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アレクサンダー建国記  作者: 稲荷竜
六章 真白なる種族
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53話 エピローグの方が長い人生

六章 真白なる種族

今回は掲載文字数が多いため、次回更新は再来週(9月5日)の予定です

 その壁に彫り込まれたものが宝物になるだなんて、最初に見た時は思いもしなかった。


 ダンジョンだ。


 古びた土塊のかたまり。凶悪な殺意を持った迷宮。

 中には価値のあるものが大量にあるようだった。けれど、彼らはその価値を充分に理解できるような情報を与えられていない。

 教育はなかった。教養を身につけることもできなかった。

 知能の制限。

 彼らは馬鹿でなければならなかった。彼らは支配されるモノだったから、知能をつけてはいけなかったのだ。


 丁寧に丁寧に、愚かであれと言われて育った。反抗は悪だった。向上の心を持ってはいけなかった。ただ、馬鹿であり、従順であることが、彼らという生物に課せられた使命だった。


 けれど、どういう環境にだって、異常個体が生まれてしまうことがある。


 愚かである宿命を負って生まれたその男は、どうにも愚かではなかったらしい。

 ダンジョンの壁に刻まれた規則的な傷の意味に気付いてしまった。その傷がもたらしていた本当の価値を予測してしまった。

 自分たちが、愚かではなく、弱くもないのだと、理解してしまった。


 反逆が始まった。


 真っ白い支配者たち。

 対抗するは、この時代に奇跡のようにそろった七人の異常個体たち。


 そうしてその男たちは支配者どもに打ち勝って――

 新しい、支配者になった。


 なんて幸せな下克上だろう。

 報われた反逆だ。立場が綺麗に入れ替わった。

 虐げられていた者たちが、ようやく、その力のふるいがいのある地位を手にしたのだ。


 もっとも。

 本人たちが、支配者になりたがっていたかどうかは、また、別の話だった。

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