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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第1章 ここは私の楽しい異世界
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2-1 水上都市

 皇族専用列車のやわらかいソファに座って、心地よい速度に揺られながら私は新聞を読んでいた。

 見出しの記事には「ラウルポール伯爵、何者かに殺害される」という記事が大々的に掲載されていた。

 記事を読み進めていくと、伯爵の悪事がこれでもかと並べられており、怨恨の線で捜査が進んでいると書いてあった。

 ……大丈夫かな。犯人うちの執事だけど……。

 

「大丈夫よぉ? それ、私が主導してるの」

 

 お姉さまは、自治組織リーバル――前世で言うところの警察を仕切っている。新聞社にも強いコネを持っているし、地味に様々な情報を握っている。


「大丈夫……とは?」

「うふふ。私があの憎たらしい小太りの伯爵を放っておくはずがないでしょう? ――私のアリアちゃんに手を出そうとして無事に生きていけるなんて有り得るはずがないのよ」


 最後の小言、聞こえてますが?

 もしかして、お姉さまが一枚噛んでる?


 あの夜の後に、レイが元暗殺者一族の末裔であることは本人から教えてもらったけど、姉の情報力なら知っていてもおかしくはない。

 

「お姉さま、レイに何か吹き込むのはやめてください」

「どうしてなの? 彼はアリアちゃんにぴったりの執事よ? 力関係はきちんと心得ているし、何よりアリアちゃんのことを私より知り尽くしているもの」


 レイのことをこんなにもいきいきと褒める人を初めて見た。お姉さまがそう言うなら、そうなんだろうなと思わせる謎の説得力があったが、問題はそこではない。


「レイは私の従者です。お姉さまの甘言に引っ掛かるのは私の教育の不行届きですけど、そもそも情報を私じゃなくてレイに流すのは何でなんですか!」


 私に言ってくれれば、レイの手を汚させずに済んだかもしれないのに……。


「あらあら!? 嫉妬かしら?」


 姉は私と、私の座席の斜め後ろに控えているレイを交互に見てニヤニヤとし始めた。


「そんなわけないでしょ!」

「だってぇ……"わかって"もらえるのは彼しかいないのだもの……」

「私にはわからないとでも言うんですか?」


 意味がわからない。情報を渡すのに何をわかる必要があるのか。


「……アリアちゃんは、誰かのために人を殺せる? 出来ないでしょう? そこがまたいいのだけれど、それじゃあ私の気持ちはわからないでしょう?」

「……わからなくていいです」


 聞いた私が馬鹿だった。この世界では、命はあまり重くない。魔物という脅威がある以上、弱肉強食のような価値観がある。だけど、前世での価値観がある私にとっては、救えるものは救いたいし、誘拐でもされない限りなるべく人は殺したくなかった。


 もちろん、ゲームの中ではFPSでたくさん人を殺してきたけど、それはそれ。


「まぁいいわぁ。それじゃあ、私は寝るからまたね?」

 

 大きなあくびをして、姉は去っていった。


 現在、私はお姉さまと一緒に精霊祭というお祭りの視察をしに東のアインシュタット領のアインバークへ向かっていた。

 アインバークと言えば、クランツェフト3大観光地と名高い水上都市がある街だ。

 これから観光しに行くのに、こんな辛気臭い記事なんて見るんじゃなかった。


「レイ、到着するまでお説教だから。そこ座って?」

「はい!」

 

 ――それから1時間後、アインバークに到着した。

 

 アインバークの街は大きな三日月型の遠浅のビーチの中央に、観光資源である水上都市がある。普段街の住民は陸にある民家で暮らしており、稼ぎどきになると水上都市に出店しにくるらしい。

 

 照りつける太陽が白い砂浜に反射して、眩しい光を放っている。

 私はレイを引き連れて皇族専用列車から降りた。

 お姉さまはいつのまにか着替えていて、水着の上に一枚羽織っている感じだ。

 ぞろぞろと使用人達が列車から降りてくる。

 

