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アレクサンダー建国記  作者: 稲荷竜
五章 打ち手と竜
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37話 職人

五章 打ち手と竜

 トンテンカンテン、鋼を打つ。


 この一族がいつからこんなことをしているかは知らないけれど、ここで産まれる連中はといえば、自分の産声よりも先に金属を叩く音を聞くのだった。


 彼女もそんな一人だった。

 ……といえばまるで母親や父親に抱き上げられて生まれたみたいに思える。


 でも彼女は全然そういうのじゃなくって、母親の顔を知らなかった。


 彼女は愛を知らなかった。


 愛されていなかったわけではないと、あとから思えば、そう思えるのだろう。けれど彼女を愛すべきだった唯一の肉親は、彼女よりも鋼を愛していた。


 父親は集落随一の職人だ。


 ぶっとい腕ででっかい(つち)をふる。

 でっかい背中が炎のオレンジ色の明かりの中で、いっぱいに筋肉を使って

汗で輝く。

 なんにもしゃべらない。おどろくほど無口で、しかも笑わない。


 その男の名は『ダヴィッド』と言った。


 あまりにも不器用で、うまく人を愛することができなくて……


 鋼に人生を捧げた、男の名前。

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