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アレクサンダー建国記  作者: 稲荷竜
六章 真白なる種族
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54話 平等のための差別

 その街は何もかも完璧にできていて、旅人たちにとっては居心地がよかったらしい。


 もっとも、このご時世に旅に出ているような者にとって、たいていの栄えた街は居心地がいいものだろう。

 なにせ道中にはいつだってモンスターの脅威があっただろうし、この海にほど近い街にはどうやら他の土地にないものが大量にあるようだった。


 けれど旅人がまかり間違って『よし、ここを終の住処としよう!』と思ってしまうと大変で、この街にあって他の場所にない大量のアレコレに頭を抱える羽目になる。


 手続きがあった。

 市民権があった。

 この街には大量の海産物と磯のにおい、それに石でできた家々の他に、目には見えないものもたくさんある。

 石垣で支えられた大きな建物みたいに『ああ、そこにあるな』とひと目でわかるもの以上にたくさんのなにかが、そこには大量にあるのだった。


 この街には区画がある。

 この街には住んでいい家がある。

 この街には仕事があって、金銭という、なんにでも交換できる万能の兌換(だかん)券が存在した。


 そして、この街をもっとも強く支えている、この街の真の(いしずえ)が――

『差別』が、あった。


 ここは自由と平等の港町だ。

 誰もが守るべき『法』があって、『法』を守らせる軍隊がいる。


 波音に包まれ、磯のかおりが立ち込め、人々は日に焼けて健康的。

 色とりどりの服を好みで着ていい。どんな人種であろうと受け入れるし、区別はしても差別はしない。


 ただし、一つだけ。


『真白なる種族』だけは、人として扱ってはならない。


 そんな街の大きな大きな屋敷で、彼は生まれた。

 次に区画の支配者となるべく期待された子だった。


 ただし、彼は『真白なる種族』だった。


 誰にもどうしようもない、運命の始まり。

 この街を支える一番大きな(いしずえ)に――

 最底辺に、彼は生まれた時から組み入れられた。

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