46話 物作りの醍醐味
もちろん精魂込めて作った鎧たちを破壊されたのだから、ダヴィッドからアレクサンダーへの印象は最悪という評価で始まった。
だというのにすぐに評価が上がったのは、彼が偶然にも……あるいは計算して……ダヴィッドが求めていたものを、くれたからだろう。
新鮮な情報。
見たことのない素材。
それから、着想。
アレクサンダーは聞いたこともない話を聞かせてくれた。
それはどうやら創作物の話らしかった。
だが、本当にまったく聞いたこともない、どうしたらそういう発想が出るのかもわからない物語を聞かされ、ダヴィッドはおおいに刺激を受けた。
中でも『銃』『砲』という存在については想像もしていなかった。
なるほど、それはカヤク? の力で鋼の塊を飛ばす道具らしい。
ようは爆発だ。
ダヴィッドは爆発というものにいくらか覚えがあった。
鍛治の工房があまた並ぶこの集落において、爆発というのは時おり起こる事故なのだった。
その震動と轟音とは、いたましい惨劇をもたらす凶兆なのだけれど、たしかにあの衝撃を制御し、その威力をまるまる『鋼の塊を撃ち出す』ことに利用できるならば、あの空を飛ぶクソトカゲの鱗さえ、貫けるかもしれない。
「ダヴィッド、いいじゃねーかドラゴンスレイヤー。ファンタジーといえばドラゴンだよな! やろうぜドラゴンスレイ。でも、あんたの発想じゃまだつまらない。まだ普通で、まだ確実すぎる」
ダヴィッドが鎧たち……ゴーレムを量産していたのは、その軍団に飛び道具をもたせ、クソトカゲに向けて斉射するつもりだったからだ。
単純に創造しうる範囲の飛び道具だといくら巨大化しても威力が足りず、いくつも作らないとあのクソトカゲを殺し得ないだろうと想定していたのと……
あの、集落の天蓋のようなものがなければ地表を舐め尽くすほどの炎を吐くクソトカゲ相手に、生身で地面から射撃をするのが危険すぎるので、人の代わりの射手が必要だったからだ。
「せっかく相手がデカイんだ。だったらさ、こっちも……デカくしようぜ」
ひそやかにささやかれたのは、とんでもない発想だった。
それは『クソトカゲを殺す』という目的だけをかんがみれば、まったく不必要なリスクを背負うものだ。
でも。
でも、アレクサンダーから語られた話は、技術的に挑む価値があると思った。
なんていうか、とても、とても、楽しそうに思えたのだ。
ダヴィッドはその魅力的な発想を、自分の力で実現しようと思った。
だから、承諾する。
「いいぜ。やってやらぁ! アレクサンダー、テメェの言うように……『ドラゴンvs巨大ロボ』、アタシの技術で叶えてやろうじゃねェか!」