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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第1章 ここは私の楽しい異世界
17/83

2-7 その後

「射的! 綿菓子! りんご飴!」


 私はかなり浮かれていた。

 アークリガリットの魔具師がこの街にいると大きな騒ぎになってしまい、明日皇都に帰ることになったからだ。

 つまり、海水浴(罰ゲーム)はしなくてもよくなった。

 

「ヨーロッパ風の建物に、純日本の文化! このアンバランス、最高の気分だね!……ってなんで日本の文化なの?」

「姫様! 次は何を獲りましょうか!?」


 疑問も追いつかないほどレイが射的で無双していた。

 もうほとんど景品を獲り尽くして、店主が泣いている。


「いや、もういいよ……」

「アリアちゃん! ほら、見て!」

 

 お姉さまが持ってきたのは号外だった。

 私が踊っているところが写真に写っていて、大々的に"聖女、アークリガリットを手中に収める!"と書いてあった。


「うわぁ……」

「これで皇位継承に一歩近づいたわねぇ〜」


「……あ」


 何にも考えてなかったけど、正体不明の天才魔具師と専属契約した皇女ってだいぶインパクトが強い。


「それにしても、さすがアリアちゃんだわぁ。私、アークリガリットを口説くのにお金もコネも沢山使ったのよぉ?」

「ゲームがかかってたし……」

「僕の心を動かせるのは下心じゃなくて、真心だからね」


 認識阻害のローブを着たドミニクが会話に参加してきた。


「ふぅん? アリアちゃんの可愛さに落ちたの間違いじゃないかしらぁ?」

「はぁ? このちんちくりんに?」

「隠さなくてもいいのよぉ〜。ふふ、よかったの? アリアちゃんと公式に付き合える可能性もあったのに」


 私の姉は何を言っているんだ?


「アークリガリットが第二皇女と恋仲だった、なんて記事を書いた日には僕の全財産で君を抹殺する」


 ドミニクは笑顔だ。とても怖い。

 ……と言うか私、貶されてない?


「へぇ? お姉ちゃんにはわかるのよぉ?」

 

 ドミニクとお姉さまのバトルが始まる予感がしたので、そっと後ろに後退すると、景品を大量に持ったレイにぶつかった。


「姫様?」

「あ、レイ……」


 そう言えば、レイに服を買ってあげようと思っていたことを思い出したが、明日帰るのでやっぱりいらないかもしれない。


「あの遠距離狙撃、ありがとう。まだお礼言ってなかったね。魔眼でわかったの?」


「このくらいのことは礼には及びません。限界まで魔力を使って染めておられたので……。決して姫様の魔力に染まりたいだとか、穢らわしい緑の不純物を取り除きたいと思ったわけではありません」


 ……もう少しまともな理由だとよかったな。


「私に魔眼があったらもっと簡単に解決できたのかもね」


 ドミニクの魔力がわかれば、幻惑に惑わされることもなかった。


「魔眼ですか……。私はあまりおすすめ致しません」

「そうなの?」

「魔力を自動的に消費しますから、私にとっては重荷です」


 魔力が多くないレイにとって、魔眼は辛いのかな。

 

「じゃあ、ドミニクに魔具で再現出来ないか聞いてみるよ」


 重苦しい雰囲気となってしまっので、話題を変えることにした。


「それより、もう私に黙ってることない!? レイが狙撃の名手なんて聞いた事なかったんだけど」


 よくよく考えたら、昔から妙に命中率は良かったから気付くことはできたはずなのに、他のことに気を取られすぎていた。


「私の事が気になりますか?」


 その問い方は卑怯じゃないだろうか?


「いや……何の銃が好きなのかなとか、魔弾の作り方とか、魔眼の視力はどのくらいなのかとか、ライフル見せて欲しいとか……いっぱいあるけど……」


 なぜか小恥ずかしく思ってもじもじしてしまう。

 FPSゲーマーとしては気になるに決まってるのだ。


「姫様……」


 えっ、泣いてる!?

