表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生皇女はヤンデレ達と遊びたい〜優雅な笑顔で心を折りにくる宿敵と恋仲になれると思いますか?〜  作者: 池田ショコラ
番外編 ハンスと愉快なアドベンチャーゲーム
113/124

11-3 犯罪はダメですよ

 リーンは未だかつて経験したことのない、圧力を感じていた。


 その圧力を発している人物――ハンスは詰問するようにタイニーに詰め寄る。

 

「お、おう……。あれは俺の国に伝わるグリザイアの秘宝の御伽話だ。灰色の髪の乙女が海の深域で門を開ける時、世界は境界を失うっていう……だが灰色の髪の女なんて珍しくもないし、普通に海にも入るぞ……」


 タイニーは、必死にその御伽話を思い出しているみたいだった。


「グリザイアの秘宝……」


 やっぱり、この海の舞台はアドベンチャーゲーム「グリザイアの秘宝」だ。

 たしか「温室のハイドランジア」と同じ作者が手がけたゲームで、クリアした覚えはない。

 断片的な記憶しかなくて確かなことは言えないが、ヒロインは多分連れ去られていたような……。


「だとしたら、今回主人公はハンス様……?」


 相性悪すぎでは……?


「リーン。知っていることがあったら教えてください」


 腕を組んだハンスは、指をトントンと急かすように動かしている。


「えっ多分、今回はアリア様じゃなくて、ハンス様が主人公ってことで……あの……アドベンチャーゲームって、イベントを進めて、謎を解いて、ちゃんと探索しないと先に進めないゲームなんですけど……」


 トントンと叩く指が徐々に止まっていく。

 言ってるうちに、ハンスの表情が抜け落ちていくのがわかった。


「多分、必要なイベントを踏まないと海の底まで行けません……」


 追い討ちかもしれないが、言う必要があった。

 いまのハンスがどこまで協調性があるのかわからなかったから……。

 そして何よりアリア様を救うためには、主人公が動かないとストーリーは進まない。


「なんですか……その非効率的なゲームは……」


 あからさまに嫌そうな顔をしている。

 ああ、ダメかもしれない……。

 クリアできるか不安になってきた。

 アリア様……自力で脱出してください……!


「概要は理解しましたが、探索は現在進行形で分身が行っています」


「おいおい、夜の海での探索は辞めた方がいいぞ。分身でも痛みは感じるだろ……? 一旦陸に戻って仕切り直そうぜ」


 タイニーが至極真っ当な事を言っている。

 が、ハンスの感情は冷え切っている。


「痛みは関係ありません。……ですが、生徒の皆さんをまずは降ろしましょうか」


 そう言うと同時に、ハンスはパチンと指を鳴らして、船ごと転移させた。

 ざばん!と大きな音と共に、船が港に着地する。

 揺れが私たちを襲う。


「ちょっ! 今追ってたんだけどっ!? あの深域の海流分析!」


 ドミニクが声を上げて怒っている。

 よくあのハンスに怒れるものだ。恐ろしい。


「はぁ。まずは関係のない生徒を家に返すところからですよ」


 不安そうに降りていく、パーティの参加者達。

 グランとラファニエルがみんなを落ち着かせたり、励ましたりしてなんとか空気は保たれていた。


「先生、僕は一度学院に戻って協力を要請してみます。近海で何か情報が見つかるかもしれませんから」


「ええ。そちらはお願いします」


 船には、ドミニクとルヴィア、レイとタイニー。そしてハンスが残っていた。


「さて。二手に分かれましょう。レイとドミニク君とルヴィア君で海域調査を。リーンとタイニー君は私と情報整理です」


 ドミニクは、私に通信魔具を渡してきた。


「何か進展があったら知らせて」


「任せてください!」


 ハンスはタイニーに船の調達を依頼していた。

 この船ではドミニク達が動きにくいからだろう。


 私たちは、ひとまずホールにある椅子に座り話し出した。


「リーン。ゲームのストーリーを覚えていなければ、私が直接記憶を取りますが……」


 ひぃ!?


「いえ、やはりそのままにしましょう。謎解きならば、複合要素があるかもしれませんし、記憶を取りすぎても廃人になるだけですからね」


 は、廃人!?

 さらっと恐ろしいことを言われた。


「す、ストーリーは、たしか主人公が攫われたヒロインを助けに行くのがメインストーリーで、その過程で海図を集めたり、学院で……何かしたはずなんですが、思い出せません。覚えてたってことはスチルがあったのかな……?」


 パチンとハンスは指を鳴らして紙とペンを出して差し出してきた。


「まずはこちらに内容をまとめてください。あと、タイニー君は……」


 タイニーは多分、全く伝承を覚えてないんだろう。

 眉間に手を当てて、唸っている。


「海での立ち回り方を教えてください。脅威となるものの整理と、離島の住民との交流方法があれば、それもお願いします」


「おお! それなら俺でもわかるぞ!」


 これからの方針が立ったのが、日付が変わった頃だった。

 私とタイニーは解放されて、寝床についた。

 明日は……フィレッツィオ公爵家へ行くことになっている。

 なんとか……なるだろうか?


 ♢♢♢


 その夜。ハンスは寝ずに探索と情報の整理を行っていた。

 

 分身が大小様々な島で見つけた遺跡の数は四十を超えた。

 何の手がかりもない遺跡がほとんどであり、記号を見つけた時は手元の紙に模写している。


 リーンの書いた箇条書きの用紙――風景の覚え書きであったり、海図の存在の示唆、海賊との邂逅。

 イベント、謎解き、探索。

 最短でこなすためには――


「今……魔力が減りましたか……?」


 わずかな違いしかなかった。

 しかし、無視するには状況が悪かった。

 増幅は愛。

 だとしたら、その減少が意味するものは一つしかない。


「愛を捧げよ……」


 博物館で見た日誌にあった記述だ。

 こうしてはいられない。

 呑気に謎解きなどやっている時間は、ない。


 フィレッツィオ公爵家に透明化した分身を侵入させ、本棚を漁る。

 グリザイアの秘宝に関する伝承、及び海図に関する資料を見つけた。

 

 "深域に達することができる道標は、全部で四枚ある。

 全てを手に入れた時、道は開かれる"


 ふと、壁に掛かっている額縁の中に羊皮紙でできた海図が見えた。

 他の分身が海域上空から見ている景色と、海図に記された符号が一致していた。


「……人命救助は何よりも優先されるべきでしょう」


 そう結論付けて、額縁に手を伸ばした。

 中の海図を回収する。

 先ほど作った偽物を額縁に入れて、完全犯罪が成立した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