければ、アリアーデが求めている物を作る事もできない。


「君は優秀なのに自分の気持ちには鈍感なんだね」

「鈍感、ですか……」


 アリアーデを大切に思う気持ちに嘘偽りはない。

 ただ、レイがアリアーデを失った時に自身がどうなるのかは、レイ本人すらもわからなかった。

 

♢♢♢


 眠りの魔法のような相手を弱体化させる魔法は、魔力差がないと効果を発揮しない。

 ああ、まだ私の魔力はハンスに届かないのか……。


 ゆっくりと目を開けると、私の寝室みたいだった。

 レイが私を看病していたみたいで、濡れたタオルを渡してくれた。


「姫様、お加減はいかがですか?」

「レイありがとう。大丈夫だよ」


 もらったタオルで顔を拭く。

 魔王の呪いか……。


「何かございましたか?」

「えっ? あ、何もないよ。ちょっと考えごと」


 うーん、やっぱり何かあったって顔でバレちゃうか。

 でも、誰にも魔王の呪いの話を言うつもりはない。

 これは私の問題だし、私が倒したい。


「私、まだまだ弱いから頑張らないと」

「姫様……。ご無理はいけません」


 よく見るとレイがやつれている。

 心配かけちゃったな……。


「私としては頑張って欲しいんですが」


 げっ!!

 いつのまにハンスが私の寝室に入って来てたの!?


「不法侵入!! なんでいるの!?」

「おやおや。私がお助けしたのですが、お見舞いすらできませんか」


 ハンスが指を鳴らすと、花瓶の花が入れ替わった。


「それにしてもこのお部屋、大丈夫ですか? かなり混沌としていますが、愉快な状況ですね」


 ハンスは寝室を見回すと、ある一点を見つめた。


「どういうこと? 私の寝室に何かあるの?」

「……盗聴器に録画水晶、結界と幻惑の残滓が見えますね」

「は? 何それ……」


 すぐにレイが目を見開いて天井を見た。


「あぁ、レイにはわからないでしょうね。魔力残滓が多すぎて片眼だけでは見分けがつかないでしょう」


 私の寝室大丈夫?

 レイですらわからないものがあったなんて……。


「それで、どこにあるの?」


 はやく見つけて処分しなきゃ。


「おや? 処分なさるので? これはこれで面白い見世物だと思いますが」

「わ、私は見世物小屋の人間じゃなーい!!」


 なんなのよ!

 いくら子供だからって、プライバシーってものがあるんだからね!


「クククッ吠えていらっしゃる……」


 何がおかしいのか、ツボに入ったようでずっと笑ってる。


「ハンス様! 姫様はずっと耐えていらっしゃったのですよ!」


 え、ずっとってどういうこと?


「ずっと前からあったって言うこと?」

「ええ。私がその都度取り除いておりましたが……申し訳ありません」


 もしかして、あのお兄さまの写真ってそう言うこと?

 録画もあるってこと?


「お兄さま、ギルティ」

 

 こうなったら直談判だ!

 慰謝料もらってやる!

 そしてあの写真群も燃やしてやるーー!!


「姫様、まだ安静に……」


 ベッドから抜け出そうとする私を、レイが抑える。

 ハンスがニヤニヤとこちらを見ている。


「はぁ。今回についてはハンス、ありがとう。お兄さまとは後でたっぷりお話するとして……ハンス、とりあえずこの部屋に仕掛けてあるものは全て取り除いてくれない?」

「残念ですが、仕方ありませんね」


 ハンスが杖を振ると、パリンパリンと音がして綺麗なガラス片がたくさん落ちてきた。

 こ、こんなにあったとは……。


 もう一度ハンスが杖を振ると、バルコニーの扉が開いて、破片が外に出て行った。

 ちなみに、ぬいぐるみも外に投げ出される一員に入っていた。

 ライデーーン!!

 ちゃんと名前もつけて可愛がっていたのに……仕方ない。


「ありがとう、これで安眠できそう。そういえば、ハンスが家庭教師してくれるんだよね?」


 定期的にハンスがこの部屋に来てくれれば、盗撮されても破壊してくれるでしょ。

 私がなんとかして見つけられるようになるまではお願いしなきゃ。


「ああ、殿下。その件ですが、やる気がなくなりました」

「え?」


 拒否とか出来るんだ……。


「まぁ別にいいけど。そもそも倒すべき相手に教えを乞うのは嫌だったし」


 もともとは両親と宰相で決めた話みたいだからね。


「私も最初は断ったんですよ。魔昌石を発動できたらあるいはと期待はしていましたが、このような隠蔽すら見抜けないようでは……」

「魔眼なしで見抜けるの!?」


 え、ちょい待ち。

 見えないだけで、そこにはある。

 魔力を見る方法じゃなくて、感じる方向とか……?

 

「殿下……。はっきり言って期待はずれです」


 今まで魔法よりも体力とか戦闘技術に割り振ってきたから?

 でも絶対その方が後々自分のためになるって思ったし……。

 それとももっと努力が足りないの?

 でも、言われっぱなしじゃいられない。

 

「一つ、言っておきます。あと10年もしないうちに強くなりますし、跪いて忠誠を誓わせますから、覚悟しておいてください」


 ビシッと指差して宣言する。

 虚勢でもいい、私は強くなる!


「おやおや。小鳥の囀りは可愛いものですねぇ」

「私、あなただけには絶対負けないんだからー!」


 ハンスはクスクスと笑いながら去っていった。

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