間話 レイ・クレバンスの日記2
ーレイ・クレバンスの日記2ー
本日の姫様
・7歳308日
・身長111.8cm
・体重20.4kg
・体温36.8℃
・魔力量:紫
・排泄:8回
・朝食
サラダ
白パン
人参ポタージュ
・昼食
ピザ
マカロニサラダ
・夕食
ほうれん草のソテー
鶏肉のレモン煮
エッグタルト
すでに侍女長及び姫様に不要な者は排除済みです。
侍女の分際で姫様を名前でお呼びするとは、やはり不要です。これでようやく姫様のお髪を整え、結うことが出来るようになりました。
……お着替えは姫様が開発した瞬間着替え魔法により不可能となり、私は服を選ぶのみとなってしまいましたが、盗聴魔具は髪飾りに偽装できるので問題はありません。
・ドミニク・オブロン侯爵子息
アークリガリットの魔具師であることが判明。
新しい片眼鏡をいただき、頭痛が治る。
私が用意できる賄賂では買収不可。
姫様に正体不明の魔具を装着させた疑いあり。
政治的影響は計り知れず、排除は姫様に不利となる。
・ハンス・レガリウス辺境伯。
姫様と計2回の接触あり。
1回目はエレナ・レビュート侍女長の手記より発覚。
2回目は阻止できず。
姫様は1回目の接触に気づいておらず。
彼が姫様に与える影響は未知数。
排除は不可能……。
♢
私が姫様に仕える2年前。ハンス様が辺境伯となり初めてクレバンス伯爵邸にいらした時、あまりの魂の暗さに気圧されてしまいました。
まるで獲物を探すような視線が私の魔眼を捉えると、途端に笑顔になられ、その日からハンス様による実技指導が始まりました。
「レイ君はその魔眼のせいで魔力量が劣っていますね。であれば、強化魔法を極めてください」
「強化魔法、ですか?」
「ええ。面での制圧には期待できませんので、ただ1点のみを貫いて下さい。この様に」
その時ハンス様の右手が持つ銃から放たれた弾丸は、ハンス様の左手を――幾重にも重なる魔力層を弾丸が貫く――のを、私の魔眼が捉えました。
「1点のみ……」
ハンス様の左手を貫いた弾丸は林の木を何本かを貫き、止まりました。
すぐにハンス様の左手の穴は塞がり、何ごともなかったように微笑まれました。
その後幾度か模擬戦を行い、ハンス様は去って行きました。
あの時見た魔力層を貫く弾丸が今も忘れられません。
彼は一体何者なのでしょうか……?
ハンス様の幼少期は不詳。
当時レガリウス帝国だけがクランツェフトへの併合を拒み続け、3ヶ国連合部隊に侵攻された後、レガリウス帝国皇子である当時0歳のハンス様は行方不明となりました。
表舞台に顔を出した時にはすでに辺境伯の地位に着いており、現在は旧レガリウス帝国領を魔物の侵略から守っている傍ら、才能のある若者の家庭教師をしているそうです。
ハンス様の家庭教師はとても人気があり、授業を受けたら必ず出世すると言われております。そのため大小様々な貴族達が是非我が子を、とおっしゃっているようですが、何しろ気まぐれな方なので、なかなか受けることは難しいようです。
しかし噂では、ハンス様の弟子や教え子はなぜか不審な死を遂げている、と言われております。
そのような人物に姫様は目をつけられてしまっている。
その事実が恐ろしくもありますが、姫様なら……もしやあの暗き魂に、切先が届きうるのではないだろうか、と思わずにはいられません。




