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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい〜優雅な笑顔で心を折りにくる宿敵と恋仲になれると思いますか?〜  作者: 池田ショコラ
番外編 ハンスと愉快なアドベンチャーゲーム
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11-2 海の洗礼

 リーンは、後ろから二人の様子を見ていた。

 ハッピーエンドとはこのことかもしれない。

 新しい分岐に、心が躍る。


「ああ、このスチルを前世の友達に見せたい!!」


 花火を見て微笑んでいる二人はとても絵になる。

 欲を言えば、ハンスの女体化は解除してほしい。


 様子がおかしくなったのは、そのすぐ後だった。

 アリアーデが下を覗き込んだと思ったら、海へと引きずり込まれていった。


「アリア様!?」


 ハンスの変身が一瞬で解けた。

 ――いや、あれは動揺で剥がれたように見えた。

 すぐにハンスは魔法を放った。派手な音が鳴って、海水が甲板に降り注ぐ。

 大きく船が揺れて、私はマストにしがみつくことしか出来なかった。


 そして、ハンスは躊躇なく海に飛び込んだ。

 思わず私も駆け出して、手すりに身を乗り出して海を覗き込む。


 静まり返った水面が、不気味で――

 次の瞬間、隣にハンスが転移してきた。

 アリアーデを連れて戻ってきたのかと思った。


 だけど、ずぶ濡れのハンスは膝をついて、大量に血を吐いていた。


「ゴホッ、海が……私を拒絶している……?」


 ドミニクが海に何かを投げた。

 板状の端末を操作している。


「人が無理なら魔具なら追えるかも」


「レイはどこにいますか!?」


 ハンスはもう治療を終えて立ち上がっていた。


「ハンス様! 姫様は意識を失っておられます!」


 レイはマストの上から飛び降りてきた。


「だめだ。近くの魚を支配しただけじゃ、水圧でたどり着けない」


 ドミニクも、ルヴィアも、レイも、そしてハンスですらも届かない……?


 騒然とする甲板上、タイニーが慌てて船内から出てきた。


「マジかよ……あれは御伽話じゃなかったってのか?」


 ♢♢♢


 ハンスは魔眼で、アリアーデの魔力が海の魔物に吸われていくのが見えた。

 魔法が効かないのであれば、出来ることは限られていた。

 

 海。

 考えるより先に体が海へ飛び込んでいた。

 

 冷たい海水が体に染み渡る。

 魔物がアリアーデを暗闇の海へと連れ去っていく。

 アリアーデの白い魂のおかげで、居場所はよく見えた。


 だが、届かない。

 アリアーデの元へ転移しようとしたら、体に激痛が走った。

 海が――海水そのものが体を突き破ろうとしている。

 まるで意思のある水のように。


 水圧は問題ない。

 痛みも問題ない。

 しかし、再生が追いつかないほどの速度で海に侵食されていく。


 それでも腕を伸ばした。

 その瞬間、肺の奥まで海に抉られたような激痛と共に、船上へと転移させられていた。


 血を吐く。

 海が自分を拒絶している……。


 指輪を見た。

 この指輪は自身の血肉で作られている。

 だからアリアーデの居場所は手に取るようにわかっている。

 だが、行く方法がない。


 ――!?

 失ったはずの魔力が戻ってきた。

 

「……リアが指輪を外しましたね」


「ハンス様、その魔力……」


 レイが驚いている。

 無理はない。

 以前よりも増幅された魔力は、倍どころではない。

 執着ではなく愛へ変わったことで、質そのものが変質したのか。


 なぜ――。

 指輪を外すような事態に陥ったのか。


 冷静に。

 出来ることを考えろ。


 全ての分身を一度消して、アリアーデの居場所を中心に包囲網を敷くように展開させる。

 海の中へ行く方法を探さなければならない。


 視線を上げる。

 タイニー・フィレッツィオ。海洋国家セイロン公国でも、最も海に詳しい男。


「知っていることを全て教えてください」


 ♢♢♢


 ――歌声が聞こえる。

 無数の気配が、暗闇の向こうで蠢いていた。


 何かが、私の周りを囲んでいる。

 指輪を、つつかれている。

 だめ。これだけは、離しちゃいけない。


 暗闇の中、私は指輪を引き抜いて口の中に入れた。

 ――大丈夫。きっと、来てくれる。


 魔力がもうほとんどない。

 力が入らない。

 冷たくて、苦しくて――再び、意識を手放した。

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