 ドサドサと景品がレイの腕から落ちる。

 レイが目頭を押さえている。何か不快な事でも言ってしまったのかもしれない。

 

「ご、ごめん! そんなつもりじゃなくて……ええと、私はレイのことは最高の従者だと思ってるし、秘密主義的なことを除けば……いや、それ笑ってるねぇ!」


 よく見たらとても嬉しそうにニヤニヤしている。


「申し訳ありません……。銃はあまり武器として主流ではありませんから、姫様に興味を持っていただけて嬉しかったのです」

「思ってたんだけど、銃ってそんなに弱いのかな?」


 魔法と剣が主流の世界だけど、銃も使い様な気がする。


「ハンス様は笑顔で私の銃弾を避けます」

「……」


 え、こわ……。

 あの精密射撃を避けるんだ……。

 私だったら咄嗟に魔法で障壁をつくるか軌道を逸らすけど、避ける……か。


「私、もっと強くならないとね」

「姫様ならば必ず」


 跪いたレイは優しく私を見つめていた。



 ♢



 帰りの列車にて。


「アリアちゃん! どう!?」

「どうと言われても……」


 ――目の前には一面ビーチが広がっていた。


 祭りの最中ドミニクと話し合って出来た結果がコレですか。

 

「これ、幻惑でしょ? ……ドミニクに何を支払ったの?」


 今わかった。お姉さまはコレがやりたくて、ドミニクにおべっかを使っていたのだ。


「うふふ、ちょっとした権利よ」


 怪しすぎて思わず目を細める。


「心配しなくても大丈夫だよ。皇宮内での僕の居場所の確保と、ある程度の材料の融通で手を受っただけだから」


 ドミニクがビーチパラソルの中で寝転がりながら答えてくれた。完全にくつろいでいる。

 

 ドミニクへの準備って契約者の私がやるべき事なのでは……?

 私にも恩を売れて願いも叶って、ほんと我が姉ながら恐ろしい。


「お姉さま。今回だけですからね」

「わかってるわよぉ。アリアちゃんに嫌われたくないもの〜。はい、これね」


 あまりにも切り替えが早過ぎる。

 

 お姉さまに押し付けられた水着を抱えながらレイの方を見ると、すでに録画水晶が指の間から輝いていた。

 具体的に言うと、直立不動。右手を後ろに回して、左手はVのポーズ。指の間にあるのは録画水晶。

 いや、絵になるというか……ふざけているのか?

 もうよくわからない。


 ぱちん。

 と指を鳴らして水着を着る。


「!? ひめ……さま」


 1番早くに反応したのはレイだった。

 慌てているのか録画水晶も指から転げ落ちている。


「どうしたの?」


 レイの視線の先にはドミニクからもらった契約魔具があった。


「ああ、これね。そんなにおかしいかな?」


 金色の輪っかだし、装飾品としてもなかなか綺麗だと思うけど。


「い、いえ……」


 そう言うなりレイは考え込んでしまった。


「アリアちゃん、その魔具ってどんな機能があるのぉ?」

「機能?」


 そういえば、機能面の話では契約書には魔具作成に魔力が足りない時に魔力共有するとか書いてあった気がする。


「あぁ、説明してなかったっけ。それに色々収納できるよ。あとは魔力を流してからのお楽しみで」


 ドミニクがペグロックと戯れながらおしえてくれた。

 

「し、収納……だと?」


 試しに太ももに装備していた杖とナイフに魔力を通してみると消えてしまった。


「き、消えた……!」


 再び魔具に魔力を通すと、消えたナイフが手に収まっている。


「えっえっ、戦い方自由自在……!?」


 思わずナイフを構えて、切り込む直前にナイフを消してまた出現させる。

 これだけで鍔迫り合いを回避して相手の懐に入れる。


「ねぇねぇレイ! 早く構えて!」

「かしこまりました!」


 思いついた戦略の数だけレイと模擬戦をするが、魔力の動きが見えるレイでは、ナイフが消える場面を察知されて防がれてしまう。


「ふーん。ありがと。もう少し考えてみる」

「はい、いつでもお相手致します」


 ビーチに大の字に寝そべって考えていると、お姉さまがやきもきしながら近づいてきた。


「もうっ思ってたのと違うのよぉ! 戦ってるアリアちゃんもいいけれど、もっと可愛いのがいいのぉ!」


 そんなこと言われましても……。


「水を掛け合って遊ぶのはちょっと……水鉄砲で防衛戦だったらやりたいけど……」

「もうもうっ! それのどこが可愛いのよぉ!」


 私とお姉さまのやりとりを見かねたレイが、手持ちのスナイパーライフルを見せてくれた。そして、お姉さまをどこかに引っ張っていく。


「こ、これは……! 木製のスナイパーライフル!!」


 か、か、カッコいい!!

 すべすべの肌触りに、シンプルな作り!

 うひょ〜〜〜!!


 頬擦りしていると、ドン引きしたドミニクが近づいてきた。


「あのさ、多分盗撮されてるよ」


 遠く離れたお姉さまとレイが隠れながらこちらを見ている。


「ぐっ……これが餌食と言うやつか……」


 スナイパーライフルとお姉さま達を見比べ、やはりスナイパーライフルに軍杯が上がった。


「それでいいならいいんだけどさ……」


 残念なものを見る目でドミニクはパラソルに帰っていった。

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