「姫様。こちらを」


 眩しい太陽に、レイがすかさず日傘をさしてくれた。さすがにこの日差しの中で執事服は可哀想なので、何かレイに服を買ってあげたほうがいいかもしれない。

 ちなみに私は白いワンピースに麦わら帽子をかぶっている。


「アインシュタット領へようこそお越し下さいました。私は領主のアーク・アインバークと申します」

「アリアーデ・クランツェフトと申します」


 まだ若い20代ぐらいの領主が白い花束を持って出迎えてくれた。私は握手を交わすが、お姉さまはグイグイと領主に近寄っていく。


「久しぶりねぇ。例の件だけど、上手くいってるかしら?」

「ええと……申し訳ありません。説得に難航致しておりまして……」

「はぁ。何を渡せばこちらにつくのかしら……」

 

 お姉さまが領主を恫喝しているようにしか見えないが、見なかった事にしよう。


「水上都市へは船を用意してあります。こちらへどうぞ」


 領主の使用人に連れられて、桟橋までやってきた。

 小型の船が数隻停めてあり、レイと一緒に乗ろうとしたらお姉さまが割り込んできた。


「今日は一日アリアちゃんとデートするの。私が案内してあげるわぁ」

「お姉さま、私は水遊びしませんからね」

「えっ……? そう……なの……」


 明らかに落胆している。割り込まれたレイも心なしか落ち込んでいてめんどくさい。

 重苦しい空気を無視しながら透き通った水面を見ていると、水上都市に着いた。


「私はお店を周りますけど、お姉さまはどうしますか?」

「もちろん着いていくわよぉ〜。……そうよ、水着のお店に連れて行けばいいのよ」


 心の声がダダ漏れなんですけど。

 まぁいいや。適当にウィンドウショッピングをしよう。

 前世では引きこもっていたし、こう言う買い物はかなり久しぶりかもしれない。


 目に入ったお店に入ると、そこは魔具屋さんだった。

 魔具と言えば有名なのはアークリガリットと言うブランドの魔具で、身体強化魔法の使える装飾品だったり結界を張るブレスレット等様々あるらしい。

 もちろん偽物も多くて、ちゃんと見極めないと不良品を掴まされてしまう。

 

 このお店に置いてあるのは、魔具の中でも子供用のおもちゃに偏っていた。

 まぁ魔法のこもった戦闘用魔具はこんな観光地に置く物ではない。


「あれ、これ……」


 私が目を引いたのは、ボタンを押すと光る対戦ゲームのおもちゃ……うそ!? タワーディフェンス!?


 そばに置いてあった説明書を穴が開くほど読み込むと、やはりタワーディフェンスゲームができる魔具だった。


「ほぼテレビゲームと遜色ない。むしろ3D。魔力を使ったゲーム……なるほど……」

「アリアちゃん、これが欲しいの? ……ああ、アークリガリットの作品ね。一点物の場合が多いからこれもかなり値が張るわね」

「アークリガリットに頼めば、テレビゲーム……ひいてはVRゲームが作れる可能性が微レ存……」

「執事君! アリアちゃんがおかしくなっちゃったわ!?」

「大丈夫です。そのうち元に戻ります」

 

 ぐらぐらとお姉さまにゆすられて我を取り戻した私は、レイに尋ねる。


「アークリガリットってどこにいるの?」

「アークリガリットは作者不明の魔具師です。作品にはアークリガリットと記載があることからそう呼ばれていますので、どこにいるかは……」

「私、知ってるわよ?」


 ニヤニヤしながらお姉さまが話に入ってきた。

 嫌な予感がする……。


「お姉さま、対価はなんですか?」


 もう単刀直入に聞く事にした。


「うふふ。よくわかってるわね? と言っても、彼を説得するのは無理よ。私ももう3年は説得に失敗しているもの」

「居場所はご存知なんですよね? 私が直接交渉しに行きます」

「まぁ……仕方ないわね。水着1回とアリアちゃん1日使用権で手を打ってあげる」


 嬉しそうなお姉さまの提案に即答して、早速案内してもらうことになった。

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